青色申告の帳簿づけ方法 – 具体例で解説する簿記入門

更新日: 2020/07/31

事業所得者に向けて、青色申告における会計業務についてまとめました。55万円・65万円の青色申告特別控除を受けるには「複式簿記」で帳簿づけをする必要があります。その他にも細かなルールが決められているので確認しておきましょう。

INDEX

目次

    確定申告における帳簿とは

    個人事業主には、日々の取引を帳簿に記録する義務が課されています。簿記においての取引とは「商品を売った」「事務用品を買った」「事務所のデスクを処分した」など、事業で発生した財産の増減を指します。

    確定申告に向けた会計業務の流れ

    個人事業主が確定申告するまでの流れ

    一年分の取引を帳簿に記録したら、それを元に「青色申告決算書」を作成し、その他の必要書類と合わせて税務署に提出します。帳簿そのものは税務署に提出しませんが、一定期間は保管しておく必要があります。

    青色申告の場合、青色申告特別控除の金額によって記帳要件が異なります。この記事では、55万円・65万円の特別控除をねらうことを想定し「複式簿記」を前提として説明します(10万円控除の場合は「単式簿記」でOK)。

    作成する帳簿 – 主要簿と補助簿

    複式簿記で作成する帳簿は、大別すると「主要簿」と「補助簿」に分けられます。これらの帳簿は、会計結果を集計するためのものであり、確定申告で提出するわけではありません。

    複式簿記で作成する帳簿は「主要簿」と「補助簿」に分けられる

    最近は、会計ソフトやExcel(表計算ソフト)で作るのが一般的です。手書きでの帳簿づけも認められていますが、これは労力がかかるのでオススメしません。

    主要簿とは

    「仕訳帳(しわけちょう)」と「総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)」の2つをまとめて「主要簿」と呼びます。複式簿記において、これらの作成は必須です。

    • 仕訳帳…………すべての取引を、日にち順に並べた帳簿
    • 総勘定元帳……仕訳帳の内容を勘定科目ごとにまとめた帳簿(元帳とも呼ばれる)

    補助簿とは

    主要簿をサポートする役割の帳簿を「補助簿」といいます。必要に応じて、以下のような帳簿を作成します。該当する取引がひとつも発生していないものに関しては、作成する必要はありません。

    • 現金出納帳……現金での取引と残高を記録する帳簿
    • 預金出納帳……口座の預金での取引と残高を記録する帳簿
    • 売掛帳…………取引先ごとの「売掛金」を記録する帳簿
    • 買掛帳…………仕入先ごとの「買掛金」を記録する帳簿
    • 固定資産台帳…現在の固定資産についての価値を記録する帳簿

    このほかにも、業種によっては追加で帳簿を作成します。たとえば、商品を仕入れて販売する業種なら「仕入帳」を用意します。

    主要簿の帳簿づけ方法 – 仕訳帳と総勘定元帳

    帳簿のなかでも最も重要な「仕訳帳」と「総勘定元帳」について説明します。基本的には、日々の取引を「仕訳帳」に記帳して、その内容を勘定科目ごとに「総勘定元帳」にまとめていきます。(会計ソフトを使う場合、このように転記する必要はありません。)

    仕訳帳について

    日々の取引を日付順で仕訳し、記入していく帳簿が「仕訳帳」です。取引が発生したら、それを「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」に分けて記帳していきます(複式簿記の記帳方法)。

    仕訳帳の記入項目

    総勘定元帳について

    仕訳帳の内容を、勘定科目ごとに記録したものを「総勘定元帳」といいます。各勘定科目の残高を確認できるので、経営の状況把握にも役立ちます。

    総勘定元帳は、勘定科目ごとにまとめていく帳簿です(下イメージは勘定科目「消耗品費」の例)。手書きで帳簿をつける際は、仕訳帳を見ながら転記して作成します。

    総勘定元帳の記入例(消耗品費)

    この「残高」は、合計金額を表しています(銀行通帳でいう「残高」とは異なります)。上記の画像では、支出した消耗品費の合計金額を表しているので、消耗品費が増えるたびに「残高」は増えていきます。

    クラウド会計ソフトで帳簿をつける – 主要簿

    近年ではクラウド会計ソフトの登場により、会計初心者でも複式簿記での帳簿づけが簡単にできるようになりました。クラウド会計ソフトとは、ネット上でログインして利用する形の会計ソフトです。

    事業用の口座やクレジットカードなどの情報を登録しておくと、明細データをソフトに自動取得してくれる機能があります。パソコンだけでなく、スマホやタブレットからも利用できます。青色申告用のクラウド会計ソフトでは、以下の3つが人気です。

    クラウド会計ソフト【個人事業向け】

    「マネーフォワード クラウド確定申告」(以下、マネーフォワード)で、帳簿づけの画面を見ていきましょう。まず、手動で取引情報を入力するときの画面がこちらです。

    手動で仕訳する画面(マネーフォワードの場合)

    マネーフォワード クラウド確定申告 取引入力画面

    該当する項目を選択し、金額や情報を入力します。これだけで、取引を仕訳することができます。入力した取引データから、仕訳帳や総勘定元帳などに自動反映されます。ユーザーが行う取引登録はこれだけで、手書きのようにわざわざ転記をする必要がないわけです。

    仕訳帳(マネーフォワードの場合)

    マネーフォワード クラウド確定申告 仕訳帳画面

    日にちや金額などの条件で検索をかけることもできるので「あの日買った備品の金額を確認したい!」というときも、すぐにデータを見つけることができます。

    総勘定元帳(マネーフォワードの場合)

    マネーフォワード クラウド確定申告 総勘定元帳画面

    こちらは「消耗品費」の総勘定元帳です。確認したい勘定科目を選ぶと、該当する元帳が表示されます。先述の通り、クラウド会計ソフトなら転記する手間なく、総勘定元帳が自動作成されます。

    クラウド会計ソフトで帳簿をつける – 補助簿

    クラウド会計ソフトでは、主要簿だけでなく補助簿も簡単に表示できます。ここではマネーフォワードの「現金出納帳」「預金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「固定資産台帳」の画面をまとめて紹介します。

    マネーフォワードでは、ユーザーが検索機能を利用することで、それぞれの補助簿にあたる情報が表示される仕組みになっています。表示した情報だけを印刷をすることもできます。

    現金出納帳

    マネーフォワード クラウド確定申告 現金出納帳画面

    「会計帳簿」の項目から「現預金出納帳」を選び、表示する勘定科目を「現金」に設定すると、現金出納帳が表示されます。これを見れば、事業において出入りした「現金」の動きが把握できます。

    預金出納帳

    マネーフォワード クラウド確定申告 預金出納帳画面

    「現預金出納帳」を選択したときに、勘定科目を「普通預金」に設定して、登録した口座を「補助科目」から選ぶと、その銀行口座の預金出納帳が見られます。要するに、銀行通帳と同じ内容が表示されます。口座を複数登録している場合は、銀行口座ごとにすぐ切り替えて表示できるので便利です。

    売掛帳

    マネーフォワード クラウド確定申告 売掛帳画面

    「会計帳簿」から「補助元帳」を選び「売掛金」の勘定科目を選択すると、売掛帳を表示できます。売掛金とは、商品を提供したもののまだ受け取っていないお金のことです。

    買掛帳

    マネーフォワード クラウド確定申告 買掛帳画面

    「補助元帳」で勘定科目「買掛金」を選択すると、買掛帳を閲覧できます。買掛金とは、まだ支払っていない仕入代や外注費などのことです(いわゆるツケ)。

    固定資産台帳(マネーフォワードの場合)

    マネーフォワード クラウド確定申告 固定資産台帳画面

    「決算・申告」の項目から固定資産台帳を表示できます。これを見れば、現在保有している固定資産をあと何年で償却し終えるのかがわかります。減価償却の計算もサポートしてくれるので入力の際も安心です。
    >> 減価償却について詳しく

    帳簿をもとに「青色申告決算書」を作成する

    1年分の取引をまとめた帳簿は「青色申告決算書」を作成する際に参照します。青色申告決算書は全部で4ページあり、大きくは損益計算書と貸借対照表で構成されています。55万円・65万円控除をねらう場合、4ページすべてを作成しなくてはなりません。

    青色申告決算書

    1ページ目 2ページ目 3ページ目 4ページ目
    青色申告決算書1ページ目 青色申告決算書2ページ目 青色申告決算書3ページ目 青色申告決算書 4ページ目

    会計ソフトで帳簿づけをしていれば、青色申告決算書の作成も簡単です。帳簿づけした内容が決算書にも自動反映されるので、あとは手入力が必要な項目を埋めるだけです。ソフト上で完成した決算書は、プリントアウトすればそのまま税務署への提出用として利用できます。プリンターがなければ、画面の情報を決算書に書き写せばよいです。

    確定申告後も帳簿や領収書を保存しておく

    確定申告の書類を税務署に提出したとしても、帳簿や領収書を捨ててはいけません。青色申告の場合、以下の帳簿や書類は定められた期間、保存しておく義務があります。

    詳細内容 保存期間
    主要簿 仕訳帳、総勘定元帳 7年
    補助簿 現金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳、経費帳など
    決算関係書類 貸借対照表、損益計算書、棚卸表など
    現金預金取引等
    関係書類
    領収書、小切手控、預金通帳など 7年(※)
    その他の書類 請求書、見積書、契約書、納品書など 5年

    ※前々年分の所得が300万円以下の場合は5年

    「その他の書類」のみ保存期間が5年ですが、念のためすべての帳簿・書類を7年間保管しておくことをおすすめします。これらは、万が一税務調査が入ったときに提示が求められるので、きちんと整理しておきましょう。
    >> 帳簿の保存期間と保存方法について

    会計ソフトの場合は忘れずに帳簿をプリントアウト

    帳簿の作成を会計ソフトで行った場合は、原則としてデータをプリントアウトしておく必要があります。電子データのままだと記録の改ざんが可能なため、紙媒体での保存が基本とされています。すべての帳簿を印刷しておくのは大変かもしれません。最低でも主要簿だけは印刷しておきましょう。

    ちなみに、事前に申請を出して所轄の税務署長から承認をもらえれば、電子データでの保存も認められています(電子帳簿保存法)。ただ、この方法は要件が厳格で、事務的な負担が非常に大きいです。個人事業主にはおすすめできません。
    >> 電子帳簿保存がまだまだ個人事業主におすすめできない理由

    帳簿づけのポイントまとめ

    青色申告で55万円・65万円控除をねらう場合、ある程度の会計知識が必要な「複式簿記」の方法で帳簿づけを行わなくてはなりません。白色申告よりも帳簿づけのハードルは高いですが、節税の恩恵を受けることができます。

    帳簿づけのポイント【青色申告の場合】

    • 55万円・65万円控除をねらう場合「複式簿記」で帳簿をつける
    • 帳簿のなかでも重要な主要簿は「仕訳帳」と「総勘定元帳」の2つ
    • 補助簿は必要に応じてつける
    • クラウド会計ソフトを使えば、会計の知識がなくでもラクに帳簿づけできる
    • 1年分の帳簿を参考に「青色申告決算書」を作成して税務署に提出する
    • 確定申告が終わっても、帳簿や領収書は最長7年間保存しておく

    手書きの場合、仕訳帳の内容を総勘定元帳や、各種補助簿に転記する必要があります。クラウド会計ソフトを利用すれば、ユーザーが登録した取引情報は、自動でほかの帳簿に反映されます。