青色申告決算書の3ページ目の記入方法を、記入例付きで解説します。この記事では2023年の確定申告期間で提出する、2022年分(令和4年分)の青色申告決算書を例に説明しています。
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目次
青色申告決算書の書き方【3ページ目】
青色申告決算書は4ページ構成で、3ページ目には減価償却費の計算過程や、地代家賃の詳細などを記入します。1ページ目と4ページ目に転記する内容も多いので、自分で計算して記入する際は2ページ目か3ページ目から書き始めるとスムーズです。
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2ページ | ![]() |
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3ページ ↑ いまココ |
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1. 減価償却費の計算
固定資産がある場合は、今回の確定申告で減価償却費に計上する金額を計算します。まだ経費計上していない開業費(繰延資産)がある場合も同様です。それらの資産を持っていない事業主は、何も記入しなくてOKです。
減価償却資産の名称等 (繰延資産を含む) |
減価償却の対象となる資産の名前 例:高額なパソコン・オフィス家具・自動車・開業費 |
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面積又は数量 | 資産の個数 面積で記入するのは建物などの場合のみ |
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取得年月 | 購入した日付 書き方は「20XX年」と「令和XX年」どちらでも |
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取得価額 (償却保証額) |
購入にかかった費用 定額法の場合、カッコの中は何も記入しない |
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償却の基礎になる金額 | ロ | 減価償却費を算出する基準になる金額 定額法の場合は「取得価額(イ)」と同じ金額を記入する |
償却方法 | 「定額法」や「定率法」など、減価償却の方法 個人事業では「定額法」が一般的 |
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耐用年数 | 資産の耐用年数 (主な資産の法定耐用年数表) 新品で購入した資産の場合は法定耐用年数を記入する |
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償却率又は改定償却率 | ハ | 耐用年数に応じた償却率 例:耐用年数4年なら定額法の償却率は0.250 |
本年中の償却期間 | ニ | その年の償却月数(購入年以外は「12」と記入する) 例:4月に購入したら購入年の償却月数は「9」 |
本年分の普通償却費 | ホ | (ロ)×(ハ)×(ニ)の金額 |
割増(特別)償却費 | ヘ | 特別な税制に基づいて、(ホ)に加えて償却する金額 基本的には何も記入しない |
本年分の償却費合計 | ト | (ホ)+(ヘ)の金額 割増償却費が無ければ(ホ)と同じ金額を記入する |
事業専用割合 | チ | 対象の資産を事業用に使った比率(家事按分をする場合) 事業でしか使用していなければ「100」と記入する |
本年分の必要経算入額 | リ | (ト)×(チ)の金額 家事按分をしない場合は(ト)と同じ金額を記入する |
未償却残高(期末残高) | ヌ | 取得価額のうち、まだ経費計上していない金額 その年に買った資産なら(イ)から(ト)を引いた金額になる |
摘要 | 減価償却の方法に関する注意書き 中古資産や、特殊な償却方法を利用する際に記入する |
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計 | 縦列それぞれの合計金額 「本年分の必要経費算入額」の合計は1ページの⑱と一致 |
上記はすべて「定額法」で減価償却をする際の記入方法です。個人事業では稀なケースですが「定率法」で減価償却をする際は、記入例を参考にしてください。
なお、青色申告では「少額減価償却資産の特例」を適用できます。これによって、取得価額が30万円未満の固定資産なら、全額をその年の経費にすることが可能です(合計300万円まで)。特例を利用する場合は、摘要の欄に「少額減価償却資産の特例」と明記しておきましょう。
ちなみに「割増(特別)償却費」を記入するのは、「中小企業投資促進税制」や「中小企業経営強化税制」などの特別な制度を利用した際のみです。これに関係のない事業主は、何も記入しません。
2. 利子割引料の内訳
金融機関以外に支払った「借入金の利子」や「手形割引料」の詳細を記入します。該当する支払いのない事業主は、何も記入しません。ちなみに手形割引料とは、報酬などで受け取った「手形」を早めに現金化する際に支払う手数料のことです。
なお、ここで言う「金融機関」の範囲は少し曖昧です。ひとまず、明確に「金融業を営んでいる」とは言えない個人や法人から借り入れをしたら、その利子について記入しておきましょう。銀行や日本政策金融公庫からの借入金については記入不要です。
支払先の住所・氏名 | 利子などを支払った相手の住所と名前 金融機関以外の個人名や企業名を記入する |
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期末現在の借入金等の金額 | 期末時点(12月31日)で、まだ返済していない残高の金額 借り入れた金額からこれまでの返済額を差し引いた額を記入 |
本年中の利子割引料 | 1年間で支払った利子などの合計金額 |
左のうち必要経費算入額 | 「本年中の利子割引料」うち、経費に計上する金額 家事按分をしない場合は、左の金額と一致する |
「左のうち必要経費算入額」に記入する金額は、1ページ目の「利子割引料(㉒)」と必ず一致します。
3. 地代家賃の内訳
「地代家賃」として計上した支出の詳細を記入します。貸事務所や貸店舗の賃借料を支払っていたら、ここにその内訳を記入しましょう。自宅兼事務所の場合でも、家賃の一部を家事按分で経費に計上するなら、この欄の記入が必要です。
支払先の住所・氏名 | 物件を所有する大家さんや会社の名前と住所 ※借りている物件の住所ではない |
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賃借物件 | 借りている物件の使いみち 例:自宅兼事務所・事務所・店舗・倉庫・工場 |
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本年中の賃借料・権利金等 | 権 更 |
1年間に支払った「権利金」や「契約更新料」の金額 当てはまる方に○をして金額を記入 |
賃 | 1年間に支払った「賃借料(家賃)」の合計額 上の欄に書いた権利金や更新料は、ここに含めない |
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左の賃借料のうち 必要経費算入額 |
権利金や賃借料の合計(権更 + 賃)のうち経費に計上する金額 家事按分をしない場合は、単純に権利金や賃借料の合計 |
「左の賃借料のうち必要経費算入額」に記入する金額は、1ページ目の「地代家賃(㉓)」と必ず一致します。ちなみに、入居の際に支払う敷金や保証金は、返還される可能性があるため、地代家賃には計上しません。
4. 税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳
税理士や弁護士に仕事を依頼して、報酬や料金を支払っていたら、その詳細を記入します。税務相談など、一時的なサービスを利用しただけでも記入が必要です。税理士や弁護士のサービスを利用していない事業主は、何も記入しません。
支払先の住所・氏名 | 報酬などを支払った税理士・弁護士の氏名(事務所名)と住所 |
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本年中の報酬等の金額 | 支払った報酬などの合計金額 |
左のうち必要経費算入額 | 支払った金額のうち、必要経費に計上する金額 家事按分をしていなければ、左と同じ金額でOK |
所得税及び復興特別所得税 の源泉徴収税額 |
報酬から源泉徴収をした所得税と復興特別所得税の合計金額 |
5. 本年中における特殊事情
確定申告の内容について、特殊な事情があればここに記入します。税務署員へ伝えておきたいことが特になければ、空欄でもまったく問題ありません。
例年の申告内容と大きく異なる部分がある場合、それが虚偽の申告による所得隠しなどを疑われる原因になります。無用な疑いによる税務調査を避けるためにも、イレギュラーな事情があればこの欄で伝えておきましょう。
特殊事情の例① 都合により売上が大幅に減少した場合
特殊事情の例② 一部の経費が大幅に増加した場合
特殊事情の例③ 専従者の従事期間が6ヶ月以下だった場合
青色申告では、妥当な理由があれば、従事期間が6ヶ月以下の親族でも専従者と認められます。従事期間が短い専従者がいたら、念のため理由を書いておくと良いでしょう。
3ページ目に記入する内容は以上です。引き続き、4ページ目の記入方法について説明します。手書きの場合は、先に2、3ページの内容を1ページ目に転記してから4ページ目の作成に移りましょう。