青色申告決算書の4ページ目の書き方について、記入例を交えて説明します。この記事では2023年の確定申告期間に提出する、2022年分(令和4年分)の例で説明しています。
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目次
青色申告決算書の書き方【4ページ目】
青色申告決算書の4ページ目には、「貸借対照表」と「製造原価の計算」を記入します。65万円 or 55万円の青色申告特別控除を受けるには、貸借対照表の作成が必須です。そもそも10万円の青色申告特別控除額で十分であれば、作成する必要はありません。
「製造原価の計算」を記入するのは、主に製造業を営む事業主です。ある程度の規模で原材料費の計算などを行っている事業者でなければ、記入をする必要はありません。
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1. 日付
貸借対照表の3ヶ所に、日付を記入します。
令和 年 月 日現在
貸借対照表の上にある日付欄には、期末の日付を記入します。個人事業の場合は、必ず「令和○年12月31日」になるということ。記入日や提出日の日付を書くのではありません。2022年分の青色申告決算書では「令和4年12月31日」と記入しましょう。
月 日(期首)・ 月 日(期末)
貸借対照表の中にある日付欄には、2ヶ所とも「1月1日(期首)」「12月31日(期末)」と記入します。個人事業の会計期間は、毎年1月1日~12月31日と決まっているからです。もし年の途中で新規開業した場合は、その年は期首に開業日の日付を書きましょう。
2. 貸借対照表 – 資産の部
貸借対照表とは、ある時点における事業の財務状況をまとめた表のこと。青色申告決算書の貸借対照表では、期首と期末の2つの時点を比較して、財務状況の変化を明らかにします。65万円 or 55万円の青色申告特別控除を受けるためには、必ず記入しなくてはなりません。
「資産の部」には、期首における資産と、期末における資産の内訳をそれぞれ記入します。ちなみに資産とは、簡単に言うと「お金」や「いずれもらえるお金」(売掛金など)のこと。また、金銭的に評価ができるものや、将来的に有益な価値を得る権利なども含みます。
現金 | 事業用に用意しているお金(硬貨と紙幣)の金額 |
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当座預金 | 小切手や手形支払いのために使う口座の残高 当座預金を利用していない場合は記入しない |
定期預金 | 一定期間お金を引き出せない口座の残高 定期預金を利用していない場合は記入しない |
その他の預金 | 普通預金口座などの残高 |
受取手形 | 手形で受け取った報酬など(その時点で換金していないもの) 報酬などを手形で受け取っていない場合は記入しない |
売掛金 | 後払いで受け取る売上や報酬 例:1月に振り込まれる12月分の報酬・12月分のクレジット売上 |
有価証券 | 事業での売買を目的として保有する株式や債券などの金額 |
棚卸資産 | 在庫として保有している商品や製品、原材料などの金額 ※まだ届いていない商品や、製造途中の製品なども含む |
前払金 | まだ提供されていない商品やサービスに支払った代金・報酬 例:翌年1月の広告掲載費用を年内に支払った場合など |
貸付金 | 取引先や従業員などに対して、事業用資金から貸し付けている金額 |
建物 | 建物の取得費用や、内装工事費用などの減価償却残高 |
建物附属設備 | 建物と一体となって機能する設備の減価償却残高 例:間仕切り・袖看板・空調設備・電気設備・厨房設備 |
機械装置 | 工場などで使われる大掛かりな機械の減価償却残高 例:農業用トラクター・クリーニング設備・木材用の自動送材装置 |
車両運搬具 | 事業で使う自動車などの減価償却残高 例:乗用車・トラック・フォークリフト・バイク |
工具器具備品 | 事業用の器具や大掛かりでない機械製品の減価償却残高 例:パソコン・コピー機・オフィス家具・冷蔵庫・カメラ |
土地 | 事業用に購入した土地の減価償却残高 |
(空欄) | 上記に該当しない資産がある場合はここに記入する (前払費用・開業費・一括償却資産・ソフトウェアなど) |
事業主貸 | 事業用資金をプライベートな用途に移した合計金額 例:プライベートの口座に移したお金・住民税の支払い |
合計 | 上記金額の合計 |
※プライベートで保有している資産については記入しない
「前払金」とは、商品や単発のサービスに対して前払いした金額のこと。「前払費用」という勘定科目もありますが、こちらは火災保険や備品のリースなどの「継続的なサービス」に前払いした金額を指します。どちらも資産の部に記入しますが、区別が必要です。
「事業主貸」の金額は、毎年必ず期末でリセットされることになっています。そのため、期首には事業主貸の残高が存在しません。単純に「本年中に事業主貸に計上した金額」を、期末の欄に記入すればOKです。
3. 貸借対照表 – 負債・資本の部
「負債・資本の部」では、まず上の方から「負債」を記入していきます。そして下の方に、資産から負債を差し引いた「資本」を記入します。ちなみに「貸倒引当金」は、資本を減らすための特殊な勘定科目(評価勘定)なので中途半端な位置にあります。
なお、貸借対照表では「資産の部」の合計と「負債・資本の部」の合計が必ず同じになります。期首と期末それぞれ、左右の合計額が一致することを確認しましょう。金額がズレている場合は、どこかで計算を間違えているか、記入漏れがあるはずです。
支払手形 | 自分が発行した手形の金額(その時点でまだ支払っていないもの) 報酬などを手形で渡していない場合は記入しない |
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買掛金 | 直接的に売上につながる費用のうち、後払いで支払う金額 例:12月分の仕入代金や外注費用を翌1月に支払う場合など |
借入金 | 金融機関や、その他の法人、個人から借りている資金 例:銀行からの融資・親戚から借りた事業資金 |
未払金 | 後払いで支払う金額(直接的に売上につながる費用を除く) 例:事業用の備品を分割払いで購入する場合など |
前受金 | 商品やサービスを提供する前に受け取った代金・報酬の金額 例:商品代金の一部を手付金として受け取った場合など |
預り金 | 従業員や取引先などから一時的に預かっている金額 例:源泉徴収をした所得税・従業員負担分の労働保険料 |
(空欄) | 上記に該当しない負債などがある場合はここに記入する (未払費用・仮受金・前受収益・仮受消費税など) |
貸倒引当金 | 貸倒れによる損失に備えて、収入から差し引いておく金額 期末の金額は1ページ目の㊴、2ページ目の⑤の両方と一致する |
(空欄) | 上記に該当しない負債や引当金がある場合はここに記入する ※「貸倒引当金」の上にある空欄と使い分ける必要はない |
事業主借 | プライベートなお金を事業用に移した合計金額 例:事業主個人用の口座から事業用口座にお金を移した場合など |
元入金 | 開業時に用意していたお金に、これまでの所得などを含めた金額 期中は変化しないため、期首と期末の金額は必ず一致する |
青色申告特別控除前 の所得金額 |
青色申告特別控除を差し引く前の所得金額 1ページ目の㊸と必ず一致する |
合計 | 上記金額の合計 期首と期末の合計は、それぞれ資産の部の合計と必ず一致する |
「買掛金」と「未払金」は似ていますが、事業におけるメインの支出と言えるかどうかで区別しましょう。仕入代金や、製品の製造に不可欠な外注費などを買掛金として、それ以外を未払金に含めることが多いです。また、継続的なサービスの場合は「未払費用」の勘定科目を使います。
「元入金」には、前年の「元入金 + 所得 + 事業主借 – 事業主貸」の金額を記入します。事業が赤字だったり、事業主貸が多かったりした翌年には、元入金がマイナスになることもあります。開業年の場合は、開業のために用意したお金がそのまま元入金になります。
4. 製造原価の計算 – 原材料費
「製造原価の計算」は、原材料を仕入れて加工し、それを販売する類の事業者が、製品製造原価の計算内容を明らかにするために記入します。そもそも原材料の仕入れなどを行わない事業者は、記入する必要がありません。
おおまかに言うと「仕入金額がそれなりに大きい」かつ「仕入れから製造完了までの期間が長い」業種の場合には記入します。そのような業種では、製造原価を算出しないと、正確な売上原価が求められません。
期首原材料棚卸高 | ① | 1月1日時点で持っている原材料の総額 年の途中で開業した場合は、その時点での総額 |
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原材料仕入高 | ② | 1年間で仕入れた原材料の合計金額 |
小計 | ③ | ①と②の合計金額(① + ②) |
期末原材料棚卸高 | ④ | 12月31日時点で持っている原材料の総額 |
差引原材料費 | ⑤ | ③から④を差し引いた金額(③ – ④) |
ここで言う「原材料」とは、基本的に「手を加える前の状態のもの」を指します。すでに製造工程に入り、加工が施されているものは「半製品」や「仕掛品」として扱われ、原材料の棚卸高には含まれません。⑤は「1年間で使った原材料の合計金額」を表しているということです。
5. 製造原価の計算 – 製造経費
ここには、1年間の製造にかかった「原材料費以外の費用」を記入します。ただし「製造にかかる費用」と「製造以外の業務にかかる費用」を区別するのが難しい場合は記入しなくてもよいです。その場合、すべての費用を1ページ目でまとめて申告する形になります。
製品製造に直結する外注工賃はここに記入しますが、会社ホームページのデザイン費用など、製造に直接関わらない外注工賃は1ページ目に記入するということです。どちらに記入しても収入から差し引かれる金額は変わりませんが、できる限り正確に申告しましょう。
労務費 | ⑥ | 製造業務にかかった人件費 |
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外注工賃 | ⑦ | 製造業務の一部を外部に委託した際の費用 例:製品のパッケージデザインを外注した場合など |
電力費 | ⑧ | 製造業務にかかった電気代 |
水道光熱費 | ⑨ | 製造業務にかかった水道代やガス代など |
修繕費 | ⑩ | 製造業務の一部を担う資産を修理した際の費用 例:工場機械を修理する場合など |
減価償却費 | ⑪ | 製造業務の一部を担う資産の減価償却費 |
(空欄) | ⑫~⑲ | 製造業務に関わる費用が他にあれば記入する |
雑費 | ⑳ | 上記の科目に当てはまらない少額の費用 |
計 | ㉑ | ⑦から⑳の合計金額 ※労務費(⑥)の金額は含めない |
6. 製造原価の計算 – 製品製造原価
ここでは、1年間の製造費用の総額から、期末時点で完成していない製品の製造費用を差し引くなどして「今期に完成させた製品の製造費用(㉖)」を算出します。
なお「半製品」や「仕掛品」とは、ざっくり言えばどちらも製造途中の製品のことです。ひとまず、この2つを厳密に区別する必要はありません。
総製造費 | ㉒ | ⑤と⑥と㉑の合計金額 (⑤ + ⑥ + ㉑) |
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期首半製品・仕掛品棚卸高 | ㉓ | 1月1日時点で保有する半製品や仕掛品の製造費用 年の途中で新規開業した場合は基本的に記入しない |
小計 | ㉔ | ㉒と㉓の合計金額 (㉒ + ㉓) |
期末半製品・仕掛品棚卸高 | ㉕ | 12月31日時点で保有する半製品や仕掛品の製造費用 |
製品製造原価 | ㉖ | ㉔から㉕を差し引いた金額 (㉔ – ㉕) |
「製品製造原価(㉖)」の金額は、そのまま1ページ目の③に転記します。製造業の場合、1ページ目では「期首から完成していた製品」と「期中に完成させた製品」の製造費用から「期末に売れ残った製品」の製造費用を差し引いて売上原価を求めます。
青色申告決算書の4ページ目に記入する内容は以上です。「製造原価の計算」から書き始めた場合は、続いて2ページ目と3ページ目を記入しましょう。青色申告決算書が完成したら、確定申告書の作成に移ります。