- フリーランスへの発注は、口頭ではなく文書での契約が必要になる
- ほかにも色々とフリーランスを保護するためのルールができた
- 2023年5月時点では未施行(施行日は遅くとも2024年秋ごろ)
INDEX
目次
フリーランス保護新法とは?いつから施行?
フリーランス新法とは、フリーランスが仕事を請けるときに不当な扱いをされないよう、取引先の企業などを規制する法律です。現時点では未施行ですが、2024年の秋ごろまでには施行される見込みです。
なお、フリーランスが「一般消費者」から注文を受けたときや、ひとり社長などを含む「フリーランス」から発注された際には適用されません。フリーランス新法によって守られるのは、あくまで「従業員を雇っている事業者」から業務委託された場合だけです。
保護対象者となるフリーランスの例
- ITエンジニア、プログラマー、WEBデザイナー
- ライター、イラストレーター、カメラマン
- コンサルタント、マーケター
- スポーツジムのインストラクター、トレーナー
- フードデリバリーの配達員
※ 上記以外でも、従業員を雇っていない事業者は保護対象になりえます
フリーランス新法は2023年5月に公布されましたが、未施行のため2023年6月時点ではまだ効力がありません。成立から1年半以内には施行される予定なので、遅くとも2024年秋までには適用開始となる見込みです。
ちなみに、フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。既存の法律を改正するのではなく、新しい法律として作られたためいまのところは「フリーランス“新法”」や「フリーランス保護“新法”」と呼ばれています。
【義務】発注側の企業がやるべきこと
従業員を雇っている事業者がフリーランスに業務委託する際は、以下のような義務が生じます。この義務を果たさないと、公正取引委員会などから指導が入り、最高50万円の罰金となることがあります。
フリーランスへ発注する企業に義務付けられること
- 文書で契約内容を明記すること
- 60日以内に報酬を支払うこと
- 契約解除は30日前までに予告すること(継続的業務委託の場合)
- 募集広告には、最新情報を正確に載せること
- ハラスメントの相談窓口などを用意すること*
- 育児や介護について配慮すること(努力義務)*
* 違反に関する罰則規定なし
仕事を依頼する際は、書面やメールで「委託する業務や成果物の内容、報酬金額、支払期日」などを明記しなくてはいけません(業務委託契約書)。電子契約サービスを活用すれば、送料や印紙税はかかりませんし、オンライン完結で手軽にやり取りできます。
報酬の支払期日は原則「60日以内」ですが、この日数は“納品された日”からカウントします。したがって、支払日を「月末締めの翌々月末払い」のような形にしていると、意図せず60日を超えてしまうことがあるので注意しましょう。
【禁止事項】発注側の企業がしてはいけないこと
従業員を雇っている事業者がフリーランスに業務委託する際、一定の期間以上にわたる業務委託に関しては、以下の行為が禁止されています。違反すると公正取引委員会などから指導が入り、最高50万円の罰金となることがあります。
なお、この「一定の期間」については、フリーランス新法の施行日までには具体的な期間が定められる予定です(2023年6月時点では未定)。
フリーランスへ発注する企業に禁止されていること
- 成果物などの受領拒否や返品*
- 報酬の減額*
- 相場を無視した買いたたき
- 正当な理由なく、物やサービスを強制的に売りつけること
- 発注者のために金銭、サービスなどを提供させること
- 委託内容の変更・やり直し*
* 受注側のフリーランスに責任がある場合を除く
成果物やサービスに問題がないのに、受け取りを拒否したり、際限なく修正させたり、一方的に報酬を減らしたりはできません。また、業務とは何の関係もない商品などを、立場を利用して無理に売りつけてはいけません。
いわゆる「サービス残業」のようなことをやらせるのもアウトです。たとえば、配送業のフリーランスに対し、倉庫の前まで運ぶだけの契約なのに「ついでに倉庫内の仕分け作業もやってよ」などと求めると、罰則の対象となる場合があります。
被害を受けたフリーランス側はどうする?
フリーランス新法が施行されたら、各地にフリーランスのための相談窓口が設置されるようです。相談の内容によっては、行政から企業に対して「勧告」や「命令」が行われ、命令に従わない企業には「50万円以下の罰金」が科されます。
基本的には、上記のように段階を踏みます。フリーランスとしては「すぐに命令してほしい!」と思うかもしれませんが、うっかりミスの可能性もありますから、まずは「行政からのお願い」という形を取ることになっています。
こんなときは相談窓口へ(一例)
- 納期から60日を超えても報酬が支払われない
- クライアント都合で報酬を減らされた
- クライアント都合でリテイク・修正させられた
- クライアント都合で受け取りを拒否された
- 契約外の業務を追加でやらされた
「窓口に通報したら、逆恨みで取引を切られたりするのでは?」という心配もあるでしょう。ですが、フリーランス保護新法では、こうした報復行為も勧告・罰金の対象です。勧告が無視された場合はその事実が公表されるため、一定の抑止効果は期待できます。
「フリーランス保護新法」と「下請法」の違い
フリーランスの立場から「フリーランス新法」と「下請法」を比較すると、フリーランス新法のほうが対象範囲は広くなっています。そのため、従来の下請法では保護されなかった事業者も、今後は保護されやすくなります。
フリーランス新法 | 下請事業者 | |
---|---|---|
保護の対象 | 業務委託を受けて 一人で働くフリーランス |
下請事業者 |
規制の対象 | 従業員を雇っている事業者 | 資本金が一定額以上の親事業者 (少なくとも1,000万円超) |
主な義務 | 委託条件の明記、60日以内の支払い義務など | |
主な禁止行為 | 不当なキャンセルや買いたたきの禁止など | |
罰則 | 最高50万円の罰金 |
「下請法」の規制対象は、資本金1,000万円超の事業者だけです。一方「フリーランス新法」ではこのような制限がなく、小規模な事業者とのトラブルにも対応できます。その他の大まかな内容は、だいたい共通しています。
ちょっと細かな話をすると、フリーランス新法のほうが、より具体的に禁止事項などを記載しています。そのため、トラブルになったときに「ほら、この条文にダメって書いてますよね?」などと主張しやすくなっています。
まとめ – フリーランス保護新法の要点
フリーランス新法は、企業からフリーランスへの「無茶振り」を規制し、フリーランスが安定的に働けるようにする法律です。2023年(令和5年)5月に公布され、遅くとも2024年(令和6年)の秋ごろには施行される見通しです。
フリーランス保護新法の内容
保護される事業者 | 従業員を雇っていない個人事業主・法人 (→ フリーランス) |
---|---|
規制される事業者 | 従業員を雇っている個人事業主・法人 |
主な規制内容 (発注する側への規制) |
・口頭での依頼はNG(文書で依頼する) ・60日以内に報酬を支払わないといけない ・不当な返品や受け取り拒否はダメ ・報酬を理由なく減額してはいけない ・極端な買いたたきもダメ |
違反時のペナルティ | 50万円以下の罰金など |
施行日 | 遅くとも2024年秋ごろ |
※ わかりやすくするため、表現を簡略化しています
ここでいう「フリーランス」とは、従業員を雇っていない個人事業主・法人です。一般企業がフリーランスに業務委託する際は、下記の考え方を踏まえて行動しましょう。
フリーランス保護法の考え方
- フリーランスに仕事を頼むときは、きちんと文書で契約する
- あらかじめ「業務内容・報酬金額・支払期日」などの条件を明記する
- クライアントの立場を悪用した不当な要求をしてはいけない
フリーランス保護法に違反した事業者には、公正取引委員会などから行政指導(助言・指導・勧告)が入ります。これに従わなかった場合は、その事実が一般に公表され、行政処分(命令・罰金)の対象となります。
仕事を請ける立場のフリーランスも、こうしたルールを事前に知っておくことで、不当な扱いを受けたときに気づきやすくなります。もし実際に被害を受けた場合は、各地の相談窓口に通報できます。