2021年1月から発令された緊急事態宣言にともない、一定の要件を満たす個人事業主へ最大30万円の「一時支援金」が給付されます。昨年の「持続化給付金」とは要件や手続きが大きく異なるので、よく確認してから申請しましょう。
>> 一時支援金の記帳方法・記帳例
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目次
「一時支援金」とは?
緊急事態宣言の影響で収入が減少した中小事業者に対し、個人30万円・法人60万円を上限とする「一時支援金」が給付されます。飲食・観光旅行関連の事業者が主な対象ですが、それらと取引のある事業者も対象になり得ます。
「一時支援金」の概要
給付額 | フリーランスを含む個人事業主:最大30万円 法人:最大60万円 |
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給付単位 | 店舗単位・事業単位ではなく「事業者単位」で給付される |
主な対象 |
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主な要件 | ① 2021年1月に発令された緊急事態宣言による飲食店時短営業 or 外出自粛の影響を受けた ② 2021年1月~3月に、売上が前年(前々年)比で50%以下になった月(対象月)がある |
基本計算式 | (2019年1月~3月 or 2020年1月~3月の合計売上) ー(2021年対象月の売上 × 3)= 給付額(上限あり) |
申請受付期間 | 2021年3月8日(月)~5月31日(月) |
申請方法 | 「申請サイト」からオンライン申請が基本 (オンライン申請が難しい事業者向けに申請サポート会場あり) |
本表はあくまで基本情報(特例対象などは省略)
本記事では、事業所得を得ている個人事業主向けに、重要な情報だけを噛み砕いて説明しています。経産省の公式資料は正確ですが複雑なので、素早く全体像をつかむ用途で本記事をご利用ください。
給付要件を理解しているか電話確認される!?
「審査が厳格に行われるのであれば、とりあえず申請書だけパッと提出して、給付要件の判定は審査機関に丸投げしちゃえばいいのでは?」という考え方もあるでしょう。
しかし、申請のプロセスで、TV会議・対面・電話などにより「給付要件を正しく理解しているか」などの事前確認があります。これをパスしないと、申請そのものができない仕組みになっています。したがって、ある程度は制度を理解しておく必要があるのです。
給付要件① 緊急事態宣言の影響
一時支援金を受けるには、収入が減少した原因が「2021年1月から発令された緊急事態宣言によるもの」である必要があります。宣言地域内の事業者はもちろん、宣言地域と関わりのある宣言地域外の事業者も対象になり得ます。
給付要件①については、以下のどちらかに当てはまっていればOKです。
飲食店の時短営業により、 直接・間接の影響を受けた事業者 |
外出・移動の自粛により、 直接の影響を受けた事業者 |
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宣言地域外の事業者でも、宣言地域内の時短飲食店と取引があれば対象になり得る 例:時短飲食店に食材を売る生産者 |
宣言地域外の事業者でも、宣言地域内の人が利用するサービスなら対象になり得る 例:宣言地域に隣接する旅館 |
「地方公共団体から時短営業の要請を受けた、協力金の支給対象の飲食店」は、今回の一時支援金は給付対象外です。つまり「すでに時短要請による協力金をもらった飲食店自体は、一時支援金をもらえない」ということです。
給付要件② 売上の減少
2021年1月~3月のいずれかの月において、2019年比 or 2020年比で売上(事業収入)が50%以下になった月があれば、売上の要件を満たせます。図でざっくり表すと、以下のようになります。この図では、2020年比で2月に収入が半分以下になっています。
白色申告の場合、過去の事業収入を確認するには、確定申告書Bの第一表を確認します。「収入金額等」の「事業 営業等」の金額を、営業月数(通常12ヶ月)で割った金額を各月の事業収入とみなすことになっています。
青色申告の場合、原則として青色申告決算書の2ページ目の「売上(収入)金額」を確認します。そこに記入した、それぞれの月の金額です。
計算方法
基本的な計算式は、次の通りです。なお、ここでは2020年比を前提に説明していきます。2019年比で考える場合は、2019年1月~3月の売上を参照しましょう。
給付額の計算例(青色申告の場合)
たとえば、売上が以下の金額であったとします。
1月 | 2月 | 3月 | |
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2020年 | 30万円 | 40万円 | 30万円 |
2021年 | 20万円 | 10万円 | 25万円 |
2020年と比べて2021年2月の売上が50%以下になっているので、この月が対象月です。上記の計算式に当てはめると、次のようになります。
(30万円 + 40万円 + 30万円)-(10万円 × 3)= 70万円
個人事業者への最大給付額は30万円なので、この場合は上限額の30万円が支給されることになります。なお、複数の月が50%以下になっていれば、任意の月を対象月として計算できます。
必要書類
個人事業主の場合、申請時に提出する書類は下表のとおりです。これらをスキャン or 撮影して、申請時に添付します。一時支援金は、オンライン申請が基本です。
確定申告書類 | 2019年分と2020年分の両方が必要 ・確定申告書B第一表の控え ※収受印が押されているもの ・青色申告決算書の控え(青色申告者のみ) |
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対象月の売上台帳 | ・収入月や合計金額が明記されていること ※フォーマットは自由 |
本人確認書類 | 例)以下のいずれか ・運転免許証の両面 ・マイナンバーカードの表面のみ ・健康保険証+住民票 |
宣誓・同意書 | ・自署をすること |
通帳 | 以下がすべて確認できるようにすること ・金融機関名、支店番号、支店名 ・口座種別、口座番号、口座名義人 |
取引先情報一覧 | 指定のフォーマットに以下の情報を記載する ・法人顧客の法人名、法人番号、連絡先 ・個人顧客の屋号・雅号、氏名、連絡先 |
保存書類(提出は不要)
以下の書類は、申請時点では提出する必要はありません。ですが、調査のために提出を求められることがありますので、紙やデータで7年間保存しておきましょう。
申請~受け取りの流れ
まずは、公式の申請サイトにアクセスしましょう。まずアカウント登録をし、以下の流れで申請を進めます。
TV会議・対面・電話などにより、登録確認機関の事前確認を受けることになっています(要予約)。確認内容に問題がなければ「事前確認通知番号」が発行されます。ここでいう「確認」とは、主に以下の2点を確認することを指します。
- 申請者が事業を実施していること
- 申請者が給付要件を正しく理解していること
具体的には、以下のような内容を想定しているようです。なお、この事前確認においては、給付要件を実際に満たしているかどうかは審査されません。あくまで形式的な確認だけが行われます。
- 申請者の氏名などの基本情報
- 本人確認書類
- 申告書控え・帳簿書類などが揃っているか
- 取引先から支払があった証拠となる通帳
- 書類(3や4)に不足がある場合は、その理由
- 給付対象や宣誓・同意事項を正しく理解しているか
事前確認が終わったら、必要書類をそろえて、申請サイトから送信しましょう。一時支援金事務局が、要件を満たしているかの審査を行いますので、その結果を待つだけです。無事に通れば、給付通知書が発送され、指定の口座に一時支援金が入金されます。