個人事業主に最大30万円が給付される「一時支援金」の給付額計算についてまとめました。白色申告と青色申告では、比較対象にする基準年の売上(事業収入)の考え方が異なる点に注意が必要です。
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目次
給付額計算における白色申告と青色申告の違い
一時支援金の主な給付要件のひとつに「2019年 or 2020年比で、2021年1月~3月いずれかの売上が50%以下になっていること」というものがあります。
この基準年(2019年 or 2020年)の事業収入の考え方が、白色申告と青色申告で異なります。それに従い、計算方法も両者で異なります。
- 比較対象にする事業収入
- 給付額の計算方法
この2点を白色申告と青色申告の場合に分けて、本記事で説明していきます。
なお、経産省の資料では「売上」と「事業収入」の表記が混在しています。同省の資料で「事業収入(売上)」という表記もありますので、本記事でも区別せず同様に扱います。>> 売上と収入の違い
白色申告① 比較対象にする事業収入
白色申告の場合、まず基準年分(2019年分 or 2020年分)の確定申告書 第一表(控え)を取り出しましょう。たとえば2020年分の確定申告書とは、2021年2月16日〜4月15日の確定申告期間中に提出するものです。
その「収入金額等」の事業欄にある金額を確認します。そして、これを営業月数(通常12ヶ月)で割り、月平均の事業収入を算出します。これを2021年1月~3月の各月収入との比較対象にします。
引用
事業収入は、所得税法(昭和40年法律第33号)第2条第1項第37号に規定する「確定申告書 第一表」に おける「収入金額等」の事業欄に記載される額と同様の考え方によるものとし、2019年及び2020年の年間事業収入は当該欄に記載されるものを用いることとする。
一時支援金の申請要領 p.8 – 経済産業省
白色申告の場合、基準年の各月収入は、それぞれの月に実際に得た収入額で考えるわけではないということです。なお、2019年か2020年に新規開業した場合は、年間事業収入を開業してからの月数で割ることになります。
白色申告② 給付額の計算方法
たとえば、比較対象にする基準年を2020年とし、その年の事業収入が720万円だったとしましょう。この場合、下記の計算を行います。
これを2021年1月~3月の事業収入との比較対象にします。
1月 | 2月 | 3月 | |
---|---|---|---|
2020年 | 60万円 | 60万円 | 60万円 |
2021年 | 50万円 | 20万円 | 40万円 |
2021年2月の事業収入が50%以下になっているので、この月を対象月として計算します。あとは、給付額の基本計算式にあてはめて計算するだけです。
- 一時支援金の基本計算式
- 2019年 or 2020年の対象期間の合計売上 - 2021年の対象月の売上×3 = 給付額
個人事業主への給付額上限は30万円なので、この場合は満額の30万円が給付されることになります。なお、法人の場合は60万円が給付の上限額です。
青色申告① 比較対象にする事業収入
青色申告の場合は、基準年分(2019年分 or 2020年分)の青色申告決算書2ページ目を参照するのが原則です。たとえば2020年分の青色申告決算書とは、2021年2月16日〜4月15日の確定申告期間中に提出するものです。
「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の「売上(収入)金額」を確認しましょう。
引用
青色申告を行っている場合は、基準年の同月の事業収入は、所得税青色申告決算書(一般用)にお ける「月別売上(収入)金額及び仕入金額」欄の「売上(収入)金額」の額を用いることとする。
一時支援金の申請要領 p.8 – 経済産業省
青色申告② 給付額の計算方法
青色申告では基準年の青色申告決算書を参照します。今回は2019年分の売上を比較対象にするとしましょう。青色申告決算書2ページ目の「月別売上(収入)金額及び仕入金額」欄の「売上(収入)金額」を確認します。
1月 | 2月 | 3月 | |
---|---|---|---|
2019年 | 80万円 | 70万円 | 95万円 |
2021年 | 30万円 | 60万円 | 40万円 |
本例では1月と3月が対象月として選べます。対象月は任意で選択できますから、最も金額の少ない月を選びましょう。今回は1月の売上です。
- 一時支援金の基本計算式
- 2019年 or 2020年の対象期間の合計売上 - 2021年の対象月の売上×3 = 給付額
個人事業主の給付上限額は30万円ですから、本例でも満額の30万円を申請できます。株式会社などの法人は最大60万円です。
まとめ – 白色申告と青色申告の違い
一時支援金の給付について、収入要件を満たしているかを確認するには、まず基準年(2019年 or 2020年)の事業収入を確認しましょう。本記事で見てきたとおり、この考え方は白色申告と青色申告で異なります。
白色申告の場合
- 基準年の確定申告書 第一表にある事業収入を参照する
- それを営業月数(通常12)で割って月平均の事業収入を算出する
- 算出した金額を比較対象にして、2021年の対象月を判断する
青色申告の場合
- 基準年の青色申告決算書2ページ目にある各月売上を参照する
- その各月売上を比較対象にして、2021年の対象月を判断する
対象月を決めてからの計算式は、どちらも同じものを用います。基準年と比較して50%以下になった月が複数あれば、事業者が任意の月を対象月に選択できます。