収入を「給与所得」として申告していたフリーランスも、要件を満たせば「持続化給付金」を受け取れます。ただ、対象はあくまで「業務委託契約等による収入」を給与所得として申告していた人だけです。会社員やアルバイトは該当しません。
>> 持続化給付金の仕訳方法・記帳例はこちら
INDEX
目次
持続化給付金とは
2020年6月29日から「主たる収入を給与所得で確定申告した個人事業主」が持続化給付金の対象に加わりました。これまでは対象外だったフリーランスも、最大で100万円の給付金を受け取れる可能性があります。
持続化給付金の主な対象
- 中小法人
- これまで収入を「事業所得」で申告していた個人事業主
- これまで収入を「給与所得」「雑所得」で申告していた個人事業主←NEW
以前は、個人事業主のなかでも「事業所得」による収入がある事業者だけが対象でした。これに加えて、現在は「給与所得」や「雑所得」による収入が中心の事業者も給付金を受け取れるようになったということです。
- 持続化給付金とは
- 新型コロナ感染症の拡大による影響を受けた事業者に対して支給される給付金。上限は個人で100万円、法人で200万円。給付金なので、返済する必要はない。
本記事では、今まで収入を「給与所得」で申告していた個人事業主に向けて説明していきます。なお、中小法人や事業所得で申告していた個人事業主は、要件や必要書類が少し異なるので以下のリンク先を参考にしてください。
>> 持続化給付金とは【中小法人・個人事業主向け】
給付の対象 – 業務委託契約に基づく収入を得ているか
今回加わった給付対象について、公式サイトでは以下のように記載されています。簡単にいうと「業務委託契約による収入であれば、給与所得や雑所得で申告したとしても給付の対象になるよ」ということです。
引用
フリーランスを含む個人事業者の方で、雇用契約によらない、業務委託契約等に基づく事業活動からの収入を、主たる収入として、税務上の雑所得又は給与所得で、確定申告をしている方等が対象となります。
給付対象 – 持続化給付金HP
ポイントは「雇用契約によらない、業務委託契約等に基づく事業活動からの収入」です。そもそも「業務委託契約」と「雇用契約」はどこが異なるのか、下表にておおまかに整理しました。
業務委託契約と雇用契約のおおまかな違い
業務委託契約 | 雇用契約 | |
---|---|---|
概要 | 会社が社内の業務を外部の個人などに外注する際に結ぶ契約のこと | 会社が従業員を雇う際に結ぶ契約のこと |
主な例 | ・フリーランス(個人事業主) | ・会社員(派遣・契約含む) ・パート ・アルバイト |
どちらに該当するか正確に判断するには、より緻密な議論が必要です。ただ、今回その判断をするのは、あくまで事務局側です。申請者は、必要書類さえきちんと揃えればよく、その書類に意図的な不正(契約書の偽造など)がなければ「不正受給」にもなりません。
要するに、フリーランスとしての自覚があれば、申請して構わないということです。以下のような職種は、業務委託契約にもとづく収入を得ている可能性があります。業務委託契約とみなすかは、その実態において判断されます。該当する職種であっても会社に雇われていれば、雇用契約です。
- 音楽教室や学習塾の講師
- ジムやフィットネスクラブのインストラクター
- エンジニア
- プログラマー
- WEBデザイナー
- イラストレーター
- ライター
たとえば、企業と委任契約を結んでいる講師の場合、その収入は業務委託契約によるものなので給付の対象に入ります。ただし同じ職種でも、企業に社員やアルバイトとして雇われていれば、その収入は雇用契約によるものなので給付の対象外です。
なお、報酬を月給や時給などのかたちで支払われていると「雇用契約」というイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。「業務委託契約」でも、契約内容によっては時間に応じて報酬が支払われることがあります。
給付の要件【給与所得用】
前述の「業務委託契約等による収入」を「給与所得」で申告していた人は、以下の3つをすべて満たせば給付金を受け取れます。なお、この要件は公式サイトで挙げられている要件をわかりやすくまとめ直したものです。
- 事業活動により主たる収入を得ている
- 2020年に、前年の月平均と比べて収入50%以下の月がある
- 2019年以前から被雇用者や被扶養者でない
要件①「主たる収入」とは
①は、要するに「業務委託契約等による収入」が主な収入かどうか、という要件です。これは、2019年分の確定申告書を見れば確認できます。下記のウ~クのうち「給与(カ)」の金額が一番大きければOKです。
※「事業活動による主たる収入」を、給与所得の区分で申告したフリーランスの場合
ちなみに、前述したとおり、事業収入(ア・イ)が少しでもある場合は、その金額をもとに給付額を計算しなくてはなりません。要件なども微妙に異なるので注意しましょう。
>> 持続化給付金の要件や計算方法など【事業所得者の場合】
要件② 収入要件について
②は、収入の減少額に関する要件です。2020年の1~12月に「収入金額が2019年の平均月収と比べて、50%以下になった月」が一度でもあれば、この要件はクリアできます。ここでいう「2019年の平均月収」は、2019年分の確定申告書から下のように求めます。
たとえば、2019年の給与収入が360万円だったら、平均月収は30万円です(360万円 ÷ 12)。この場合、2020年中に「収入が15万円以下になる月」があれば要件を満たせるわけです。
被雇用者・被扶養者は給付の対象外
要件③の「2019年以前から被雇用者や被扶養者でない」ですが、簡単にいうと会社員や家族の扶養に入っている人は対象外であるということです。
「被雇用者」とは
冒頭でも説明しましたが、被雇用者(会社員・パート・アルバイトなど)は給付を受けられません。さらに注意したいのが、主たる収入が業務委託契約等によるものであっても、ほかで雇用契約を結んでいる場合はNGということです。
たとえば、基本はフリーエンジニアとしての収入が中心だが、たまにアルバイトをして収入を得ているという場合は給付の対象外です。ただし、2019年中に退職するなどして被雇用者ではなくなり、独立・個人事業を開業した人は対象になりえます。
「被扶養者」とは
被扶養者も対象外なので、家族の扶養に入っている場合も給付金は支給されません。たとえば学生は、親が加入している健康保険の「被扶養者」となっている場合が多いです。この場合、ほかの要件を満たしていたとしても給付の対象から外れてしまいます。
なお、このほかにも給付金の趣旨・目的に照らして適当でない事業者であると中小企業庁長官が判断したら、給付の対象外となります。
給付金の金額
給付額は、2019年の年間収入から「対象月」の収入に12をかけた額を差し引いて算出します。ここでいう「対象月」とは、2020年の1~12月で「収入金額が2019年の平均月収の50%以下になった月」のことです。該当する月が複数ある場合は、そのなかから任意で選択できます。
なお、給付額の上限は100万円です。算出した金額が100万円を超えたとしても、給付される金額は100万円ということです。
給付額の算出例
たとえば、2019年の年間収入が240万円だったとします。この場合、月平均は240万円 ÷ 12で「20万円」なので、2020年で月の収入が10万円以下(2019年月平均の50%以下)の月が「対象月」となります。
上の例では、給付金額を算出した結果「180万円」と上限を超えてしまったので、実際に給付される金額は上限いっぱいの「100万円」です。
申請方法と必要書類
持続化給付金の申請は、公式サイトから行います。給付金が振り込まれるまでの期間は「約2週間」が基本ですが、本記事の要件に該当する人の場合は、通常よりも日数がかかるケースが多いようです。
申請の際には、以下の書類を添付します。これらの書類は、たとえばスマホのカメラで撮影した画像データなどを添付する形で送信します。
必要書類
- 2019年分の確定申告書
- 対象月の売上台帳
- 国民健康保険証
- 通帳(振込先口座が確認できるもの)
- 本人確認書(運転免許証・個人番号カードなど)
- 業務委託契約等収入があることを示す書類
「業務委託契約等収入があることを示す書類」とは
2019年分の確定申告書に記載されている収入が、業務委託契約によるものだということを示すために「業務委託契約等収入があることを示す書類」を用意する必要があります。以下の3種類のうち、いずれか2種類を用意すればよいです。
- 業務委託契約書 or 持続化給付金業務委託契約等契約申立書
- 支払調書 or 源泉徴収票* or 支払明細書
- 通帳(契約先から報酬等の支払いがあったことを示すもの)
*②で源泉徴収票を用意した場合、①との組み合わせのみ認められる
組み合わせ例
- 業務委託契約書(①) + 源泉徴収票(②)
- 持続化給付金業務委託契約等契約申立書(①) + 支払明細書(②)
- 業務委託契約書(①) + 通帳(③)
- 支払調書(②) + 通帳(③)
なお、複数の会社と業務委託契約を結んでいる場合、任意の会社ひとつに関する書類を用意すればOKです。すべての会社に関する書類を提出する必要はありません。
まとめ
最後に、確定申告で主たる収入を「給与所得」としていた個人事業主が注目すべきポイントを、再確認しておきましょう。
【給与所得用】持続化給付金の概要
対象者 | 主たる収入を給与所得で確定申告した個人事業主 |
---|---|
主な要件 | ・事業活動により主たる収入を得ている ・2020年に、前年の月平均と比べて収入50%以下の月がある ・2019年以前から被雇用者や被扶養者でない |
給付額 | 2019年の年間収入 – 対象月の収入 × 12 = 給付額 (上限100万円) |
申請方法 | 公式サイトから申請 (手続きはすべてオンライン) |
必要書類 | ・2019年分の確定申告書 ・対象月の売上台帳 ・国民健康保険証 ・通帳(振込先口座が確認できるもの) ・本人確認書(運転免許証・個人番号カードなど) ・業務委託契約等収入があることを示す書類 |
申請自体は、さほど難しくありません。手続きに自信がない人向けに、完全予約制の「申請サポート会場」も設けられています。