持続化給付金の申請が通れば、フリーランスなどの個人事業者の場合、最大100万円の給付金を受け取れます。本記事では、2019年分で「雑所得」として確定申告を行ったフリーランスの方向けに、受給要件などをわかりやすく解説します。
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目次
給付対象の拡大について
「雑所得」として確定申告済のフリーランスの方でも、一定の要件を満たせば、持続化給付金を受け取れることになりました。もともとは、個人として受給できるのは「事業所得」の区分で収入を得ている人だけでした。
【雑所得用】持続化給付金の概要
要件 | 以下の①~③をすべて満たす人 ① 事業活動により主たる収入を得ている ② 2020年に、前年の月平均と比べて収入50%以下の月がある ③ 2019年以前から被雇用者や被扶養者でない |
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給付額 | 上限100万円 |
申請期間 | 2021年1月15日まで (特段の事情により間に合わない方の提出期限は、2021年2月15日) |
必要書類 | ・確定申告書第一表の控え ・対象月の売上台帳など ・国⺠健康保険証の写し ・本人確認書類(運転免許証など)の写し ・通帳の写し ・「業務委託契約等収入があることを示す書類」 → (例) 業務委託契約書、支払調書など |
申請方法 | 持続化給付金の申請用ホームページ (必要書類はパソコンやスマホでアップロード) |
少しでも事業所得の区分で収入がある場合は、本記事で紹介する「雑所得用の申請」は受け付けてもらえません。確定申告書(2019年分)において「収入金額等」の「事業」欄に記載がある人は、必ず事業所得用の申請をしましょう。
給付対象になる収入・ならない収入の一例
給付金額の考え方
給付額は、ざっくり以下のような考え方で計算をします。計算方法は、事業所得者向けの持続化給付金と大差ありません。
なお、ここでいう「収入」は、“事業活動”によって得た“主たる収入”のことです(「業務委託契約等収入」ともいう)。これは要件にも関わる部分なので、以下できちんと解説します。
要件① 事業活動による主たる収入
ものすごく簡潔に言うと「雑所得でも、フリーランスっぽい収入ならOK」という要件です。この「フリーランスっぽい」というのを、きちんと言うと以下のようになります。3つすべて当てはまればOKです。
- 誰かに雇われて時給や月給で働くのではない(=雇用契約でない)収入源であること
- 業務委託契約などを結んで事業活動を行い、その対価として自ら収入を得ていること
- その収入(=業務委託契約等収入)が、自分の最も大きな収入源であること
業務委託などで仕事を自分で取ってきて、その報酬をメインに生計を立てている人なら、大体は当てはまると考えてよいです。
引用
2019年以前から、雇用契約によらない業務委託等に基づく事業活動からの収入であって、税務上、雑所得又は給与所得の収入として計上されるもの(以下「業務委託契約等収入」という。)を主たる収入として得ており、今後も事業継続する意思があること。
持続化給付金申請要領(主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者等)
ちなみに、「今後も事業継続する意思がある」というのは、あくまで「意思」レベルの話です。申請時点でその意思があればOKで、状況の変化に応じて考えが変わっても問題はありません。絶対に何があっても事業継続すべし!という強制力はないのです。
「業務委託契約等収入があることを示す書類」の添付
給付申請をする際には「業務委託契約等収入があることを示す書類」を添付する必要があります。たとえば「業務委託契約書 + 通帳の写し」のように、2種類をセットで提出しなくてはなりません。
業務委託契約書がない場合は、報酬支払者に協力してもらって「持続化給付金業務委託契約等契約申立書」を作成することで代用も可能です。
要件② 収入が50%以下になった月
要件②の判定に用いるのは、2019年分の「平均月収」と、2020年分の実際の月収です。2019年分の平均月収を基準として、2020年1月~12月のうち、収入が半分以下になった月が1つでもあればOKです。
ここでいう「月収」は、月間の業務委託契約等収入(雇用契約によらない事業活動からの収入)のことです。
50%以下の要件を満たす月が複数ある場合は、任意の月を選択できます。単純に、2020年で最も収入の少ない月を選ぶとよいです。なお、申請完了後は、対象月を選択し直すことができませんので、申請は慎重に行いましょう。
要件③ 被雇用者や被扶養者でない
2019年以前から被雇用者か被扶養者であった人は、業務委託契約等収入(雇用契約によらない事業活動からの収入)を得ている人であっても、給付を受けられません。「遅くとも2019年中に独立開業してないとダメ」という趣旨の規定です。
つまり、メインの収入を事業活動から得ていても、副業として雇用契約に基づくアルバイト収入のある人は、問答無用でアウトになってしまうわけです。もちろん、本業として会社に雇われて勤務している人も、給付の対象外です。
また、会社の健康保険に入っている人も、給付申請はできません。自分が会社員でなくても、家族が会社員の場合は、被扶養者としてその保険に入っている可能性があります。被扶養者の保険証には「家族(被扶養者)」のように印字されています。
給付額の計算例
持続化給付金は、以下のように年間ベースで計算します。大まかに言えば、2019年分の年間収入から、2020年分の暫定的な年間収入を差し引くということです。なお、ここでいう「収入」は、業務委託契約等収入(雇用契約によらない事業活動からの収入)のことです。
2019年分の年間収入は、実際の年間収入で考えます。一方、2020年分の暫定的な年間収入は、計算によって求めます。前年の月間平均収入と比べて、50%以下の要件を満たす月を基準に「その月の収入 × 12ヶ月」として計算しましょう。
すでに説明した通り、対象となる月が複数ある場合は、任意の月を選択できます。どう計算しても給付金額が上限の100万円に満たない場合は、収入の一番低い月を選択して申請しましょう。そのために12月まで待ってから申請する、という作戦もありです。
そもそも雑所得とは?
雑所得とは、他のどの所得にも分類されない所得を指します。そもそも、雑所得かどうかを明確に区別する基準はないのです。そのため、フリーランス的な事業活動をしていても、雑所得の区分で確定申告する人は一定数います。
>> 「事業所得」と「雑所得」- どちらの区分で申告すべき?
雑所得は「その他」的な所得なので、事業活動によらない収入が混在している恐れがあります。それゆえ、事業所得用の申請に比べて要件がシビアになっています。
まとめ
持続化給付金は、公式ホームページから申請します。トップページから「2020年9月1日以降に申請の方はこちら」をクリックし、メールアドレスを入力して仮登録します。届いたメールに記載されたURLから、以下の画面にアクセスして「主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者等」で登録しましょう。
あとは画面の指示にしたがって情報を入力したり、必要書類をアップロードしたりするだけです。あらかじめ、必要書類などを手元においてからアクセスすれば、スムーズに申請できます。
必要書類のまとめ
必要書類は、スマホで撮ってアップロードするのが手っ取り早いです(ファイル形式はJPEG・PNG・PDFのいずれか)。このとき、文字などがハッキリ読み取れるかどうか、よく確認しましょう。
確定申告書第一表の控え | 原則、収受日付印があるもの(ただのコピーはダメ) 電子申告の場合は受信通知を添付する |
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売上台帳等 | 2020年の収入減少月の収入金額が記載されたもの 会計ソフトやExcelのデータでもOK |
保険証 | 原則、申請者名義の国民健康保険証 (会社の健保を任意継続している場合は離職票などを添付) |
通帳 (給付を受ける口座) |
銀行名・支店名・口座番号・名義人などがわかるように |
本人確認書類 | 運転免許証やマイナンバーカードなど (住民票と保険証などをセットで添付してもよい) |
「業務委託契約等収入が あることを示す書類」 |
2019年分の「業務委託契約書 + 通帳」など ・契約書がない場合は、支払調書などで代替可能 ・通帳は、契約先からの報酬等がわかるページを添付 |
業務委託等の契約書は、すべてのページを撮って添付します。ただし、契約が複数ある場合は、いずれか一つの契約について、その全ページを添付すればOKです。
受給要件のおさらい
2019年分の確定申告で「雑所得」として申告を行ったフリーランスの方は、以下の要件①~③をすべて満たした場合に、持続化給付金の給付対象となります。
- 業務委託契約等に基づく事業活動により、主たる収入を得ている
- 2020年に、前年の月平均と比べて収入50%以下の月がある
- 2019年以前から被雇用者や被扶養者でない
なお、申請完了後は、給付金額の変更をすることはできません。申請期限は2021年1月15日(特段の事情により間に合わない方の提出期限は、2021年2月15日)です。