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この3つをやれば大丈夫!電子取引の保存方法【電帳法】

更新日: 2022/08/18 投稿日: 2021/12/08 PR
この3つをやれば大丈夫!電子取引の保存方法【電帳法】

2022年1月から「電子帳簿保存法」の改正が適用されます。これ以降、メール等でやり取りした書類(電子取引の取引情報)は、原則として「電子保存」しておかなくてはいけません。本記事では、特別なソフトを使わずに、改正に手早く対応する方法を紹介します。

「電子取引」の電子保存義務化については、2年間の猶予期間が設けられています。詳しくは、下記リンク先の記事をご覧ください。
>> 【電子取引】電子保存義務化の「経過措置」について

INDEX

目次

    やっておくことは3つ!

    電子帳簿保存法の要件(電子取引の取引情報)

    「電子取引の取引情報」とは、メール等で送信・受信した請求書や領収書のことです。2022年1月以降は、いくつかの要件を満たしたうえで電子保存をしなくてはなりません。要件をクリアするためには、ひとまず下記の①~③を実施しましょう。

    やっておくべき3つのこと【電子取引の電子保存】

    1. 速やかに出力できるようにしておく
    2. 「事務処理規程」を作成しておく
    3. 保存時のファイル名を統一する(前々年の売上が1,000万円以下なら実施不要)

    個人事業主でも法人でも、ほとんどの事業者はこの①~③を実施するだけで「電子取引の取引情報」の保存要件をクリアできます。

    ここからは、上記の①~③について説明していきます。なお、詳しい保存要件についても記事の後半で説明しているので、気になる方はあわせてご確認ください。

    ① 速やかに出力できるようにしておく

    • 保存要件を満たすためには、データを表示・印刷する「見読装置」が必要
    • 一般的なパソコンのディスプレイとプリンターがあれば問題ない
    • プリンターについては、近隣の有料プリンター等を利用するのもアリ

    保存した「電子取引」のデータは、パソコン画面に表示できるだけでなく、必要に応じて紙に印刷できないといけません。表示と印刷の「どちらかができればOK」ではなく、「どちらもできないとダメ」という意味です。(国税局に確認済み)

    見読装置の備え付け(電子取引の保存要件)

    プリンターは必ずしも仕事場に常設されていなくてもOKです。下記のように、国税庁は「近所のコンビニプリントとかでも対応できるよ」と説明しています。

    引用

    ……(前略)……プリンタについても、基本的には納税地等に備え付けておく必要がありますが、税務調査等があった時点においてプリンタを常設していない場合であっても、近隣の有料プリンタ等により税務職員の求めに応じて速やかに出力するなどの対応ができれば、プリンタを常設していないことのみをもって保存要件違反として取り扱うことはありません。……(後略)……

    電子帳簿保存法一問一答(問17) – 国税庁

    ②「事務処理規程」を作っておく

    • 「真実性の確保」の要件を満たすために、不正防止に関する措置が必要
    • これには、保存業務に関する「事務処理規程」を作っておけばOK
    • 「事務処理規程」は、国税庁のサンプルを参考にすれば簡単に作成できる

    「真実性の確保」の要件では、不正防止のために何らかの措置を行うことが求められています。この措置にはいくつかのバリエーションがありますが、不正防止に関わる「事務処理規程」を作っておくのが手っ取り早いです。

    電子取引の保存に関する事務処理規程のサンプル

    事務処理規程のサンプル(法人の例・個人事業主の例)- 国税庁

    国税庁が公開しているサンプルを参考に、担当者名や日付を書き加えるだけなので、わりと簡単に作成できます。1人で事業を営んでいる方などは「こんなの要る?」と思うかもしれませんが、ここはルールに従って作成しておきましょう。

    規程の中身は、簡単に言うと「原則的にデータの訂正・削除はしません」「もし訂正・削除をするときはこうします」という内容です。データの訂正や削除が必要になった際は、この規程に従って処理しておきましょう。

    ③ 保存時のファイル名を統一する

    • 前々年の売上*が1,000万円超の事業者には「検索機能の確保」も求められる
    • 保存時のファイル名さえ工夫すれば、特別なソフトを使わなくても対応できる
    • 売上1,000万円以下の事業者も一応やっておくとよい

    * 法人の場合は「前々事業年度」の売上

    データは「日付」「取引先」「金額」のそれぞれで検索可能な状態でないといけません。保存時のファイル名を「日付_取引先_金額」などに統一すれば、パソコンに標準で備わっているファイル管理機能(エクスプローラーやFinderなど)でも対応できます。

    ファイル名を統一して電子保存の検索要件を満たす

    ※ 金額の税抜・税込は帳簿と揃えておけばOK

    ファイル名を統一したら、上図のように「取引先ごと」や「年月ごと」のフォルダに分けて整理しておきましょう。

    前々年の売上が1,000万円以下なら、この検索要件に対応する必要はない。ただ、売上1,000万円以下の事業者にも「税務調査で必要なデータを提出できるようにしておきなさい」などという定めはあるので、同じように整理しておくとよい。

    ちなみに、電帳法に対応したファイル管理ソフトなどを使えば、いちいちファイル名を変えたりする手間を省けます。たとえば「マネーフォワード クラウド確定申告」とセットで使える「クラウドBox」などのソフトが、電子取引の保存要件に対応しています。

    【確認】電子取引の保存要件

    「電子取引の取引情報」の保存要件は、大きく下記の4つに分けられます。これらの保存要件は、本記事で紹介した①②③を実施するだけでクリアできます。(自社開発のプログラムを使用する場合を除く)

    「電子取引の取引情報」の保存要件【2022年1月から】

    概要書の備付け 保存に用いるソフト等の説明書等を用意しておくこと
    →自社開発のプログラムを使用する場合の要件なので無視してOK
    見読装置の備付け 保存データを速やかに表示・印刷できるようにしておくこと
    →一般的なパソコンとプリンターがあればOK
    検索機能の確保 保存データを一定の方法で検索できるようにしておくこと
    →ファイル名を統一して検索できるようにしておけばOK
    真実性の確保 下記のいずれかの措置を行うこと
    不正な訂正や削除の防止に関する「事務処理規程」を定めておく
    ・取引情報の授受後、概ね7営業日以内にタイムスタンプを付与する
    ・タイムスタンプが付与されたあとに取引情報の授受を行う
    ・訂正や削除ができないシステムを使う
    ・訂正や削除の記録が残るシステムを使う

    →「事務処理規程」を作っておけばOK

    >>「電子取引」の保存要件を詳しく!

    ちなみに「電子帳簿保存法」の全体を見ると、下表のように保存対象ごとに要件が定められています。このうち、本記事で説明した「電子取引の取引情報」は、唯一電子保存が義務化される部分です。

    電子帳簿保存法の要件(電子取引の取引情報)

    個人事業主の青色申告特別控除の要件における「電子帳簿保存」は「仕訳帳&総勘定元帳を電子保存すること」を指します。「電子取引の取引情報」を電子保存しても、65万円控除の要件を満たせるわけではありません。

    気になるポイントまとめ – Q&A

    きちんと保存要件を満たしていないとマズい?
    保存要件を微妙に満たしていなかったとしても、何らかの形で書類を保存していれば「一発アウト」ではありません。たとえば、もし税務調査で検索機能の不備が発覚しても、保存していた書類は追加的な資料として参照してもらえる可能性があります。
    事務処理規程はいつまでに準備すればいい?
    事務処理規程は、できるだけ2021年中に用意するのがベストです。間に合わなかった場合は、なるべく早めに用意しましょう。税務調査が入ったタイミングでそれらが揃っていないと、保存要件を満たせていないと見なされてしまいます。
    いちいちファイル名を変えて管理するのが面倒なんだけど…?
    本記事で紹介したのは、あくまでパソコンの標準的なファイル管理機能(エクスプローラーやFinderなど)で検索要件に対応する方法です。電帳法対応の会計ソフトを使えば、保存業務をもっと簡易化できる場合もあります。
    「真実性の確保」は事務処理規程を作る以外の方法でクリアするのもアリ?
    「真実性の確保」は、事務処理規程を作る以外にも「タイムスタンプ」や「訂正・削除ができないシステム」を利用することでもクリアできます。ただ、これらの措置は、基本的に電帳法対応の会計ソフト等を使うことが前提になります。

    「検索機能の確保」や「真実性の確保」の要件は、電子帳簿保存法(電帳法)に対応した会計ソフトを使うことで手軽にクリアできる場合もあります。各社の対応状況を確認しつつ、この機会に会計ソフトの導入を検討してもよいでしょう。

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