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確定申告で「マイナポータル連携」するデメリットは?本当に必要?

更新日: 2024/04/26
確定申告で「マイナポータル連携」するデメリットは?本当に必要?

e-Taxで確定申告をする際、マイナポータルを活用すれば医療費控除やふるさと納税などのデータを自動で取り込めます。そのメリット・デメリットをわかりやすくまとめました。

INDEX

目次

    マイナポータル連携とは?

    「マイナポータル」とは、行政のオンライン窓口のようなものです。「e-Tax」と連携させて、確定申告をかんたんに行う機能もあります。マイナンバーカードを読み取ってログインすれば、自宅にいながら様々な手続きができます。

    「マイナポータル」と「e-Tax」を連携 – 確定申告を簡単に!

    マイナポータルと確定申告書等作成コーナー(e-Tax)を連携 - ふるさと納税や医療費 通知など

    この「マイナポータル連携」を行うと、以下のデータを確定申告書へ自動的に反映できます。面倒な計算や転記作業を省略できます。ただし、省略できない部分もあるので注意しましょう。

    「マイナポータル連携」で自動転記できる書類

    • 生命保険料控除証明書
    • 地震保険料控除証明書
    • 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
    • 医療費通知
    • 寄附金受領証明書
    • 寄附金控除に関する証明書
    • 年末残高等証明書 (住宅ローン控除)
    • 住宅借入金等特別控除証明書 (住宅ローン控除)
    • 特定口座年間取引報告書
    • 公的年金等の源泉徴収票

    ちなみに、個人事業主向け会計ソフトの多くは、マイナポータル連携に未対応です。大手3社「弥生・freee・マネーフォワード」のなかでは、唯一freeeのみマイナポータル連携に対応しています(詳細は記事の後半で)。

    マイナポータル連携のメリット・デメリット

    「マイナポータル連携」を利用して確定申告をする場合、以下のようなメリット・デメリットがあります(状況によっては当てはまらない場合もあります)。

    マイナポータル連携の主なメリット・デメリット

    メリット デメリット
    1. 時短できる
    2. 正確に転記できる
    3. 保存書類の管理がしやすい
    1. 連携するまでが面倒
    2. 控除漏れに注意が必要
    3. 家族分のカードが必要

    とくに「医療費控除」の計算などは煩雑になりがちで、これを自動化できるのは大きなメリットです。時間を大幅に短縮でき、計算ミスの心配もありません。

    ただ、デメリットもそこそこ大きいので、必須級のサービスとまでは言い難いです。現在ご利用中の確定申告ソフトがマイナポータル連携に未対応であっても、それほど気にしなくてよいでしょう。

    メリット① 時短できる・準備がラク

    マイナポータル連携のメリット - 控除証明書などの準備が簡単・すばやくできる

    「マイナポータル連携」を使えば、紙の書類を用意しなくて済むので、従来よりも短時間で確定申告が終わります。どの書類が必要か調べたり、それらの書類を探して引っ張り出したりする手間がなくなります。

    マイナポータル連携を利用しない場合には、すべての添付書類を手元に用意した上で申告書の作成にとりかかる必要があります。これらの書類を机の上に広げて、一つずつ確認しながら各項目に記入していくことになります。

    メリット② 控除額などを正確に転記できる

    マイナポータル連携のメリット - 控除額などを正確に転記できる

    「マイナポータル連携」を利用すれば、転記ミスや計算ミスを防げます。マイナポータルで取得したデータが確定申告書にそのまま反映されます。たとえば、複数の自治体にふるさと納税をした場合も、自動で控除額が転記されるので便利です。

    ただし、自動入力できるのは“マイナポータル連携で取得できるデータ”に限られます。マイナポータル連携だけに頼っていると、税金の計算で不利にはたらくこともあるので過信は禁物です(詳細は「デメリット②」を参照)。

    メリット③ 保存書類の管理がしやすい

    マイナポータル連携のメリット - 保存書類の管理がしやすい

    「マイナポータル連携」なら税金関係の書類をオンラインで取得でき、一括して確定申告書に反映してくれます(例:社会保険料控除証明書、生命保険料控除証明書、医療費通知など)。3年以内ならいつでも取得可能です。

    マイナポータル連携を利用しない場合は、関係各所から個別に書類を発行してもらう必要があります。どの書類をどこで発行してもらえるのか、いちいち調べないといけません。

    デメリット① 連携するまでが面倒

    マイナポータル連携の初回利用時は、各サービスごとに連携作業を行う必要があります。この作業は初回のみでOKですが、けっこう面倒くさいです。

    初めてマイナポータル連携を利用するとき(主な連携項目)

    マイナポータル連携のデメリット - 初期設定でe-Taxと連携するまでの作業が大変 医療費

    連携の手続きを行っても、反映されるまで数日を要する場合があります。確定申告期限に間に合うよう、余裕を持って連携を済ませておきましょう。なお、例年の申告期限日は「3月15日」です。

    デメリット② 控除漏れに注意が必要

    マイナポータル連携では、確定申告に必要なデータの一部しか取得できません。欠けているデータは、追加入力などで補います。これを怠ると所得控除などの計上漏れが生じ、税金の計算で不利になる場合があります。

    マイナポータル連携で取得できない恐れがあるもの(主な例)

    生命保険料控除 連携に未対応の保険会社に支払った保険料
    保険会社によって対応状況が異なる
    社会保険料控除 厚生年金、国民健康保険などの保険料
    自動取得できるのは「国民年金」の保険料だけ
    ふるさと納税 連携に未対応のサイトで支払った寄附金
    運営会社や自治体によって対応状況が異なる
    医療費控除 通院の交通費、市販の医薬品代など
    保険適用外の医療費などは自動取得できない

    なかでも「医療費控除」は、とくに控除漏れが起きやすいです。たとえば、入院して高額療養費制度を利用したときや、全額自己負担の自由診療を受けたときは要注意です。

    マイナポータル連携で取得できない医療費(主な例)

    取得できる 取得できない
    • 保険適用による一部負担金
    • 医師の処方箋による医薬品代
    • 通院にかかる交通費
    • 自由診療の医療費
    • 治療用装具などの立替金
    • 高額療養費の立替金
    • 市販の薬代 (セルフメディケーション)

    医療費控除の対象となる費用まとめ

    ごく少額の交通費ぐらいなら、控除漏れがあっても税額に大した影響はありません。手間を考えれば、多少の控除漏れにはあえて目をつぶったほうがよいケースもあります。

    医療費の「補填金」は必ず申告すること
    保険給付などで医療費の補てんを受けたら、医療費控除に反映させましょう。マイナポータル連携では「補てん金」の情報を自動取得できません。補てん金の申告をしなかった場合、過少申告のペナルティを受ける恐れがあります。

    デメリット③ 家族分のカードが必要

    家族の保険料や医療費をマイナポータル連携で取得するには、家族のマイナンバーカードが必要です。マイナポータル内で「代理人」になる手続きをしなくてはいけません。なお、一度「代理人」になれば、次回以降この手続きは不要です。

    家族の保険料や医療費をマイナポータル連携で取得する準備 - 代理人に委任される流れ

    あなたと家族のマイナンバーカードが揃っていないと「代理人」の手続きができません。遠隔地で離れ離れに暮らしている場合は、カードの貸し借りなどが面倒です。家族がマイナンバーカードを未取得の場合は、さらに時間や労力がかかります。

    ちなみに、先述の「デメリット①」で挙げた連携作業は、家族にも事前にやってもらう必要があります。もちろん初回だけでOKですが、家族が多い人はなかなか大変です。

    マイナポータル対応の会計ソフト

    個人事業主向けクラウド会計ソフトの大手3社のうち、「freee」のみマイナポータル連携が可能です。マイナポータルで取得したデータをfreeeに取り込んで、確定申告書に自動反映できます。一方、弥生とマネーフォワードは連携に未対応です。

    マイナポータル連携への対応状況 – 大手3社の比較

    弥生 freee マネーフォワード
    × ×

    2024年4月時点

    freeeで作成した確定申告書類は、そのままe-Taxで電子申告できます。国税庁によると、e-Taxで電子申告をすれば大抵の添付書類は提出を省略できるとされています(ただし5年保存が必要)。

    先述した通り、マイナポータル連携には控除漏れのリスクもあります。たとえば「社会保険料控除」のうち、マイナポータル連携ができるのは「国民年金」の保険料のみです。「国民健康保険」の保険料は、別途で手入力が必要なので注意しましょう。

    まとめ

    マイナポータル連携は、便利なサービスではありますが、まだまだデメリットも大きいので無理に利用する必要はありません。個人事業主が会計ソフトを導入する際、マイナポータル連携の対応状況はあまり気にしなくてOKです。

    マイナポータル連携の主なメリット・デメリット

    メリット デメリット
    1. 時短できる
    2. 正確に転記できる
    3. 保存書類の管理がしやすい
    1. 連携するまでが面倒
    2. 控除漏れに注意が必要
    3. 家族分のカードが必要

    デメリットのなかでも、所得控除の計上漏れには要注意です。控除漏れがあると、せっかくマイナポータル連携をしたのに、かえって税金が高くなってしまう恐れがあります。

    個人事業主におすすめの会計ソフトは?

    上記を踏まえたうえで、それでもマイナポータル連携に魅力を感じる個人事業主にはfreee会計がおすすめです。大手3社「弥生・freee・マネーフォワード」のなかで、freeeだけがマイナポータル連携に対応しています。

    「別にマイナポータル連携は必要ないよ」とおもう個人事業主は、大手3社のどれかを選んでおけば大きく外すことはないでしょう。各社ソフトの実際の操作画面や使い勝手などは、以下の記事にわかりやすくまとめています。

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