税務署に設置してあるパソコンは、個人事業主の電子申告には対応していないので要注意です。2021年分の確定申告(申告期間は2022年2月16日~3月15日)で、65万円の青色申告特別控除を受けたい方は、自宅等から「電子申告」をしましょう。
INDEX
目次
税務署のパソコンでは65万円控除ナシ!
税務署に設置してあるパソコンは、個人事業主の電子申告には対応していません。特殊な仕様のため、決算書(収支内訳書や青色申告決算書)をe-Taxで送信できないのです。紙に印刷して提出することは可能ですが、これは電子申告とはいえません。
青色申告特別控除(65万円)の新要件
65万円の青色申告特別控除を受けたい個人事業主は、自宅やオフィスのパソコンからe-Taxを利用しましょう(スマホ単体では基本的に電子申告不可)。もちろん、上図にある通り、従来の要件もきっちり満たしておく必要があります。
控除額が3パターンに – 青色申告特別控除の改正
65万円の青色申告特別控除を受けるには、従来の要件に加えて「電子申告」または「電子帳簿保存」が必須となります。電子帳簿保存は費用や手間がかかりすぎて割に合わないので、個人事業主なら電子申告がおすすめです。
手っ取り早く電子申告するには?
初めて電子申告をする方のために、方法をカンタンに説明します。マイナンバーカードの有無で、大きく2通りの方法があります。
- マイナンバーカード方式
- IDパスワード方式(マイナンバーカードを使わない)
① マイナンバーカード方式
マイナンバーカードのICチップには、本人確認に必要なデータが格納されています。まずパソコンと、ICカードリーダーかスマホを接続します。それにマイナンバーカードをかざせば、電子申告に必要な個人認証ができます。
マイナンバーカードを利用する場合、国税庁が運営する「確定申告書等作成コーナー」というサイトを使うか、あるいは弥生・freee・マネーフォワードなど、民間の会計ソフトを使った電子申告が可能です。
なお、マイナンバーカードの発行には1~2ヶ月程度かかります。もし確定申告に発行が間に合わなくても、以下のID・パスワード方式を使えば問題なく電子申告できます。
② ID・パスワード方式 – マイナンバーカードを使わない
まず税務署で対面による本人確認を行い、IDとパスワードを発行してもらいます。運転免許証などを持参し、窓口の人に「ID・パスワード方式を利用したいです」と伝えれば、対応してくれるはずです。よほど混雑していなければ、発行手続きは5分程度で済みます。
その後、自宅等のパソコンで「確定申告書等作成コーナー」にアクセスしましょう。このID・パスワード方式で電子申告する場合は、必ず確定申告書等作成コーナーを利用します。
ICカードリーダーって必須?
結論から言うと、電子申告をする上で「ICカードリーダー」は必須ではありません。理由は、以下の2つです。
- そもそもマイナンバーカードを使わない方法があるから
- スマホでもマイナンバーカードの読み取りが可能だから
すでに説明したように、ID・パスワードを使って電子申告する場合は、そもそもマイナンバーカードを読み取る必要がありません。当然、ICカードリーダーの出番もないということです。
また、マイナンバーカードを使って電子申告する場合には、ICカードリーダーを使うのが一般的でした。しかし、最近ではICカードリーダーの代用になるスマホが増えてきています。スマホで代用できるなら、ICカードリーダーは必要ありません。
スマホでマイナンバーカードを読み取るには
ここ数年に発売されたFeliCa搭載スマホなら、マイナンバーカードの読み取りに使える可能性が高いです。公式の対応機種リストを見ると、Androidスマホだけでなく、iPhone(7以降)も対応機種となっています。
>> Bluetooth接続でパソコンとスマホを連携するには?
控除額が55万円に下がったときの税額は?
電子申告するかどうかは任意です。どうしても紙で申告したければ、無理に電子申告をする必要はありません。紙で申告しても、複式簿記で記帳するなどの要件さえ満たせば、55万円の青色申告特別控除を受けることは可能です。
では、55万円と65万円の控除が、実際の税額にどのくらい影響するか考えてみましょう。具体的な試算過程は、以下の記事でご覧いただけます。
>> 青色申告特別控除でどのくらい節税できる?
上の記事から試算結果だけを転載すると、以下のように整理できます。表の金額は、所得税と住民税の合計金額です。所得100万円・300万円・500万円の3パターンで試算しています。
所得税と住民税の合計額で比較
55万円控除 | 65万円控除 | 差額 | |
---|---|---|---|
所得100万円 | 2,500円 | 0円 | 2,500円 |
所得300万円 | 229,500円 | 214,400円 | 15,100円 |
所得500万円 | 568,800円 | 548,600円 | 20,200円 |
※ 会計期間は2020年1月1日~12月31日、居住地は東京都新宿区とする
なお、これは一定条件下での試算にすぎないので、個別の状況により実際の税額は異なります。とはいえ、ある程度の目安にはなるでしょう。これを見る限りでは、所得100万円前後の場合、電子申告をしても税額は数千円しか変わらないことがわかります。
まとめ
つぎの確定申告(申告期限は2022年3月15日)で、65万円の青色申告特別控除を受けたい方は、自宅等のパソコンで電子申告をしましょう。税務署のパソコンで確定申告書類を作成することはできますが、冒頭で述べたとおり、決算書をe-Taxで送信できない仕様になっています。
本記事では、電子申告のツールとして、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」と市販の「会計ソフト」を紹介しました。マイナンバーカードの有無によって、どの手段を取れるかが異なります。これを整理してまとめると、下表のようになります。
マイナンバーカード無 | マイナンバーカード有 | |
---|---|---|
確定申告書等作成コーナー | ○ | ○ |
市販の会計ソフト* | ✕ | ○ |
* 電子申告対応のクラウド会計ソフトなど
事前に税務署でID・パスワードを交付してもらえば、マイナンバーカードがなくても電子申告が可能です。もちろん、申告データの送信は自宅等のパソコンから行いますので、申告時には税務署へおもむく必要がありません。
一方、マイナンバーカードを使う方法なら、税務署に一切足を運ぶことなく電子申告を完結させられます。また、上表の通り、弥生・freee・マネーフォワードなどのクラウド会計ソフトからも電子申告が可能です。
スマホがICカードリーダの代わりになる
以前はマイナンバーカードを読み取る際に「ICカードリーダー」を用いるのが一般的でしたが、この代用になるスマホも増えてきました。個人事業主は、基本的にスマホ単体では電子申告できないので、スマホとパソコンを連携させた状態で使う必要があります。