「確定申告書等作成コーナー」や「e-Taxソフト」から電子申告を行う場合、添付書類の郵送などは基本的に不要です。このとき、添付書類は大まかに「提出を省略できるもの」と「PDF形式でデータ送信してよいもの」の2種類に分かれます。
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目次
確定申告で提出する書類のおさらい
確定申告で提出する書類には、メインの書類(決算書と確定申告書)と、サブにあたる添付書類(控除証明書など)があります。この「添付書類」が、本ページのメインテーマです。
書面で確定申告をする場合、添付書類は「添付書類台紙」に用紙に貼り付けて提出します。
電子申告をする場合でも、白色申告なら「収支内訳書」を、青色申告なら「青色申告決算書」のデータを提出します。また、どちらの場合も「確定申告書B」のデータも提出します。
添付書類とは、各種控除を受けるために求められる証明書などのことです。たとえば「社会保険料控除の証明書」や「生命保険料控除の証明書」などです。電子申告では、これらの提出を省略できる場合があります。
>> 個人事業主が確定申告で提出する書類
電子申告における添付書類のあり方
電子申告には、大抵の添付書類の提出を省略できる制度があります。さらに、省略できない添付書類については、PDF形式のデータ(電子ファイル)で送信してもよいとされています。基本的に、紙の添付書類を税務署に持参したり、郵送したりする必要はないということです。
提出を省略できる添付書類 | PDF形式のデータで送信できる添付書類 |
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原本の保管が必要 (最低5年) |
原本の保管は不要 (送信したPDFファイルを原本とみなす) |
ちなみに例外として、提出の省略もデータでの送信も認められていない添付書類が、ごく一部ですが存在します。該当する書類は、必ず書面で提出をしなくてはいけません(印紙税過誤納確認申請の添付書類など)。
なお、会計ソフトから出力したデータで電子申告をする際は、書類の省略制度を利用できない場合もあるので注意しましょう。(詳しくは後述)
① 提出を省略できる添付書類
提出省略制度の対象になるのは、以下のような書類です。一般的な所得控除に関わる書類は、ほとんど提出しなくてよいことになります。
提出を省略できる主な書類
- 給与所得者の特定支出の控除の特例に係る支出の証明書
- 雑損控除の証明書
- 医療費の領収書
- セルフメディケーション税制の医薬品購入の領収書
- 医療費に係る使用証明書等(おむつ証明書など)
- 社会保険料控除の証明書
- 小規模企業共済等掛金控除の証明書
- 生命保険料控除の証明書
- 地震保険料控除の証明書
- 寄附金控除の証明書
- 勤労学生控除の証明書
- 特定震災指定寄附金特別控除の証明書
>> 「第三者作成書類の添付省略の制度」 – e-Tax公式
ただし、提出が省略できるからといって、上記の証明書などをすぐ処分してはいけません。確定申告書を作成する際、控除額の計算に必要な金額や条件などを、該当する項目に入力していきます。そのため、控除の証明書などは手元に用意しておく必要があります。
また、電子申告で提出を省略した書類については、法定申告期限から最低でも5年間は廃棄せずに保管しておきます。申告が完了したあとも、確認のために原本の提示もしくは提出を求められる可能性があるからです。
② PDF形式のデータで送信できる添付書類
添付書類のなかでも、以下のような書類については提出の省略が認められていません。ただし、これらの添付書類は、PDFデータで送信してもよいことになっています。
PDF形式で提出できる主な添付書類
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の証明書など
- 住宅耐震改修特別控除の証明書など
- 収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除の証明書など
>> 「イメージデータで提出可能な添付書類」 – e-Tax公式
これらの書類はもともと書面で提出する必要がありましたが、2017(平成29)年1月からPDF形式のデータで送信できるようになりました。とはいえ、PDFで送信する方法だけでなく、従来どおり書面で提出する方法も認められています。
このように、基本的に「省略不可能な添付書類は、PDF形式のデータで送信できる」と考えてよいです。この書類の代表例として、住宅ローン控除の証明書が挙げられます。
なお、2018(平成30)年4月から、PDF形式で送信したデータ自体を原本として取り扱ってもらえることになりました。そのため、PDF形式で送信した添付書類に関しては保管が不要です。
添付書類をPDF形式のデータにする方法
添付書類のPDF形式データを取得するには、大別して2つの方法があります。「紙の書類をスキャンしてパソコンに送信する方法」か「別のファイル形式で作成された書類をPDF形式に変換する方法」です。
PDF形式に直したデータは「Adobe Acrobat Reader DC」などのPDFリーダーを用いて、うまく表示されるか確認しておきましょう。
送信したPDF形式の添付書類が正しく確認できないと、再送信もしくは書面での提出を求められます。データの送信前には、以下の4項目を満たしているか、チェックしておきましょう。
PDFデータ作成時の最終確認項目
- 解像度が200dpi以上である
- 24ビットカラー(256階調以上)である
- 目視で内容が確認できる
- パスワードを設定していない
上記の項目は、国税庁のガイドラインによるものです。要するに「見えにくいデータを送りつけてこないで」という最低限の内容であり、大抵のPDFデータは上記の項目をパスしているはずです。
【要注意】会計ソフトの申告データで電子申告をする場合
会計ソフトで作った申告データを「e-Taxソフト(WEB版)」へ取り込んで電子申告を行う際は、控除証明書などの添付を省略できない可能性があるので注意しましょう。その場合、必要な書類を郵送などで別途提出する必要があります。会計ソフト独自の申告ツールを使って電子申告をする際も同様です。
なぜ書類を省略できない場合がある?
そもそも、電子申告における書類の提出省略は、国税庁が認める形式で書類の内容をデータとして送信していることが前提です。会計ソフトごとに、この条件に対応している書類と、まだ対応できていない書類があるのです。
現時点で書類の提出省略に完全対応しているソフトはありません。たとえば「やよいの青色申告 オンライン」で申告データを作成すると、以下のように別途提出の必要な書類が表示されます。
会計ソフトで作った申告データを電子申告に利用する際は、必ずソフトの説明を確認しておきましょう。書類が不足していると、控除などが適用されない場合もあります。
>> 会計ソフトを使った電子申告の方法まとめ
「e-Taxソフト」か「確定申告書等作成コーナー」を使えば問題ない
インストール型の「e-Taxソフト」を使えば、適切な形式で証明書の記載情報を送信できます。同様に「確定申告書等作成コーナー」も適切な入力フォームを備えているため、これらを使って電子申告をする場合は、提出省略の制度を問題なく利用できます。
まとめ – 電子申告をする際の添付書類
電子申告の場合、国税庁が認める形式で記載内容を送信すれば、添付書類の提出を省略できる制度があります。特に「確定申告書等作成コーナー」や「e-Taxソフト」から電子申告をする際は、この制度によってほとんどの添付書類を省略できます。
ただし、住宅ローン控除など、一部の控除を受けるために必要な添付書類については提出を省略できません。とはいえ、これらの書類もPDFデータで送信することが認められているので、郵送などの手間は基本的にかかりません。
>> 個人事業主の所得控除一覧
提出を省略できる添付書類 | PDF形式のデータで送信できる添付書類 |
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原本の保管が必要 (最低5年) |
原本の保管は不要 (送信したPDFファイルを原本とみなす) |
省略が可能な添付書類の多くは、確定申告書B(第一表)の左下にある所得控除を受ける際に求められる書類です。電子申告なら、添付書類をひとつずつ台紙に貼り付けていく手間が省けるので、事務作業にかかる時間を削減することができます。