初めてe-Taxを利用する個人事業主のために、電子申告の方法をまとめました。初心者には「確定申告書等作成コーナー」を「ID・パスワード方式」で利用する方法がおすすめです。
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目次
個人事業主の電子申告 ‐ 主な5パターン
所得税の電子申告を行う方法は、まず2パターンに大別できます。申告データを「確定申告書等作成コーナーで手入力する場合」と「会計ソフトから出力する場合」です。さらに具体的な手順も考慮し、本記事では電子申告の方法を5パターンに分けて説明します。
最もシンプルなのは、ウェブ上の「確定申告書等作成コーナー」(以下、作成コーナー)から「ID・パスワード方式」で電子申告を行う方法です。税務署での手続きさえ済ませれば、その他の準備が最小限で済みます。この方法では他のソフトなども一切使いません。
一方、会計ソフトで作成した申告データを、そのまま電子申告に利用する方法もあります。使っている会計ソフトに独自の電子申告ツールがある場合は、この方法も非常にカンタンです。
会計ソフトの電子申告対応【e-Tax】クラウド3社の比較
【フローチャート】あなたに合った電子申告の方法は?
電子申告の方法は、事業主が自由に選択できます。以下のフローチャートを参考に、自分に合った電子申告の方法を選んでみてください(必ずこの通りにしなければならないというチャートではありません)。
マイナンバーカードを所持しているからといって、①を選べないという決まりはありません。自由に選択してOKです。ただ、未所持の場合、交付に1ヶ月ほど時間がかかるので、①以外を選びたいなら早めに交付申請をしましょう。
また、会計ソフトを利用していても、申告データを手入力すれば「作成コーナー」から電子申告ができます。手入力といっても、会計ソフトの画面を見ながら入力するだけなので、それほど手間ではありません。
① ID・パスワード方式で作成コーナーを使う方法
確定申告書等作成コーナーから「ID・パスワード方式」で電子申告を行うのが、最もシンプルな方法です。税務署での手続きを済ませれば、その他の面倒な事前準備はほとんど必要ありません。
まず、税務署でID・パスワード方式の利用申請などを行います。その際に取得した「利用者識別番号(ID)」と「暗証番号(パスワード)」で作成コーナーにログインすれば、そのまま申告データの作成・送信ができます。その他のソフトを操作する必要はありません。
IDとパスワードは即日発行され、翌年以降も使えます。一度発行しておけば、翌年からは税務署に出向かずに、ID・パスワード方式で電子申告ができるわけです。
ただ、ID・パスワード方式はマイナンバーカードが普及するまでの間、暫定的に認められている方法です。いずれはマイナンバーカードによる本人認証が主流になると予想されます。
② マイナンバーカード方式で作成コーナーを使う方法
マイナンバーカードを持っていれば、確定申告書等作成コーナーを「マイナンバーカード方式」で利用できます。ただ、カードを読み取るためのICカードリーダーが必要になります。(カードリーダーはスマホで代用可能)
ICカードリーダーの用意ができたら、作成コーナーにアクセスしましょう。指示通りにセットアップを行えば、マイナンバーカードを用いた本人確認が行えます。本人確認が済むと、そのままログインして申告データの作成・送信ができます。
③ e-Taxソフト(WEB版)を利用する方法
「e-Taxソフト(WEB版)」(以下、WEB版)は、ウェブブラウザ上で使えるので、インストールが不要です。そのため④の「e-Taxソフト」と比べて簡単に事前準備ができます。とはいえ、電子申告をするには、関連ソフトのインストールが必要です。
WEB版で電子申告をする場合は、マイナンバーカードなどを用意した上で「受付システム」にアクセスしましょう。ここでセットアップを行えば、WEB版もスムーズに使えるようになります。
WEB版にログインしたら、あとは会計ソフトから申告データを出力すれば準備完了です。出力した申告データをWEB版に取り込めば、そのまま送信できます。
④ e-Taxソフトを利用する方法
「e-Taxソフト」は、Windowsのパソコンにインストールして使うソフトです。この方法だと、最も事前準備に手間がかかります。電子申告以外の様々な機能を備えているとはいえ、電子申告をするだけなら、あえてこの方法を選ぶ必要はありません。
e-Taxソフトを利用する際も、事前準備の流れはおおよそ「e-Taxソフト(WEB版)」と同じです。ただ、ソフト自体のインストールも必要になるため、少し手間が増えます。なお、ソフトはe-Tax公式サイトからダウンロードできます。
e-Taxソフトは機能が多いぶん、操作画面も複雑です。そのため、初心者にはおすすめできません。使っている会計ソフトがWEB版に対応していない場合は、データの取り込みを諦めて、作成コーナーを使うほうが手っ取り早いです。
⑤ 会計ソフト独自の申告ツールを使う場合
会計ソフトによっては、メーカーが独自の電子申告ツールを提供している場合もあります。たとえば、弥生の「確定申告e-Taxオンライン」や、freeeの「freee電子申告アプリ」がこれに当たります。これらは、そのメーカーの会計ソフトを使っている人しか利用できません。
各社の対応状況にはバラつきがあり、申告ツールを利用する際の流れもそれぞれ微妙に異なります。ただ、会計ソフトで作ったデータを取り込んで送信する、という基本的な流れは「e-Taxソフト」等と同様です。マイナンバーカードも必須になります。
とはいえ、会計ソフトメーカーが作っているだけあって、どれも使い勝手は良いです。独自の申告ツールを利用できる場合は、この方法も選択肢の一つとして検討しましょう。
クラウド会計ソフトのe-Tax対応を比較!電子申告の対応状況まとめ
ほとんどの添付書類は省略できる
電子申告なら、添付書類の提出を省略できる制度があります。たとえば、作成コーナーから電子申告をする場合、以下のような書類は省略が可能です。提出が必要な書類も一部ありますが、それらも基本的にPDFデータでの送信が認められています。
提出を省略できる主な添付書類 | PDFデータで送信できる主な添付書類 |
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ただし、会計ソフトから出力したデータを送信する場合、省略できる書類の範囲は、会計ソフトの対応状況に依拠します。稀に、別途で郵送などが必要になる書類もあるので注意しましょう。
e-Taxで必要な添付書類について
どの申告方法でも納付方法は自由に選べる
電子申告をした人も、書面で確定申告をした人も、所得税の納付方法は共通です。電子申告をしたからといって、必ずしも電子納税をする必要はありません。
ちなみに、書面で電子申告をした場合でも、e-Taxを使って電子納税をすることは可能です。ただ、電子納税をするときは、基本的に納税情報をe-Taxに送信する必要があります。電子申告をしていれば、この作業を省ける場合があります。
>> 電子納税の方法まとめ
>> 主な税金の納付方法まとめ
まとめ – 迷ったら確定申告書等作成コーナーへ!
所得税の電子申告について、初心者はひとまず「確定申告書等作成コーナー」を使うのがよいでしょう。会計ソフトで申告データを作る方法は事前準備が複雑になりがちなので、慣れないうちは「作成コーナー」で改めてデータを作るほうがラクです。
作成コーナーから電子申告を行う際は「ID・パスワード方式」か「マイナンバーカード方式」のどちらかで本人確認を行います。現状では、ID・パスワード方式で作成コーナーを利用するのが、最もシンプルな電子申告の方法です。
また、会計ソフトを使っているからといって、必ずしもe-Taxソフトなどを利用する必要はありません。作成コーナーから、会計ソフトの画面を見ながら手入力で申告データを作成すれば、比較的カンタンに電子申告ができます。
ID・パスワード方式は、マイナンバーカードが普及するまで一時的に認められている方法なので、いずれは廃止される見込みです。とはいえ、マイナンバーカードの普及があまり進んでいない現状から、まだしばらくは選択できると考えてよいでしょう。