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インボイス制度に完全移行するまでのスケジュール【免税事業者のインボイス特集⑥】

更新日: 2020/11/20 投稿日: 2020/11/21
インボイス制度に完全移行するまでのスケジュール【免税事業者のインボイス特集⑥】

消費税のインボイス制度について、2029年までに行われる制度改正の流れをまとめました。インボイス制度の導入は2023年10月ですが、それ以降も段階的な経過措置が予定されています。

ここまでのインボイス特集
>> インボイス制度とは?5分でわかる要点【免税事業者のインボイス特集①】
>> インボイス制度で免税事業者はどうなる?【免税事業者のインボイス特集②】
>> 課税事業者になったほうがいい?【免税事業者のインボイス特集③】
>> 免税事業者が発行する請求書【免税事業者のインボイス特集④】
>> 課税事業者が発行する請求書【免税事業者のインボイス特集⑤】

INDEX

目次

    インボイス制度の導入スケジュール

    インボイス制度において、重要な節目は「2023年10月」「2026年10月」「2029年10月」の3つ。これらのタイミングで仕入税額控除の計算方法が変わり、課税事業者は免税事業者から仕入れをした場合の税負担が増えていきます。

    インボイス制度の完全移行に向けたスケジュール

    インボイス制度が導入されても、免税事業者のままでいることは可能です。しかし、課税事業者からすれば、免税事業者からの仕入れでは結果的に損をすることになります。課税事業者との取引を継続したいなら、それをカバーするための対策を講じなくてはなりません。

    ちなみに「簡易課税制度」を適用している課税事業者は、売上税額から、業種ごとに一定の仕入税額を差し引いて納税額を算出します。このような課税事業者は、実際の仕入税額が納税額に影響しないため、今後も免税事業者からの仕入れを続ける可能性が高いです。ただし、簡易課税制度は近々見直しが行われる予定です。

    【現在】軽減税率制度の導入以降

    2019年10月に軽減税率制度が導入されて以降、「区分記載請求書等の保存」が仕入税額控除を受けるための要件となりました。課税事業者は区分記載請求書を保存していないと、仕入時に支払った消費税額を、納税時に控除できません。

    区分記載請求書とは?

    区分記載請求書とは、従来の請求書様式に以下のような記載項目を追加した請求書のことです。免税事業者でも発行できるため、ひとまず課税事業者との取引に支障はありません。なお、同等の内容を記載したレシートや領収書で代用することもできます。

    従来の請求書と区分記載請求書の比較

    ちなみに、区分記載請求書の発行は義務ではありません。受け取る側も、不足している記載項目があったら、自分で必要事項を書き足すことができます。とはいえ、取引相手の手間を考慮して、始めから必要事項を記載した区分記載請求書を発行するのが一般的です。

    【2023年10月】インボイス制度の導入(経過措置あり)

    2023年10月1日からインボイス制度が導入され、「適格請求書等の保存」が仕入税額控除の要件になります。しかし、免税事業者は適格請求書を発行できないため、課税事業者は、免税事業者に支払った消費税額を控除できなくなります。

    ただ、2026年9月までは、適格請求書のない取引で支払った消費税額についても80%は控除が可能です(インボイス制度の経過措置)。「適格請求書」の代わりに「区分記載請求書」を保存していることが要件です。

    【2023年10月】インボイス制度の導入での変更点

    経過措置の間、たとえば免税事業者から10万円分の仕入れをして、消費税10,000円を支払ったとします。この場合、その80%にあたる8,000円が仕入税額控除の対象になります。つまり課税事業者は、後に納付する消費税額から8,000円を差し引くことができます。

    仕入税額控除80%の具体例 - インボイス制度の経過措置

    適格請求書とは?

    適格請求書とは、現行の区分記載請求書に、以下のような項目を追加した請求書のことです。記載が必要な「登録番号」を取得できるのは課税事業者だけであり、免税事業者は適格請求書を発行できません。

    区分記載請求書と適格請求書の違い

    【2026年10月】経過措置の変わり目

    2026年10月1日から、経過措置の内容が切り替わります。これ以降、「適格請求書」のない取引で支払った消費税は、その50%しか仕入税額控除の対象になりません(こちらも「区分記載請求書」の保存は要件)。

    【2026年10月】仕入税額控除が80%から50%に切り替え

    たとえば、課税事業者が免税事業者からの仕入れで消費税10,000円を支払った場合でも、納税額の計算において控除できるのは5,000円だけです。残りの5,000円分、課税事業者は損をすることになります。

    仕入税額控除50%の具体例 - インボイス制度の経過措置

    課税事業者からすれば、控除額が減るぶん、免税事業者からの仕入れが割高になるということです。免税事業者のままで課税事業主との取引を続けたいなら、今まで以上に商品の価格やクオリティを突き詰めて、競合との差別化に努める必要があります。

    【2029年10月】インボイス制度への完全移行

    経過措置が2029年9月末日で終了し、いよいよインボイス制度が本格的にスタートします。これ以降、適格請求書のない取引で支払った消費税は、いっさい仕入税額控除の対象になりません。

    【2029年10月】インボイス制度への完全移行で変わること

    2029年10月以降、課税事業者が免税事業者から仕入れをすると、その仕入れにかかる消費税分の金額を実質的にまるごと損することになってしまいます。

    インボイス制度完全移行後の仕入れ取引例

    インボイス制度へ完全移行すると、免税事業者のままで値引き対応を行うよりも、課税事業者になったほうが利益を確保できるケースも多いでしょう。特に、課税事業者を主な顧客とする事業の場合は、遅くともこの辺りを目処に、自身も課税事業者となることを検討しましょう。

    まとめ

    インボイス制度の導入とその経過措置によって、免税事業者と取引をする課税事業者の仕入税額控除は、段階的に減少します。免税事業者に支払う消費税が徐々に控除対象から外れるため、課税事業者は免税事業者からの仕入れを控えることが予想されます。

    インボイス制度導入後の変更点

    免税事業者は、「課税事業者選択届出書」を提出することで自ら課税事業者になることもできます。あえて課税事業者になるか、免税事業者のままでいるか、選択が迫られます。

    免税事業者が課税事業者になると、当然ながら消費税の納付義務を負うことになります。これが課税事業者になることのデメリットです。一方で、免税事業者のままでいると課税事業者との取引が減少するリスクを負います。免税事業者は「課税事業者選択届出書」を前に、この2つを天秤にかけて検討することになります。

    なお、2023年中であれば年の途中から課税事業者になることも可能です。開業時を除けば、それ以外のタイミングで年の途中から課税事業者になることはできません。インボイス制度に向けて課税事業者となることを検討するなら、計画的に準備を進めましょう。

    自営百科では、消費税の免税事業者向けに、インボイス制度について特集を組んでまとめています。インボイス制度に関するその他の記事は、下記のとおりです(本記事は⑥)。