個人事業主・フリーランスとして独立開業するまでの「やることリスト」を、全37項目で詳しくまとめました。会社の退職時と、個人事業の開業時に分けて、やるべきことをチェックリスト形式で解説します。
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目次
個人事業主として独立開業するまでの流れ
はじめに、サラリーマンが個人事業主として開業するまでの流れをざっくり確認しておきます。会社をやめるときは「退職届」を所定の部署に提出し、開業したら税務署に「開業届」を提出します。
会社を退職するときの流れ
退職届を提出する前に、独立開業後の事業計画を立てておきましょう。退職届の提出後は引き返せないので、この段階で入念にシミュレーションしておくことが大切です。
個人事業主として開業するときの流れ
個人事業主・フリーランスとして開業する前に、事業用の口座やクレジットカードを用意しておくと便利です。開業準備に使ったお金も帳簿付けが必要なので、プライベートとビジネスのお金はあらかじめ分けておくのが吉です。
退職時のやることチェックリスト
まずは、独立開業に向けて会社を辞めるときのチェックリストをまとめました。以下のやることリストは、上から順番に確認していくのがおすすめです。
期限 | 問い合わせ先 | 優先度 | |
---|---|---|---|
独立開業にあたって許認可申請が必要か調べる | – | – | 必須 |
営業内容が「競業避止義務」に違反しないか確認する 例)塾講師が独立開業し、元勤務地付近で学習塾を開くなど |
– | – | 必須 |
事業計画書の作成 日本公庫の創業計画書の様式などを活用するとよい |
– | – | – |
日本公庫で新規開業資金の融資などを受けるか検討 | – | 日本政策金融公庫 | – |
退職前の業務引き継ぎの準備 | – | – | – |
退職から開業までのスケジュールを策定 | – | – | – |
ローンの申し込みなどを検討 (会社員の身分のほうがローンなどは組みやすい) |
– | – | – |
会社の健康保険を任意継続するか検討 | – | – | – |
ビジネス交流会などで横のつながりを作っておく (フリーランス交流会や新規事業交流会) |
– | – | – |
退職届の提出 | 原則、退職日の2週間前 | 勤務先 | 必須 |
年金手帳(or 基礎年金番号通知書)、雇用保険被保険者証、源泉徴収票、離職票の受け取り | 退職日 | 勤務先 | 必須 |
健康保険証、名刺、社用スマホ、社員証などの返却 | 退職日 | 勤務先 | 必須 |
会社の健康保険を任意継続しない場合、国民健康保険等への切り替え | 退職日から14日以内 | 市区町村役所 | 必須 |
厚生年金から国民年金への切り替え | 退職日から14日以内 | 市区町村役所 | 必須 |
失業保険や再就職手当の申請を検討 (求職活動と創業準備を並行して行う場合) |
退職日から概ね半年以内 | ハローワーク | – |
奨学金の残債がある場合、返還期限猶予の申請を検討 | – | 日本学生支援機構 | – |
※ このリストは参考資料としてご活用ください
退職後にハローワークで失業手当をもらうには、起業準備と並行して求職活動を行う必要があります。受給期間は原則1年間です。途中で開業したら給付はストップしますが、お祝い金として再就職手当を受け取れる場合があります。
開業時のやることチェックリスト
続いて、個人事業主として開業する際のチェックリストをまとめました。このリストも上から順に見ていけばOKです。
期限 | 問い合わせ先 | 優先度 | |
---|---|---|---|
営業の拠点となる事務所・店舗を確保する (自宅等でも可) |
開業届を提出する日 | – | 必須 |
事業用のメールアドレス、電話番号を取得 | – | – | 推奨 |
事業用の預貯金通帳やクレジットカードの作成 | – | – | 推奨 |
必要に応じて、営業の許認可申請を行う (不要な業種も多い) |
業種によって異なる | 必須 | |
インボイス発行事業者になるか検討 | – | インボイス登録センター | – |
税理士と顧問契約を結ぶか検討 (税理士マッチング交流会などを活用するとよい) |
– | – | – |
キャッシュレス決済を店舗等に導入するか検討 | – | – | 推奨 |
個人事業主向け会計ソフトの導入や、帳簿の備え付け方法を検討 | 開業日 | – | 必須 |
事業用の備品・消耗品などを購入(開業費) | 開業日 | – | – |
屋号(ビジネスネーム)の考案 | 開業届を提出する日 | – | – |
「個人事業の開業届出書」の提出 | 開業日から1ヶ月以内 | 税務署 | 必須 |
「青色申告承認申請書」の提出 | 開業日から2ヶ月以内 | 税務署 | 推奨 |
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出 (家族などに専従者給与を払う場合など) |
– | 税務署 | 推奨 |
失業手当「受給期間延長申請書」の提出 (失業手当を受給しなかった場合など) |
開業日から2ヶ月以内 | ハローワーク | 推奨 |
請求書、領収書、契約書などのテンプレートを作成 (請求書ソフトや電子契約サービスの活用も検討) |
– | – | 推奨 |
ホームページ、SNSアカウントの作成を検討 (ホームページ制作の外注も検討) |
– | – | 推奨 |
名刺、チラシ、ロゴ、事業用ハンコの作成 | – | – | 推奨 |
小規模企業共済や経営セーフティ共済への加入を検討 | – | 中小機構 | – |
国民年金付加年金への加入を検討 | – | 市区町村役所 | – |
iDeCo、国民年金基金への加入を検討 | – | 国民年金基金連合会 | – |
民間の所得補償保険や賠償責任保険への加入を検討 (無料プランもあるFREENANCEなどが有名) |
– | – | – |
※ このリストは参考資料としてご活用ください
開業届は「開業日」から1ヶ月以内に提出します。法律上、明確な開業日の定義はないので、常識の範囲で自由に決めて構いません。たとえば、ホームページを開設した日や、実際に取引を始めた日などが候補となります。
開業届の様式は国税庁のホームページでもダウンロードできますが、無料で開業届を作成できるサービスを使ったほうが簡単です。わかりやすいガイド文がついているので、記入ミスを防げます。
- 本記事の解説は、あくまで「一人or家族」で開業することを前提としています。親族以外を従業員として雇う場合などは、さらに様々な手続きが必要です。
【補足】開業までの準備費用は必要経費にできる?
開業までの準備に使ったお金は、帳簿上で「開業費」と呼ばれ、最終的には事業の必要経費になります。所得税・住民税などの計算上、必要経費が多いほど税金が安くなります(収入 - 必要経費 = 所得)。
「開業費」は、いったん資産に計上し、任意の年に取り崩して必要経費に充当できます。いわば“必要経費の貯金”みたいなものです。これは開業費ならではの特別ルールです(任意償却)。
ただし、開業費を必要経費にするには、正しい方法での「帳簿付け」が前提となります。早めに会計ソフトを導入して、開業前の支出についても正しく記帳しておきましょう。
独立開業までの必要書類まとめ
サラリーマンが退職して個人事業主・フリーランスとして独立開業する際は、さまざまな準備や手続きが必要です。主な必要書類を以下にまとめたので、参考までにごらんください。
- 雇用契約書や誓約書の控え、就業規則
- 任意継続被保険者資格取得申出書(健康保険を任意継続する場合)
- 健康保険資格喪失証明書(国民健康保険に切り替える場合)
- 退職届
- 年金手帳 or 基礎年金番号通知書(会社から受け取り)
- 雇用保険被保険者証(会社から受け取り)
- 源泉徴収票(会社から受け取り)
- 離職票(会社から受け取り)
- 個人事業の開業届出書
- 青色申告承認申請書
- 雇用保険の受給期間延長申請書(失業手当を受給しなかった場合など)
退職に関するルールは、企業によって細部が異なります。入社時に交わした雇用契約書類の控えや就業規則で確認できます。また、保険関係の手続きには期日があるので注意しましょう。
開業届を税務署に提出する際は、ついでに青色申告承認申請書も一緒に提出するのがおすすめです。とりあえず提出しておけば、次回の確定申告のときに白色申告と青色申告のどちらか好きなほうを選べるようになります。