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目次
屋号とは? 事務所名との違い
開業届・確定申告書に記入する「屋号」について説明します。まずは、事務所名との違いを整理しておきます。
屋号 | 事務所名 |
---|---|
事業そのものにつける名称 | 事務所ごとにつける名称 |
特別なルールはない |
各士業団体ごとにルールが異なる
|
※ いずれも、会社・法人と誤認しやすい名称や、権利侵害にあたる名称は不適当
事務所名との使い分けが面倒なら「屋号 = 事務所名」とするのが手っ取り早いです。なお、正式な事務所名が長すぎる場合は、その略称などを屋号とする先生もおられます。
上図のように、事務所名とかけ離れた屋号を使用しても問題ありません。
これだけは押さえておきたい!
大前提として、法的な問題が生じないよう、以下2点は守ったほうがよいです。士業に限らず、これはすべての個人事業に共通です。
- 会社と誤認される恐れのある文字は使用しない
- 他事業者の商号や商標を不正使用しない
加えて、屋号を使い続けるために、以下の2点はクリアしておきたいです。「すごく時間をかけて考えたけど、結局使わなくなったな……」となっては、元も子もありません。
- 人前で声に出してみて違和感がないか
- 顧客から由来などを何度聞かれても苦痛でないか
考案方法 – 3つの方向性
利益につながるような、プラスアルファの要素を取り入れるとなお良いです。本記事では、3つの方向性を提案します。
- 業務内容をわかりやすく伝える
- 良い印象を持ってもらう
- 呼びやすく、書きやすくする
これらすべて兼ね備えた屋号を考案するのは、なかなか難しいです。①~③のうち、どれか一つを軸に考えるのがおすすめです。
方向性① 業務内容をわかりやすく伝える
- 専門性が感じられて、安心感がある
- いちいち業務内容を説明せずに済む
- 検索でたどり着いてもらえることもある
屋号に業務内容を盛り込んでおくと、「〇〇の専門家」としてアピールできます。ただし、そこまで多くの文字数は割けません。そのため、キーワード選定が意外に大変です。
各士業のキーワード例
業務範囲を広く見せる | 得意分野に絞る | |
---|---|---|
行政書士 | 経営、法務、コンサルティング | 土地利用、道路工事、医療機器、化粧品、薬事、輸入 |
社会保険労務士 | 人事、法務、労務 | 助成金、就業規則、年金相談、社会保険手続代行 |
税理士 | 会計、税務、確定申告 | 記帳代行、不動産税務、遺産相続、国際税務 |
中小企業診断士 | 経営、ビジネス、コンサルティング | 小売業、流通業、サービス業、IT業、資金調達 |
弁理士 | 特許、知的財産 | 商標、デザイン、国際知財、国際特許、IT、AI |
基本的には、業務範囲を広く見せたほうが無難です。得意分野のアピールは、名刺やWEBサイトでも充分に可能です。屋号にすべて盛り込む必要はありません。
もし得意分野を盛り込むなら、分野の絞りすぎに注意しましょう。「〇〇の業務しか扱ってないのか」と誤解され、集客に悪影響を及ぼす恐れもあります。
方向性② よい印象を持ってもらう
- 親しみやすく、問い合わせしやすい
- 他事務所と差別化しやすい
- ブランド化しやすい
とっつきやすく雰囲気のよい屋号で、集客アップを狙います。また、先生自身のモチベーションアップも図れます。以下で、発想のヒントをいくつかご紹介します。
周囲の環境 | 地名、古名、町並み、山・川などの名前 |
---|---|
テーマカラー | 好きな色、ラッキーカラー、落ち着く色、伝統色 |
グッズ | 仕事道具、思い出の品、縁起物 |
好きなもの | 動物、花、天体、趣味に関係するもの |
その他 | 童話などの逸話、ニックネーム、大事にしたい考え方 |
地名などを屋号に盛り込むと、検索でヒットしやすくする効果も見込めます。立地の良さをアピールすることも可能です。
なお、以上のような方向性で考えるなら、名刺やホームページのデザインもひと工夫したほうがよいです。事務所の外観・内装・小物などの一体感も重要です。
方向性③ 呼びやすく、書きやすく
- 電話などのやりとりがスムーズになる
- 領収書などを書いてもらう際に、もたつきにくい
- 覚えてもらいやすい
呼びやすい屋号のほうが、顧客に覚えてもらいやすいです。先生の事務負担の軽減にも寄与します。具体的には、以下のポイントを押さえて考えるとよいでしょう。
発音しやすくする | とくに「ゃ・ゅ・ょ・っ」の小文字の頻度に注意 |
---|---|
画数を少なくする | ご自身の氏名より少ないほうがよい |
読みやすい字数にする | 2~3単語の組み合わせを限度とする |
誰もがわかる言葉を選ぶ | 外来語を使用する場合はとくに注意 |
読み方が複数ある漢字を避ける | 「崎」→「さき」or「ざき」 |
実際に屋号を用いる場面を、細かく想像してみることが重要です。たとえば、領収書を書いてもらう場面では、「すべてカタカナで、〇〇でお願いします」のように伝えられるとスムーズです。
ただ、「実際の場面を細かく想像する」といっても、事業が軌道に乗るまではなかなか難しいかもしれません。機会があれば、士業者の先輩に「屋号って、どんなときに使いますか?」と、実体験を聞いてみるのもよいでしょう。
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まとめ
士業の先生であれば、大抵は「正式な事務所名」をお持ちです。これをそのまま「屋号」としても使用できます。もし別の名称を考案するなら、下図のように考えるとよいです。
本記事では、利益につながりやすい屋号の考え方として、3つの方向性を提案しました。あくまで参考例ですが、どれかを中心軸として考えるのがおすすめです。
① 業務内容がわかりやすい | ② 良い印象を持ってもらう | ③ 呼びやすい、書きやすい |
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迷うようなら、3つとも試して気に入ったものを選べばよいでしょう。絞り込んでいく過程で、家族・友人の方、同業の先輩などに客観的な意見を求めるのもおすすめです。