個人事業主は、その年の収入や支出を帳簿に記録し、帳簿をもとに確定申告書類を作成します。作成した書類は、所定の方法で期限内に税務署へ提出し、申告した内容に従って所得税を納付します。
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目次
確定申告の大まかな流れ
すべての個人事業主は、その年の1月1日~12月31日に発生した収支などを、帳簿に記録しなければなりません。その帳簿にもとづいて、確定申告書類を作成します。これを翌年の確定申告期間(原則2月16日~3月15日)に税務署へ提出すれば、申告完了です。
確定申告の流れ – 帳簿づけから帳簿保存まで
そして、申告した所得税額を、確定申告期限日(原則3月15日)までに納付します。確定申告と納税が期日に間に合わなかった場合、延滞税などのペナルティが発生する恐れがあります。必ず期間内に手続きを済ませましょう。
なお、確定申告が終わっても、帳簿や関連書類はすぐに捨ててはいけません。税務署から提示の求めがあればいつでも応じられるよう、5~7年間は保管する義務があるからです。さしあたり、すべて7年間保管しておけば間違いはありません。
① 帳簿づけ – 1月1日~12月31日
売上や必要経費が発生したら、その日付や金額を帳簿に記録します。単に記録するだけでなく、その内容を客観的に証明できる書類(領収書など)と一緒に、5~7年にわたって保管する必要があります。
最低限の必要事項を満たす帳簿【様式例】
※ 単式簿記の場合
記帳の際は、金額を計算するだけでなく、収入や支出を「科目」というカテゴリ(旅費交通費、通信費など)に分類する必要もあります。もちろん手作業で行っても構いませんが、個人事業用の会計ソフトを利用すれば、このような事務負担を大幅に軽減できます。
単式簿記と複式簿記
帳簿づけの方式は「単式簿記」と「複式簿記」の2種類に大別されます。一般的には、単式簿記のほうが初心者向けとされます。ただ、複式簿記のほうが、青色申告において節税できる金額(青色申告特別控除)が多いです。
>> 単式簿記と複式簿記の違い – 簡易な簿記と正規の簿記
青色申告をするには、事前に税務署の承認を受ける必要があります。青色申告の承認申請期限は、開業日から2ヶ月以内です。なお、開業2年目以降、その年の3月15日までに申請すれば、白色から青色に切り替えることもできます。いずれも、毎年くりかえし申請する必要はありません。
② 確定申告書類の作成 – 翌年1月1日~
確定申告で必要な書類は、主に以下の3つです。用紙は税務署で受け取れるほか、国税庁のウェブサイトからもダウンロードできます。1年間の帳簿付けがすべて終わったら、これらの書類を作成していきます。
個人事業主向けの会計ソフトは、帳簿の内容を自動集計し、その集計結果を確定申告書類に転記してくれます。帳簿を正しくつけていれば、確定申告書類の大半は自動作成できるということです。完成した書類をプリントアウトすれば、書面での提出用としてそのまま使うこともできます。
決算書
白色申告者は「収支内訳書」を、青色申告者は「青色申告決算書」を作成します。どちらも、その年に帳簿づけした内容を、ギュッと2~4ページ程度に集約する書類と考えてください。この決算書で、事業によって得た所得(事業所得)が明らかになります。
確定申告書
「確定申告書」は、その年に得たすべての所得や、所得税の金額を明らかにするための書類です。2022年分以降の申告では「申告書」を、2021年分以前の申告では「申告書B」という様式を使います。
添付書類台紙
確定申告書に証明書などの書類を添付するときは、基本的に「添付書類台紙」に貼り付けて提出します。どこに何を貼り付けるかは、台紙に記載されています。
③ 確定申告 – 翌年2月16日~3月15日
所得税は、翌年2月16日~3月15日に申告します(受付開始日および期限日が土日や祝日と重なる場合は、翌平日に繰り越し)。この期間内に、所轄の税務署に確定申告します。方法は、大きく以下の3通りあります。
- 税務署に行って確定申告書類を直接提出する
- 確定申告書類を郵送する
- e-Taxで電子申告する
>> 確定申告の方法まとめ
確定申告書類を直接提出する
税務署の開庁時間は、平日の8時30分~17時です。 例年、確定申告期間中のいずれかの日曜日にも、特別に提出日が設けられます。また、会場で申告書作成や相談をしたい場合、相談受付時間が開庁時間より短いこともあるので、事前に確認しておきましょう。
確定申告書類を郵送する
確定申告期限が3月15日なら、3月15日の消印が押されていれば、期限内に申告したことになります(=当日消印有効)。なお、申告書は「郵便物」(第一種郵便物)や「信書便物」として送付する必要があります。「荷物」扱いの宅配便などで送ってはいけません。
e-Taxで電子申告する
e-Taxというシステムを通じて確定申告をすることを、とくに電子申告といいます。基本的に紙の書類は必要なく、フォームへのデータ入力などを行います。事前手続きとして、マイナンバーカードを取得するか、税務署の職員との対面による本人確認が必要です。
個人事業主が電子申告をする流れ【e-Taxによる申告までの手順】
④ 所得税の納付 – 翌年3月15日まで
確定申告により納税額が確定したら、その金額を3月15日の納付期限日までに納付します。原則として所得税の納付期限日は、確定申告の期限日と同じということです。納付方法は、ざっくり分けると次の3通りです。
- 納付書をつかう
- 銀行などを利用して口座振替をする
- インターネットで電子納税する
納付書をつかう
税務署や銀行などの金融機関の窓口で納付するには、各機関に備え付けられている納付書を使います。納付書に納税額などの必要事項を記入し、窓口で現金払いします。この方法では、クレジットカードによる支払いはできません。
また、納税額が30万円以下であれば、コンビニでも納付できます。ただ、「バーコード付納付書」という特別な納付書が必要なので、確定申告の際、税務署に発行を依頼しましょう。コンビニで納付する場合であっても、クレジットカードは使用できません。
口座振替をする(振替納税制度)
銀行口座から自動で引き落としてもらうこともできます。この場合は、4月下旬が振替日になります。初めて口座振替で納付する人は、3月15日までに所定の依頼書を提出する必要があります。所轄の税務署か、口座振替を利用する金融機関に提出しましょう。
インターネットで電子納税する
電子納税の方法はいくつかありますが、いずれも基本的には、e-Taxで電子申告を済ませた人向けの方法と考えてください。ただ「クレジットカード納付」や「スマホ納付」に関しては、紙で申告した場合でも手軽に利用できます。
税金の納付方法についてもっと詳しく
帳簿・関連書類の保管
確定申告後も、帳簿や関連書類は整頓して保管しておきましょう。保管すべき期間は帳簿や書類の種類によって異なります(5年or 7年)。長く保管しておくに越したことはないので、一律で7年間保管しておくのがおすすめです。
主な帳簿・書類の保存期間
保存方法は「書面(紙)保存」と「電子保存」の2つに大別されます。電子帳簿保存法に対応した会計ソフトを利用すれば、わざわざ印刷しなくて済むので便利です。決算書や請求書等の書類は、紙で保存しておけば問題ありません。
過去に申告した内容について、税務署の職員が帳簿などの調査に訪れることもあります(税務調査)。誤った方法で保存していると税務調査でトラブルになりかねないので、正しい保存方法をよく確認しておきましょう。
帳簿・書類を電子保存する際の要件をわかりやすく!【2022年1月から適用】
まとめ ‐ 確定申告にいたるまでの注意点
個人事業主の確定申告は、帳簿づけとセットで考えます。帳簿は、第三者が見てわかるように作成しなければなりません。「自分さえわかればいいや」ではダメということです。帳簿づけから確定申告・納税までは、以下の流れで行います。
① 帳簿づけ
帳簿には「何月何日に・何が・いくら増減した」などを、取引ごとに記録します。記憶が鮮明なうちに、普段からこまめに記帳するとよいです。領収書なども、月ごとに封筒で整理するか、ノートに貼り付けるなどして整理しておくと後が楽になります。
② 確定申告書類の作成
帳簿をもとに決算書や申告書を作成します。このとき、領収書などの書類がそろっているか、改めて確認しておきましょう。とくに必要経費については、あとで税務調査が入ることになったとき、証拠がないと経費として認められないなど、不利な扱いを受ける恐れがあります。
③ 確定申告
翌年2月16日~3月15日(土日祝日なら翌平日)に確定申告を行います。期間を過ぎても申告自体は可能ですが、延滞税などが追加で課されることがあるので、期間内に申告をしましょう。また、少しでも期限を過ぎた場合、青色申告55万円・65万円控除は受けられません。
④ 所得税の納付
どの納付方法でも、納付期限は翌年3月15日(土日祝日なら翌平日)です。ただ、口座振替に限り、振替日が4月下旬となります。しかし、振替日に残高が不足していると、3月15日の翌日から計算された延滞税が発生します。残高をよく確認しておきましょう。