2020年2月17日(月)~4月16日(木)に行う所得税の確定申告について、今回から適用される主な変更点を3つおさえておきましょう。
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目次
2020年の確定申告からココが変わる!
今回の変更により、給与所得者(会社員・パートタイマーなど)が確定申告をする場合、ほんの少し確定申告がラクになります。一方、ほとんどの個人事業主にとって大きな変化はありません。
主な変更点
- 源泉徴収票の添付が不要に
- 住宅ローン控除の拡充
- スマホでの確定申告の幅が広がる
今回の各変更点は、申告する所得によっては影響を受けません。たとえば、事業所得しか得ていない個人事業主に影響する可能性があるのは、②の「住宅ローン控除の拡充」だけです。もちろん、この人が住宅ローンを組まなければ、今回の変更はすべて関係ないということになります。
所得の種類と関係する変更点
基礎控除などは2021年の確定申告から変更
基礎控除や青色申告特別控除などの見直しは、2020年分(申告期間は2021年2月16日~3月15日)の確定申告からです。今回の確定申告では、まだ適用されません。
>> 2021年(令和3年)に行う確定申告から適用される改正
① 源泉徴収票の添付が不要に
今回の確定申告から、源泉徴収票など一部の書類について添付が不要となりました。これにより、年末調整を受けている給与所得者は、源泉徴収票の原本を提出する必要がなくなったのです。
添付不要といえど、確定申告書に数字を転記するため、源泉徴収票は書類作成時に必要になります。また、手続きによっては源泉徴収票の提出が求められますので、保管しておくに越したことはないです。仮になくしてしまったとしても、過去7年分は勤め先が保管することになっています。
源泉徴収票は、勤め先で年末調整を受けている場合に配布されるものです。会社に勤めず個人事業だけを営んでいる場合、受け取る機会はありません。
そのほか添付不要となった書類
源泉徴収票のほかには、以下のような書類の添付も今回から省略できるようになります。
- オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
- 配当等とみなす金額に関する支払通知書
- 上場株式配当等の支払通知書
- 特定口座年間取引報告書
② 住宅ローン控除の拡充
2019年10月以降に住宅を購入した場合、「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」の支援策が適用されます。通常10年間の控除期間が13年間に延長されるほか、11年目以降の3年間は、消費税率2%引き上げ分の負担を考慮した控除額に設定されます。
「住宅ローン控除の拡充 – 国税庁」より
この支援策は、消費税率の引き上げに伴って講じられました。そのため、対象は2019年10月1日~2020年12月31日の間、10%の消費税率で購入して居住した住宅に限られます。そもそも住宅を購入する予定のない人には関係ない控除です。
③ スマホでの確定申告の幅が広がる
2020年1月から「確定申告書等作成コーナー」のスマホ専用画面が大幅にアップデートされました。今回のアップデートはスマホで操作しやすいよう最適化された「スマホ専用画面」が対象です。パソコン用の画面と比べると、できることが限られています。
- 確定申告書等作成コーナーとは、確定申告書類の作成からe-Taxによる申告データの送信まで行える公的なウェブサイト。
国税庁が運営している。
確定申告書等作成コーナーのスマホ専用画面は、2019年1月から提供が開始されました。最初はとにかく対象の範囲がせまく、利用者からずばり「使えない」という声が挙げられていました。
スマホ専用画面のアップデート内容
2019年12月まで | 2020年1月から | |
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対象者 |
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申請可能な所得控除 |
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利用方式 |
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|
2020年からは範囲が大きく見直され、給与所得者が行う確定申告のほとんどのケースに対応します。ただし、スマホ専用画面は事業所得の入力にまだ対応していません。よって、個人事業主や、会社に勤めつつ副業的に個人事業を営んでいる人は使えません。
>> 会社員の確定申告がスマホから可能に!対象者・申告できる内容を紹介
確定申告書類の書式が変更
元号が「平成」から「令和」に改元され、確定申告書類が「令和元年分以降用」に変更されました。元号は変わりましたが、細かな点がいくつか変更されただけで、大きな変更はありません。今回は「会社に勤めつつ、個人事業も営んでいる人」の確定申告が、ほんの少しだけラクになる変更内容です。
確定申告書Bの変更
変更点自体も少ないのですが、たとえば確定申告書Bでは、元号のほかに「所得控除の記入欄が、確定申告書Aと同様のレイアウトになる」という変更がありました。
>> 令和元年分(2019年分) 確定申告書類で変更された点
2019年10月から軽減税率制度がスタート
消費税申告においては、2019年10月1日から消費税率が10%に引き上げられたことが一大事です。それに伴い、消費税の軽減税率制度も開始し、請求書の発行を行うすべての事業者が対応を求められることになりました。課税事業者だけでなく、免税事業者も対応する必要があります。
- 課税事業者・免税事業者とは
- 「課税事業者」とは、消費税の納付義務がある事業者を指す。対して「免税事業者」は、消費税の納付が免除されている事業者のこと。
特に課税事業者は、売上や経費を税率ごとに整理して帳簿づけする「区分経理」を行っていないと、消費税の確定申告書を正確に作成することができません。確定申告の直前になって慌てることのないよう、気をつけましょう。
変更による影響まとめ – 2020年の確定申告
2019年分の確定申告(申告期間は2020年2月17日~4月16日)から適用される変更について、下記の通りまとめました。今回の変更点と所得の種類を対応表にしています。
変更点と所得の種類【対応表】
事業所得のみ | 事業所得 &給与所得 |
給与所得のみ | |
---|---|---|---|
① 源泉徴収票の 添付が不要に |
関係なし | 関係アリ! | 関係アリ! |
② 住宅ローン控除 の拡充 |
10%の消費税で住宅を購入していれば、関係アリ! | ||
③ スマホでの確定申告の 幅が広がる |
利用対象外 | 利用対象外 | 利用可能! |
本記事では、対象者が多いと思われる3つの変更点を紹介しました。このほかにも「ふるさと納税制度の見直し」や「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の見直し」といった変更も2019年分の申告から適用されます。
なお、2020年1月中旬~5月末まで国税庁のホームページにAIチャットボットが試験的に導入されていました。あくまで試験的導入なのでこれがすぐに役立つという期待は薄いですが、将来的な機能向上を今からお祈りしておきましょう。