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2021年(令和3年)に行う確定申告から適用された改正

更新日: 2021/09/13 投稿日: 2020/07/17
2021年(令和3年)に行う確定申告から適用された改正

INDEX

目次

    2020年分から適用の税制改正

    2020年分の確定申告期間は、2021年2月16日(火)~4月15日(木)でした。本記事では、この2020年分の確定申告から適用となった税制改正について紹介します。

    個人事業主にとって重要な改正点

    • 青色申告特別控除 → 特に重要
    • 基礎控除 → 特に重要
    • 配偶者(特別)控除など
    • 給与所得控除
    • 寡婦(夫)控除

    2020年分から適用の税制改正において、個人事業主にとっての最重要ポイントは「青色申告特別控除」と「基礎控除」の変更です。とくに、青色申告特別控除65万円を受ける場合は、電子申告などが新しく要件に加わりました。

    給与所得控除」の改正が影響するのは、給与所得がある個人事業主だけです。たとえば、副業などで会社から給料をもらいつつ個人事業を営む場合などが該当します。給与所得のない個人事業主にとっては関係ありません。

    多くの個人事業主にとって重要な改正点は、上記の通りです。その他には、たとえば下記のようなものがあります。

    • 公的年金等控除 (廃業時などに適用)
    • 所得金額調整控除 (給与所得者に適用)
    • 上場株式の配当への源泉徴収義務
    • 信託財産の利子への課税
    • 年末調整書類の電磁的提供

    税制改正等の内容 – 国税庁

    ① 青色申告特別控除が3段階に – 10万・55万・65万

    2020年分の確定申告から、青色申告特別控除が「10万円・55万円・65万円」の3段階に変更されました。2019年分までは「10万円・65万円」の2段階しかありませんでした。この変更にともない、65万円の控除について、新しい要件(電子申告など)が追加されています。

    2020年分から青色申告特別控除額が「10・55・65万円」の3段階になる

    新要件の位置づけと控除額の関係をざっくりまとめると、下表のようになります。65万円控除を受けるための要件がひとつ増えたということです。

    青色申告特別控除の控除額が3パターンに

    10万円控除 55万円控除 65万円控除
    記帳 単式簿記でOK 複式簿記 複式簿記
    決算書 損益計算書の作成
    貸借対照表は不要
    損益計算書の作成
    貸借対照表の作成
    損益計算書の作成
    貸借対照表の作成
    新要件 新要件なし 新要件なし 電子申告 or 電子帳簿保存を行う

    >> 青色申告特別控除の変更点(2021年に行う確定申告から)

    なお、せっかく複式簿記や電子申告の要件を満たして青色申告をしても、確定申告の期限を一日でも過ぎて申告してしまうと、10万円の控除しか受けられません。申告期限には注意しておきましょう。

    >> 電子申告をする方法
    >> 電子帳簿保存がまだまだ個人事業主におすすめできない理由

    ② 基礎控除が10万円引き上げ

    2020年分の確定申告から、基礎控除の金額が10万円引き上げられました。所得税の計算においては、38万円だった基礎控除額が48万円となっています。ただし、すべての人が適用できるわけではなく、以下の所得制限が加わります。

    合計所得額と基礎控除額

    合計所得金額 基礎控除額(所得税)
    2,500万円超 0円 (控除なし)
    2,450万円 ~ 2,500万円 16万円
    2,400万円 ~ 2,450万円 32万円
    0円    ~2,400万円 48万円

    ※「~」は「超 ~ 以下」

    上表のとおり、控除額が減少するのは合計所得2,400万円を超えてからなので、ほとんどの人にとって所得制限は関係ありません。改正後も、多くの人は48万円の基礎控除を受けられます。

    >> 基礎控除の変更点(2021年に行う確定申告から)

    ③ 配偶者控除などの所得要件が緩和

    基礎控除の変更にともない「配偶者控除」などの所得要件が緩和されました。たとえば、配偶者控除を受けるには、2019年分以前は配偶者の年間合計所得が「38万円以下」であることが要件でした。しかし、2020年分以降は、その金額が「48万円以下」となっています。

    「配偶者控除」の要件 – 2020年分から

    • 納税者に配偶者がいること
    • 納税者と配偶者が生計を共にしていること
    • 配偶者が、青色専従者給与を得ていない(または白色専従者でない)こと
    • 配偶者の年間の合計所得が、48万円以下であること ←変更点!

    上記の要件すべてを満たす納税者は、配偶者控除を受けることができます。控除額は従来どおり、基本的に「13万円・26万円・38万円」の3段階です。納税者の所得に応じて控除額が決まります。

    基礎控除の改正にともなって所得要件が緩和された控除

    上記の所得控除においては、もともと基礎控除の金額を基準として所得要件が定められていました。ですからこれらの所得要件も、基礎控除額アップと連動して緩和されています。

    ④ 給与所得控除が10万円引き下げ

    給与所得控除」は、会社員などの給与所得者が受ける控除です。事業所得のみの個人事業主には影響のない話題です。副業などで給与収入も得ている個人事業主にとっては、マイナスの変更点です。

    以下のグラフのように、給与所得控除は2020年分から一律10万円引き下げとなりました。さらに控除額の上限は、195万円に引き下げられました。同時に、上限が適用される給与収入が850万円に下がっています。

    2020年分からの給与所得控除額を2019年分とグラフ上で比較

    これは、先述の基礎控除額の引き上げと同じタイミングで適用される変更なので、トータルの控除額では前年と変わらなかったという人も多いでしょう。

    >> 給与所得控除の変更点まとめ – 控除額や上限金額の引き下げ

    所得金額調整控除 – 事業所得は控除の対象外

    給与所得控除における上限額の引き下げなどに関連して、救済措置的な制度が創設されました。それが「所得金額調整控除」です。公的年金を受け取っている人や、給与収入850万円超の子育て・介護をしている人などが対象です。事業所得しか得ていない個人事業主には、この控除は適用されません。

    ⑤ 寡婦(夫)控除の見直し

    2020年分から、寡婦(夫)控除が大きく変更されました。2019年分以前は、未婚のひとり親は控除の対象外でした。しかし、新たに「ひとり親控除」の制度が新設され、結婚歴や性別にかかわらず控除が受けられることになりました。

    ひとり親控除は、結婚歴の有無や性別に関わらず、多くのシングルマザー・シングルファザーが対象です。

    寡婦(夫)控除の見直し・ひとり親控除の新設

    2019年分まで 2020年分から
    寡婦控除 所得500万円以下なら35万円控除
    所得500万円超なら27万円控除
    所得500万円以下なら35万円控除
    所得500万円超だと控除なし
    寡夫控除 所得500万円以下なら27万円控除
    所得500万円超なら控除なし
    廃止
    ひとり親控除 制度なし 制度の新設
    所得500万円以下なら35万円控除
    所得500万円超だと控除なし

    いずれも、納税者の子どもが控除要件を満たすことが前提
    表中の「所得」は、納税者の合計所得金額を指す

    「ひとり親控除」の新設にともない、「寡婦控除」は要件や控除額に調整が加えられました。一方「寡夫控除」は廃止されました。男性にとっては、「ひとり親控除」が完全に上位互換的な制度であるため、不要になったのです。

    >> 寡婦控除・寡夫控除の改正
    >> ひとり親控除とは?要件・寡婦控除との違い・控除額など
    >> 従来の寡婦控除について

    まとめ – 個人事業主にとって重要な税制改正【2020年分】

    2020年分(2021年2月16日~4月15日に行う)の確定申告から、重要な控除が改正されています。本記事で見てきた控除の改正をおさらいしておきましょう。

    個人事業主にとって重要な改正の要点

    よい点 わるい点
    基礎控除 控除額アップ!(10万円) 所得要件の追加
    (合計所得2,400万円超では段階的に控除額が下がる)
    青色申告特別控除 65万円控除の要件が厳しくなった
    (10・55・65万円の3段階に)
    配偶者(特別)控除
    扶養控除
    寡婦控除
    ひとり親控除
    勤労学生控除
    障害者控除
    所得要件が10万円緩和
    (基礎控除の改正が影響)
    給与所得控除 控除額ダウン(一律10万円)
    控除上限額などの引き下げ

    先述のとおり「給与所得控除」は、給与所得を得ていない個人事業主には関係のないものです。

    今回の改正にともなって、個人事業主が何かしらの対応を迫られるとしたら、青色申告特別控除65万円を受ける場合です。2020年分以降も65万円控除を受けたければ「電子申告」か「電子帳簿保存」を行う必要があります。

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