個人事業主・フリーランス向けに、還付申告の概要や申請方法をわかりやすく解説します。「還付申告ってなに?」「還付金が受け取れるケースは?」という基本的な内容からまとめました。
会社員の還付申告についてはコチラ
目次
個人事業主の還付申告とは?
- 個人事業主は「源泉徴収」などで必要以上に税金を払っている場合がある
- 還付申告をすれば、納めすぎた税金が返ってくる
- 還付申告のやり方は通常の確定申告と同じ
- いつも通り確定申告すれば還付金を受け取れるケースがあるということ
還付申告とは、ひとことで言えば「払いすぎた税金を返してもらうための手続き」です。
個人事業主は確定申告で1年分の納税額を計算しますが、それ以前に「源泉徴収」や「予定納税」で所得税を”先払い”している場合があります。こうして支払った税金が、本来の納税額(確定申告で算出した税額)より多かった場合は、差額を返してもらえます。
| 源泉徴収や予定納税がない場合 | 源泉徴収や予定納税があった場合 |
|---|---|
| 確定申告で正確な税額を 計算してから納税する ↓ 税金を払いすぎることはない |
源泉徴収や予定納税で 確定申告の前に税金を払っている ↓ 税金を払いすぎているかも! |
還付申告のやり方は、通常の確定申告と同じです。確定申告をすると「納税が必要になる場合」と「税金が返ってくる場合」があり、後者のパターンを還付申告と呼ぶわけです。
還付申告の期間はいつからいつまで?
還付申告の有効期間は、対象となる年の「翌年1月1日から5年間」です。たとえば、2024年分の還付申告は、2025年1月1日から2029年12月31日までできます。
ただ、「自分が還付申告の対象かどうかわからない…」という場合は、念のため通常の確定申告期間(原則2月16日〜3月15日)に申告を済ませましょう。そうすれば、もし納税が必要になった場合でも期限までに対応できます。
個人事業主が還付申告できるケース
- 源泉徴収を受けた報酬がある
- 所得税の予定納税をした
上記のどちらかに該当する個人事業主は、確定申告によって税金が還付される可能性があります。ここからは、それぞれのパターンについて詳しく解説します。
① 源泉徴収を受けた報酬がある
フリーランスなどが受け取る報酬は「源泉徴収」されている場合があります。源泉徴収とは、企業が報酬金額の一部を天引きすることを指します。天引きされた金額は、企業が「〇〇さんの報酬から税金分を預かっておきましたよ」と税務署に納めています。

源泉徴収の対象となる報酬は法律で決まっています。主な例は下記のとおりです。
源泉徴収の対象となる報酬(主な例)
| 原稿の報酬 | ・演劇や演芸といった台本の執筆料 ・映画など脚本の執筆料 ・文章や詩、歌、標語などの懸賞の入賞金 ・書籍の編纂料や監修料 ・広告宣伝用ポスターのコピーライティング料 |
|---|---|
| デザインの報酬 | ・映画関係の原画料や線画料、タイトル料 ・標章の懸賞の入賞金 ・広告宣伝用ポスターのデザイン料 |
| 著作権の使用料 | ・映画や演劇、演芸の原作料や上演料 |
「利益が少ないわりに、たくさん源泉徴収されている」という人は、確定申告で税金の還付を受けられる可能性があります。特に、ライター・デザイナー・イラストレーターなどの報酬は源泉徴収の対象になりやすいので、利益が少ないうちは要チェックです。
② 所得税の予定納税をした
予定納税とは、簡単に言えば「所得税の前払い制度」です。前年の所得税が15万円を超えた人などが対象になります。(対象者には通知書が届くので、通知が届いていない人は関係ないと考えてOKです)
予定納税の対象者は、当年分の所得税の一部を前払いします。前払いする金額は「前年の所得税額」をもとに算出されるので、前年の所得が多かった人は、そのぶん多くの金額を前払いすることになります。
予定納税で還付申告の対象になるケース
| 前年より所得が増える場合 | 還付申告の対象になる可能性は低い |
|---|---|
| 前年と同等の所得になる場合 | |
| 前年より所得が減る場合 | 還付申告の対象になる可能性がある |
要するに、予定納税で前払いした金額が、本来の納税額(確定申告で算出した税額)を上回る場合は、おつりを返してもらえるわけです。前年よりも所得が大幅に減る場合は、確定申告で税金を還付してもらえる可能性が高いです。
還付申告できるか確認する方法【還付額の計算方法】
確定申告で還付される金額は、下記の計算式で求められます。この計算で還付金額が生じる場合は、還付申告ができる(還付申告の対象になる)ということです。
ただ「実際の所得税額」を計算するのはかなり面倒です。確定申告書を作成すれば自動的に上記の計算ができるので、自分が還付申告の対象になるかわからない人は、ひとまず普通に確定申告をしましょう。
還付申告のやり方と提出書類
還付申告のやり方や提出書類は、通常の確定申告と同じです。そもそも還付申告とは「確定申告をしたら税金が還付された」というケースを指す言葉なので、独自の手続きが存在するわけではありません。
還付申告の提出書類【個人事業主】
| 白色申告の場合 | 青色申告の場合 |
|---|---|
| ・収支内訳書 ・確定申告書 第一表・第二表 ・添付書類(控除証明書など) |
・青色申告決算書 ・確定申告書 第一表・第二表 ・添付書類(控除証明書など) |
これらの書類を、下記のいずれかの方法で提出しましょう。(こちらも通常の確定申告と同じです)
申告書類の提出方法
- 税務署に直接持参する
- 所定の宛先に郵送する
- e-Taxでオンライン提出する(電子申告)
還付金はいつ振り込まれる?受取方法は?
- 書面で申告した場合は1ヶ月~1ヶ月半程度で振り込まれる
- e-Taxで電子申告した場合は3週間程度で振り込まれる
還付金は、確定申告書の「還付される税金の受取場所」欄に記入した口座に振り込まれます。銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行などの口座を指定できます。
書面で還付申告をした場合は、1ヶ月~1ヶ月半程度で振り込まれます。一方、オンラインで電子申告(e-Tax)をした場合は、3週間程度でちょっと早めに振り込まれます。

ただ、2〜3月は確定申告が集中する時期のため、振込までに2ヶ月以上かかるケースもあるようです。還付を早めたい場合は、1月中にe-Taxで電子申告しておくとよいでしょう。
まとめ – 個人事業主の還付申告のポイント
- 個人事業主は、源泉徴収や予定納税で必要以上に納税していることがある
- 納めすぎていた税金は、確定申告すれば還付してもらえる
- 還付金は申告後1ヶ月〜1ヶ月半程度で振り込まれる
- e-Taxで申告すれば還付が3週間程度と、振り込みが少し早い
- 還付金を受け取る口座は、申告者本人の名義でなければならない
個人事業主の場合、還付申告であったとしても確定申告期限までに申告を行ったほうがよいです。ちなみに、2026年(令和8年)の確定申告期間は「2026年2月16日(月)~3月16日(月)」です。




