所得税の確定申告には期限があり、それを過ぎるとペナルティが生じる場合があります。2023年分(令和5年分)の確定申告期間は、2024年3月15日に終了しました。
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目次
期限を過ぎて申告するとどうなる?
2023年分の確定申告期間は、2024年3月15日(金)まででした。3月16日以降も申告はできますが、期限後申告となってしまい、経過した日数などに応じて以下のペナルティが生じます。なお、還付申告をする方には、ペナルティはありません。
- 延滞税がかかる
- 無申告加算税がかかる
- 隠ぺい・仮装があったら重加算税がかかる
所得税の納付が必要であるにもかかわらず、万が一申告期限を過ぎてしまった場合は、以下の2つをふまえて対処することが非常に重要です。こうすることで、ペナルティを最小限に抑えることができます。
- 延滞税は、納税を速やかに行うことで最小限で済む
- 無申告加算税は、自主的な申告により軽減できることがある
還付申告なら確定申告期間をすぎても罰則なし
予定納税などで、納付すべき金額以上にすでに納税している個人事業主は、慌てる必要はありません。還付申告の場合は、延滞税などのペナルティがないからです。ただし、2023年分の所得税について還付金を受け取るには、2028年12月31日までに申告が必要です。
青色申告特別控除が10万円に減額される
法定申告期限を過ぎて申告した場合、青色申告特別控除55万円・65万円の要件を満たせません。よって、2023年分の確定申告であれば、2024年3月15日までに提出が間に合わなかった時点で、10万円の青色申告特別控除しか受けられないことになります。
① 延滞税がかかる
2024年3月15日(金)の期限日を過ぎて、2023年分の所得税を納付しなかった場合、納付が完了するまでの超過日数に応じた「延滞税」がかかります。普通は、確定申告をした上で納税をするわけですから、期限後申告なら大抵は延滞税がかかることになります。
日数が経過するほど延滞税も増えてしまうので、速やかに納税を済ませましょう。といっても、元々の所得税額や超過日数が少なければ大した金額にはならず、金額がゼロになることもあります。すぐに金額を知りたい方は、国税庁サイトの計算フォームで試算できます。
延滞税の計算方法 ‐ 国税庁
延滞税の計算について
延滞税の金額は、自分で計算する必要はないのですが、大まかには上図のように計算されます。延滞税率は2段階あり、納期限を過ぎた後さらに2ヶ月経過すると、税率が以下のように上がります。この税率は年によって異なります。
2024年3月16日~5月16日 | 2024年5月17日~ |
---|---|
2.4% | 8.7% |
たとえば、2024年5月31日(金)に納付が完了した場合は、3月16日から起算したトータルの超過日数は77日です。このうち、5月16日までの61日間については2.4%、6月17日以降の16日間については8.7%の税率がかかるというわけです。
ちなみに、計算結果が1,000円未満なら、延滞税は払わずに済みます。
② 無申告加算税がかかる
2024年3月15日(金)を過ぎてから2023年分の所得税を申告した場合、本来納付すべき税額(本税)に対して、原則15%の「無申告加算税」がかかります。延滞税と違って、遅れた日数によって税額が変動することは基本的にありません。
ただ、期限後申告を行う際の自主性に応じて、税率が以下のように軽減されることはあります。たとえば、税務署から電話などで税務調査の事前通知を受ける前に、自主的に申告すれば、税率は5%に軽減されます。
無申告加算税の軽減について
50万円以下の部分 | 50万円超 300万円以下の部分 |
300万円超の部分 | |
---|---|---|---|
通知前に申告した | 5% | 5% | 5% |
通知後に申告した | 10% | 15% | 25% |
無申告で 税務調査を受けた |
15% | 20% | 30% |
※ 上記は、2023年分以降の無申告加算税の場合
税務調査の事前通知を受けた後であっても、実際に調査が入るまでの間に自ら申告をした場合は、税率が少し軽減されます。計算結果が5,000円未満なら、無申告加算税は課されません。
無申告加算税の上乗せについて
A | 税務調査で帳簿を提示しない or 売上金額の記帳に半分以上の漏れがある |
+10% |
---|---|---|
B | 売上金額の記帳に1/3〜1/2の漏れがある | +5% |
C | 過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課されたことがある | +10% |
※ 上記は、2023年分以降の無申告加算税の場合
上記A〜Cのいずれかに当てはまる場合は、税率がさらにアップします。AとCの両方に当てはまる場合は「+20%」、BとCなら「+15%」と考えます。
たとえば、税務調査で帳簿を提示せず、かつ5年以内に無申告加算税を課されたことがある場合は、AとCに該当するので「+20%」が上乗せされます。この場合、50万円以下の本税に対しては、「15% + 20% = 35%」の無申告加算税が課されます。
申告期限を過ぎても1ヶ月以内なら無申告加算税が免除される?
以下の要件をすべて満たすことができれば、例外的に無申告加算税が課されません。ただし、過去5年間において、無申告加算税や重加算税を課されたことがなく、なおかつこの免除も適用されたことがない人に限ります。
- 法定申告期限から1ヶ月以内に自主的に申告していること
- 納付すべき税額の全額を法定納期限より前に納付していること
(この「法定納期限」は、2024年でいうと3月15日)
例えば、源泉徴収によってすでに必要額の納税が済んだ場合、2つ目の要件を満たすことになります。なお、事前に口座振替納付の手続を行っていた場合は、申告書を提出した日に全額納付すれば、2つ目の要件は満たすことになります。
③ 悪質な無申告には重加算税がかかることも
無申告加算税が課される場合に、悪質な行為が認められると、無申告加算税の代わりに「重加算税」がかかります。この場合の重加算税は「本税×40%」の金額です。さらに、過去5年間に無申告加算税等を支払っていると「本税×10%」の金額が上乗せされます。
ここで言う悪質な行為とは、事実を隠ぺい・仮装して、不正に税額を引き下げるような行為を指します。たとえば、以下のような行為です。
- いわゆる「二重帳簿」を作成している
- 帳簿書類の破棄、隠匿、虚偽記載、改ざん、偽造などをしている
- 本人以外の名義や架空名義を脱税目的に使っている
- 調査の際に虚偽の答弁をする
>> 申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
なお、「意識的に申告を怠った」などの不正が仮にあったとしても、隠ぺい・仮装行為が存在しなければ、重加算税が課されることはありません。
また、隠ぺい・仮装行為の有無について、納税者側と国税庁側とで争う場合、その立証責任は納税者側ではなく国税庁側にあります。つまり、納税者側が隠ぺい・仮装行為を否定したら、国税庁側がその存在を立証しない限り、重加算税は課されないということです。(平9.12.9裁決、裁決事例集No.54 94頁)。
青色申告特別控除55万円・65万円が受けられない
55万円・65万円の青色申告特別控除を受けるための要件には「法定申告期限までに申告すること」も含まれています。そのため、期限後申告をした場合は55万円・65万円控除を受けられず、10万円控除が適用されることになります。
期限後申告による青色申告特別控除額への影響
白色申告者 | 青色申告者(10万円) | 青色申告者(55・65万円)※ |
---|---|---|
影響なし | 影響あり | |
もともと特別控除なし | 特別控除10万円のまま | 特別控除が10万円に減額 |
※もし期限内に申告していたら55万円or65万円の控除を受けられたはずの青色申告者
なお、元々10万円の控除しか受けるつもりがない青色申告者は、法定申告期限を過ぎても青色申告特別控除額への影響を受けません。当然ながら、そもそも特別控除が受けられない白色申告者にとっては関係のない話です。
「修正申告」や「更正の請求」をしたらどうなるの?
2024年3月15日(金)までに確定申告を済ませたものの、3月16日(土)以降になって内容の誤りに気づき、それを正すために「修正申告」や「更正の請求」を行ったとします。この場合、期限内にいったん申告は済ませているので、55万円・65万円控除が10万円に減額されることはありません。
還付申告の場合は、申告できる期間が5年間もあります。2023年分の還付申告期間は、2024年1月1日~2028年12月31日です。納税を目的とする通常の確定申告と違って、2024年3月15日(金)を過ぎてから申告しても問題ありません。
ただ、5年以内に還付申告を行わなかった場合は、還付金を受け取る権利そのものが消滅してしまうので、早めに申告しておくに越したことはありません。
55万円・65万円の青色申告特別控除を狙っていた人は要注意!
法定申告期限を過ぎると、還付申告であっても55万円・65万円の青色申告特別控除は受けられなくなります。2023年分であれば、2024年3月15日が法定申告期限です。この日付を過ぎて還付申告をした場合、10万円の特別控除しか受けられないということです。
期限後申告の方法は通常の確定申告と同じ
期限後申告であっても、申告方法は通常の確定申告と同じです。大まかには「直接提出・郵送・e-Tax」の3種類があります。どの方法が一番早く済むかは、それぞれの事情によって異なるので、一概には言えません。以下の記事で、わかりやすく説明しています。
確定申告書の提出方法まとめ【直接提出・郵送・e-Tax】
提出する書類も、通常の確定申告と同じです。期限後申告だからといって、新たに必要書類が増えたりすることはありません。個人事業主の場合、基本的に「決算書・申告書・添付書類台紙」の3つを提出します。詳しくは、以下の記事も参考にしてみてください。
個人事業主が確定申告で提出する書類【白色申告・青色申告】
まとめ – 期限後申告のペナルティ
確定申告期間が終わっても、申告を行うこと自体は可能です。申告方法や提出書類なども、通常の確定申告と基本的には変わりません。ただし「期限後申告」という扱いになります(ただしe-Tax障害などに伴い期間延長を受けた人は、期限内申告として扱われる)。
期限後申告には、以下のようなペナルティが生じます(ただし、災害のような正当な理由がある場合や、還付申告をする場合などを除く)。
期限後申告に対するペナルティは、主に「延滞税」「無申告加算税」です。万が一、隠ぺいなどをしていると、無申告加算税の代わりに「重加算税」が課されることもあります。
延滞税 | 納付期限を過ぎた日数に応じた金額を支払う |
---|---|
無申告加算税 | 原則15%を支払う(自主的に申告すれば軽減あり) |
いずれも、以下のように対処することが重要です。
- 延滞税は、納税を速やかに行うことで最小限で済む
- 無申告加算税は、自主的な申告により軽減できることがある
このほかに、ペナルティとは少し違いますが、55万円・65万円の青色申告特別控除を受けるための要件にも注意が必要です。納付を目的とする確定申告であっても、還付申告であっても、法定期限内に一度も申告をしていない場合には、55万円・65万円の控除は適用できません。