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2021年は延長申請のハードルが高い!
2020年分(令和2年分)の確定申告期限は、2021年4月15日まででした。この2021年の確定申告では「やむを得ない理由」があるときだけ、その理由がなくなった日から2ヶ月の個別延長が認められます。2020年と2021年の違いを、下表にまとめておきます。
2020年の個別延長申請 | 2021年の個別延長申請 |
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申告書の余白に一文書き足すだけ | 別途で上記の申請書を出さないといけない |
上記のように、2020年の延長申請は非常にラクでした。申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と書くだけで、ほとんどの人が審査なしで個別延長を受けられました。
しかし、2021年の延長申請では、その方法は通用しません。さらに、申請書を別途で提出しても、昨年ほど容易に延長は認められないと見るべきでしょう。これについては、国税庁が公開している「よくある質問(FAQ)」に、以下のように書かれています。
引用
(前略)……あらかじめ様々な感染症対策を講じており、……(中略)……こうした対策を通じて確定申告会場に来場される方等が安心して申告できるような環境を整備しており、申告期限内に申告いただけるものと考えています。
簡単に言うと「昨年とは異なり、感染防止対策は万全だった。したがって、今年は昨年のような形での個別延長は実施しない。」ということです。昨年の措置は、対策が万全でなかったがゆえの、極めて例外的なものだったわけです。
災害などによる個別延長の制度は、コロナ以前から存在します。ですから、申請自体は今年も可能です。ただ、税務署側で内容を審査され、場合によっては追加説明を求められることもあります。個別延長の申請は、慎重に行いましょう。
「やむを得ない理由」とは?
国税庁FAQには、新型コロナ関連の「やむを得ない理由」の例が掲載されています。以下は、それをわかりやすく噛み砕いたものです。あくまで例であり「どれか一つでも該当すれば絶対延長できるよ」というリストではありません。
- 依頼していた税理士がコロナに感染した
- 本人や経理責任者などが外国にいて、コロナのせいで帰国できない
- コロナの影響で人手が足らず、通常の業務体制が維持できない
- 本人や経理担当の専従者が、コロナに感染(または濃厚接触)した
- コロナに感染した疑いがあり、外出自粛の要請を受けた
- 新型インフル特措法に基づき、みだりに自宅等から外出しないよう要請された
①~⑤は、ざっくりいえば「身内のだれかが感染・濃厚接触などで動きがとれなかった」という感じです。もちろん、それによって確定申告の作業が “どうしても”進められなかったことが大前提です。
⑥の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」は、緊急事態宣言などの根拠にもなっている法律です。略して「新型インフル特措法」や「特措法」と呼ばれます。これについては、話がややこしいので以下で解説します。
緊急事態宣言の発令地域について
ここでは「緊急事態宣言の発令地域であったことが、やむを得ない理由に該当するか?」を解説します。これについて当メディアで問い合わせたところ、国税局からの回答は「望ましくない」でした。
2014年に公布された新型インフル特措法は、2020年3月に改正され、新型コロナにも適用可能になりました。上記の緊急事態宣言は、この新型インフル特措法に基づいて発令されています。ここで、以下の国税庁FAQを見てみましょう。
引用
(前略)……例えば、次のような理由により、申告書や決算書類などの国税の申告・納付の手続に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、困難な理由がやんだ日から2か月以内の範囲で個別の申請による期限延長(個別延長)が認められることとなります……(中略)……⑥ 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが要請されていること
上記の引用を読むかぎりでは、「緊急事態宣言も“やむを得ない理由”になりうる」と解釈するのが自然です。ここまでの議論をまとめておきましょう。
- 税務署側の感染防止対策は万全で、多くの場合で期限内申告は十分可能だった
- 緊急事態宣言も、期限内申告ができない「やむを得ない理由」になりうる
- ただし、緊急事態宣言を理由に個別延長を申請するのは「望ましくない」
結局のところ、税務署側も「緊急事態宣言は“やむを得ない理由”にはなりません!」とまでは言いきれないのが実情です。説得の余地はあるようですから、しっかりと「理由」を固め、説得材料を揃えてから申請に臨みましょう。
まとめ
確定申告期限の個別延長は「やむを得ない理由」がある場合のみ認められます。延長申請は、確定申告書と一緒に「災害による申告、納付等の期限延長申請書(PDF)」を提出すればOKです。
万が一、申請をしても個別延長が認められなかった場合は、2021年4月16日以降の申告は「期限後申告」として扱われます。状況によってはペナルティが発生しますので、できるだけ早めに申告しましょう。