誤った申告により払いすぎた税金を、申告期限後に返してもらうには「更正の請求」という手続きが必要です。過払いの税金を返してもらうという意味では「還付申告」と似ていますが、両者はそれぞれ別の手続きです。提出する書類なども異なります。
INDEX
目次
更正の請求とは
更正の請求とは、すでに確定した税額について、その減額を申請するための手続きです。主に、確定申告で記載した税額が多すぎた場合などで、これを正すために行います。基本的に、法定申告期限(原則3月15日)の翌日から5年間、手続きが可能です。
更正の請求によって税額が減額され、税金の過払いが明らかになった場合、その差額を還付金として受け取れます。還付金を受け取れるのは、順調にいけば申請日から1~2ヶ月前後です。同時に、利子に相当する還付加算金も受け取れることがあります。
似たような手続きに「還付申告」もありますが、こちらは確定申告をしていない年について行う手続きです。
そのほかに、申告ミスを正すための手続きとして「訂正申告」「修正申告」などがあります。しかし、これらは還付や減額の申請を行うためのものではありません。
請求可能なケース
更正の請求は、計算ミスや法律の規定に従っていなかったことにより、納める税額を多く申告していたときなどに行います。具体的には、以下のようなケースが考えられます。
- 単純な計算ミスや転記ミスがあった
- 所得に含めなくてよい収入を含めていた
- 経費にしてよい支出を計上していなかった
- 適用可能な控除を適用していなかった
納税額を多く申告したときだけでなく、申告した還付金が少なすぎたときや、純損失を少なく申告していたときにも請求が可能です。
とはいえ、義務ではないので、手続きが面倒ならあえて請求しないという選択もできます。書類も色々と用意する必要があるので、その労力に見合う金額かどうか検討しましょう。
更正の請求を行う方法
更正の請求で提出する書類は、以下の通りです。
- 更正の請求書
- 事実を証明する書類(決算書や領収書など)
「更正の請求書」は確定申告書とはまったく別の書類です。書式は国税庁ウェブサイトの該当ページからダウンロードできます。また、更正の請求をする理由を裏付けるため、その「事実を証明する書類」を添付しなければなりません。
更正の請求書
「更正の請求書」の提出方法は、確定申告書と同様、大きくわけて「税務署に行って直接提出」「税務署宛てに郵送」「e-Taxによる電子申告」の3パターンです。e-Taxの場合、「事実を証明する書類」はイメージデータ(PDF形式)で提出すればOKです。
>> 確定申告書の提出方法まとめ【直接提出・郵送・e-Tax】
e-Taxによる更正の請求は「確定申告書等作成コーナー」から
確定申告書等作成コーナーは、各種申告書類を作成できるウェブサイトです。作成した書類は、紙に印刷したり、e-Taxを介して提出したりできます。国税庁が管理・運営しています。
適用できない控除など
確定申告期限を過ぎてからでも、更正の請求が認められれば、大抵のミスはリカバリーできます。しかし、原則として以下の2種類に関しては、いずれも更正の請求では適用要件を満たすことができません。
① 期限内に確定申告をしないと適用されない制度
たとえば、青色申告特別控除で65万円・55万円控除を受けるには、申告期限(原則3月15日)までに確定申告を行う必要があります(期限内申告要件)。期限をすぎると、特別控除は10万円しか受けられません。更正の請求は必ず申告期限後に行うことになるので、新たに65万円・55万円控除を受けることは不可能です。
② 最初の申告でしか適用を受けられない制度
納税者の任意で受ける控除の中には「最初の申告で伝えないとダメだかんね」とされているものがあります(当初申告要件)。たとえば「住宅ローン控除」には、この要件があり、更正の請求によって当初の申告をくつがえすことができません。更正の請求で認められるのは、金額の変更のみです。
ただ、税務署長が「やむを得ない事情があると認めるとき」は、この限りではありません。諦められない金額であれば、税務署に相談してみましょう。
まとめ ‐ 更正の請求の重要ポイント
申告期限(原則3月15日)を過ぎてから税金を還付してもらう場合、すでに確定申告や還付申告が済んでいれば、更正の請求書を提出します。まだ確定申告が済んでいなければ、申告期限にかかわらず還付申告を行いましょう。
更正の請求の重要ポイント
- 納める税額を多く申告していたケースなどで請求ができる
- 手続きは法定申告期限の翌日から基本的に5年間は可能
- 提出書類は「更正の請求書」と「事実を証明する書類」
- 請求が認められたら、すでに納付した金額との差額が還付される
- 更正の請求では適用要件を満たせない制度もある
なお、過去に行った確定申告について、計算間違いなどにより税額が過少であったときは「修正申告」が必要です。修正申告は、主に誤って過少に申告した税額を、正しい金額に増額するための申告手続きです。