個人事業主向けに「未払金(みはらいきん)」の勘定科目について解説します。未払金で記帳すべき場面や仕訳方法を、具体例を用いてわかりやすくまとめました。記事後半では、未払費用や買掛金との違いも説明します。
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目次
未払金とは?
「未払金」は、カンタンに言うと「後払いする金額をいったん記帳しておく際の勘定科目」です。たとえば下記のような場面で使います。
「未払金」で記帳する場面(一例)
- 事業の備品をクレジットカードで購入した
- 事業用車両をローンを組んで購入した
- ウェブ広告を依頼して、掲載後に代金を支払った
- 固定資産税を分割で納付した
原則的には、「取引の発生日」より「実際の支払日」が後になる場合に、ひとまず「未払金」を使って帳簿づけします。とはいえ、期中現金主義で記帳をしていれば、「未払金」を使うのは年をまたぐ取引くらいです。
仕訳例① 事務用品をカードで購入した
たとえば、12月にクレジットカードで事務用品を購入し、その代金が翌年1月に引き落とされるとします。この場合、まず下記のように帳簿づけをしましょう。
1. 決済日の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2021年12月27日 | 消耗品費 3,000 | 未払金 3,000 |
プリンターインク 〇〇カード |
まずはカードを切った日付で、上記のように経費計上します。ただ、まだ実際にお金が動いたわけではないので、貸方は「未払金」としておきます。
続いて、引き落としのタイミングで次のように記帳します。
2. 引き落とし日の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2022年1月20日 | 未払金 3,000 | 普通預金 3,000 |
〇〇カード引落 (12月利用分) |
引き落とされた金額を「普通預金」から差し引きます。この仕訳によって「未払金」という負債が解消されます。
なお、カードの引き落としが年をまたがない場合は「未払金」を使わず、引き落とし日にまとめて記帳しても問題ありません(期中現金主義)。
仕訳例② 広告費用を掲載後に支払った
たとえば、12月にネット広告を掲載し、12月分の掲載費用を翌年1月に口座振替で支払うとします。この場合は、以下のような流れで記帳をします。
1. 掲載日の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2021年12月1日 | 広告宣伝費 40,000 | 未払金 40,000 |
インターネット広告 (12月分) |
広告の掲載がスタートしたら、その費用を「広告宣伝費」として経費計上します。ただし、まだ代金は支払っていないので、貸方は「未払金」です。
そして、実際に代金を支払ったら、次のように記帳します。
2. 支払日の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2022年1月10日 | 未払金 40,000 | 普通預金 40,000 |
インターネット広告 (12月分 支払) |
なお、前述の仕訳例①と同様に、こちらも年をまたがない場合は「未払金」を使わず、支払日にまとめて記帳しても問題ありません。
混同しやすい勘定科目 – 未払費用・買掛金
「未払金」と混同しやすい勘定科目として、よく「未払費用」と「買掛金」が挙げられます。結論から言うと、個人事業ならこれらを厳密に使い分ける必要はありません。
参考までに、主に法人企業が参照する「企業会計原則」では、それぞれ下記のように定義されています。
企業会計原則における定義
未払費用 |
「継続的なサービス」に対して、まだ支払っていない代金 事務所の家賃・水道代など |
---|---|
買掛金 |
売上に直接つながる費用のうち、まだ支払っていない代金 商品の仕入にかかった費用など |
未払金と未払費用
年をまたいで提供を受ける「継続的なサービス」を、貸借対照表では「未払費用」として扱います。とはいえ「未払金」と「未払費用」は、どちらを使っても税額に影響はないので、個人事業では厳密に区別しなくてもよいです。
未払金と買掛金
たとえば、商品や原材料の仕入代金を後払いする際は「未払金」でなく「買掛金」の科目で記帳するのが一般的です。とはいえこちらも、どちらを使っても税額に影響はありません。
まとめ
- 「未払金」は、商品やサービスの代金を後払いする際に使う勘定科目
- 貸借対照表では「負債」に含まれる
- 消費税区分は「不課税」
- 年をまたがない取引では「未払金」を使わなくてもOK(期中現金主義)
「取引の発生日」より「実際の支払日」が後になる場合、まず発生日の日付で「未払金」という負債を計上します。そして、実際にお金が動いたタイミングで、この「未払金」を消し込みます。
ただし「取引の発生日」から「実際の支払日」までの間に年をまたがない場合、「未払金」を使った処理は省略できます(期中現金主義)。この場合、実際にお金が動いたタイミングで経費を計上すればOKです。