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棚卸資産とは?価値の評価・仕訳例・決算書の記入例など

更新日: 2021/07/08
棚卸資産とは?価値の評価・仕訳例・決算書の記入例など

仕入れや原材料にかかった費用は、その商品や製品が売れ残った場合、必要経費ではなく「棚卸資産」という資産に計上します。商品を仕入れてお店で売ったり、製品を作ったりしている個人事業主は、「棚卸資産」についてよく理解しておきましょう。

INDEX

目次

    棚卸資産とは?

    棚卸資産 - 会計上の分類

    棚卸(たなおろし)資産とは、ざっくりいうと「在庫」のことです。たとえば、売れる前の商品や、加工前の材料を指します。上図のように、会計上の分類では流動資産に含まれます。以下は、棚卸資産を仕訳する際の勘定科目です。

    棚卸資産の科目

    商品 販売する目的で買い入れ、まだ販売されていないもの
    原材料 製品を作るための材料
    仕掛品 作りかけの製品で、まだ販売に適さないもの
    半製品 完成品ではないが、その状態でも貯蔵・販売可能なもの
    製品 製造された完成品で、まだ販売されていないもの
    貯蔵品 事務用の消耗品などで、まだ消費されていないもの

    上記の科目は、個人事業では基本的に年1回の「決算」でのみ使用します。なので、普段の帳簿づけでは意識しなくてOKです。決算とは、ごく簡単にいうと、1年間の所得を計算するための作業です。

    仕入れた商品が売れ残った場合は、その数量や金額をカウントし、棚卸資産に計上します。決算で行うこのような作業を、とくに「棚卸し(たなおろし)」といいます。必要経費を正しく精算するためには、欠かせない作業です。

    そもそも「棚卸し」とは?

    「棚卸し」というのは、平たく言えば、決算書を作成するための在庫管理のことです。どれくらい在庫が残っているのか? 保存状態はどうか? 帳簿とズレがないか?などをチェックします。

    棚卸し~棚卸表作成の流れ

    個人事業の棚卸しは、毎年12月31日に行うのが原則です。といっても、きちんと12月31日時点の数字で記録できるなら、実際の作業日が少しくらい前後しても問題ありません。

    引用

    棚卸しは、年末(12月31日)にしなければなりません。ただし、多忙のため年末に棚卸しができないような場合には、年末から多少前後した日に棚卸しをしても差し支えありません。この場合には、例えば、次の計算例のように12月31日と棚卸日の間の売上げ、仕入れなどから12月31日現在の棚卸高を計算するとともに、その計算方法を明らかにしておく必要があります。

    決算の手引き「2 棚卸しの時期」p.1- 国税庁

    棚卸しで作成した「原始記録」や「棚卸表」は、確定申告で提出する必要はありません。ただし、一定期間保存する必要があります。個人事業主の場合は、白色申告なら5年間、青色申告なら7年間です。

    棚卸表の書き方

    棚卸表のフォーマットと書き方

    決算の手引き「5 棚卸表の作成」p.2 – 国税庁

    フォーマットは自由ですが、上図のように、種類ごとに数量や金額を記載しましょう。ただし、仕入れ値をそのまま書いてはいけません。法律で決められたルールにしたがって、棚卸資産の価値を「評価」する必要があります。

    資産価値の評価

    年末に棚卸しをする際、在庫の価値を評価する必要があります。個人事業主は、原則として「最終仕入原価法」で棚卸資産の評価を行います。それ以外の方法を選択することも可能ですが、事前に税務署へ申請する必要があります。

    棚卸資産の評価方法 - 原価法と低価法

    「最終仕入原価法」は計算が非常に簡単で、しかも無難な評価方法です。無理に他の方法を選ぶ必要はありません。本記事でも、この方法を前提に説明を進めていきます。

    評価方法の変更手続き

    もし他の方法に変更したいなら「所得税の棚卸資産の評価方法の変更承認申請書」という書類に必要事項を記入し、その年の3月15日までに提出しましょう。当年3月15日までに申請すれば、翌年に行う当年分の確定申告から変更が適用されます。

    仕訳例① 仕入れと販売

    「仕入れと販売」「年末の棚卸し」の2段階に分けて、仕訳方法を説明していきます。まずは「仕入れと販売」からです。

    仕入れ~販売の流れ

    仕入れ~販売の例

    上図のように、Tシャツを8月に1,200円で5枚、同じTシャツを9月に1,000円で2枚仕入れたとします。合わせて7枚の仕入れです。これらが10月に3,000円で3枚売れた場合、仕訳は以下のように行います。

    日付 借方 貸方 摘要
    8月10日 仕入れ 6,000 現金 6,000 Tシャツの仕入れ


    9月20日 仕入れ 2,000 現金 2,000 Tシャツの仕入れ


    10月15日 現金 9,000 売上 9,000 Tシャツの販売

    仕訳例② 年末の棚卸し

    先の例では、合計7枚のTシャツを仕入れて3枚売れたので、4枚のTシャツが売れ残りました。そのまま12月31日をむかえた場合、売れ残ったTシャツを棚卸資産に計上する必要があります。

    売れ残った在庫の棚卸し(決算整理仕訳)

    棚卸しの考え方 - 最終仕入原価法の例

    このTシャツを最後に仕入れたのが、上図の9月とします。その場合、単価1,000円で在庫を評価すればよいわけです。8月には同じTシャツを1,500円の単価で仕入れていますが、最後に仕入れた1,000円の単価で評価します(最終仕入原価法)。

    決算では、以下のように記帳します(決算整理仕訳)。売れ残った分は、その年の「仕入れ」として必要経費に計上できないので、年末時点で「商品」という資産の勘定科目へと振り替えるわけです。

    日付 借方 貸方 摘要
    12月31日 商品
    4,000
    期末商品棚卸高4,000 Tシャツ
    期末棚卸し

    ※「期末商品棚卸高」や「期首商品棚卸高」は、「仕入れ」の科目を用いてもよい

    年が開けたら、1月1日の日付で必要経費に戻しておきます。「期首商品棚卸高」か「仕入れ」の勘定科目で記帳しておきましょう。

    日付 借方 貸方 摘要
    1月1日 期首商品棚卸高4,000 商品
    4,000
    Tシャツ
    在庫の繰り越し

    ここまで説明した一連の仕訳を、決算書へ反映させると次のようになります。

    決算書の記入例

    1年分の仕訳がすべて済んだら、その内容を決算書(収支内訳書か青色申告決算書)へ反映させます。下図は青色申告決算書の1ページ目を抜き出して、簡略化したイメージです。

    棚卸資産 - 損益計算書への記入例

    また、青色申告決算書の4ページ目(貸借対照表)も同様に図示します。なお、白色申告者や、10万円の特別控除でよい青色申告者は、貸借対照表を作成する必要はありません。

    棚卸資産 - 貸借対照表への記入例

    貸借対照表に記入するのは、基本的に「資産・負債・資本」だけです。したがって、「収益・費用」のカテゴリに属する「売上」や「仕入れ」の金額は記入しません。
    >> 青色申告の大分類「資産・負債・資本・収益・費用」

    まとめ

    仕入れたものが年末まで売れ残った場合は、その仕入れ値を必要経費に計上できません。ですから、12月31日の日付で「棚卸資産」に含まれる科目(「商品」など)に振り替えます。売れ残ったものは、年末時点でいったん資産に計上するわけです。

    棚卸資産の重要ポイント

    • 商品などの在庫を「棚卸資産」という
    • 「棚卸し」とは、棚卸資産の数や状態をチェックすること
    • 個人事業の棚卸しは、原則として12月31日に行う
    • 棚卸資産は、最後の仕入れ値で評価するのが原則(最終仕入原価法)
    • 当年の棚卸資産は、翌年の必要経費に繰り越す
    • 翌年にまた売れ残ったら、決算で棚卸資産に振り替える

    評価額さえ正しく計算できれば、決算書の作成はカンタンです。書類作成の要点については、以下の表をごらんください。

    棚卸資産に関する書類

    作成上の要点 取り扱い
    棚卸表 棚卸資産の価値を評価して、自作の表に整理する
    例)「最終仕入原価法」で評価する
    原始記録*とともに
    5年 or 7年 保存
    帳簿 決算整理仕訳により資産計上する
    例)「商品」の科目で資産計上する
    決算書 棚卸資産の評価額を記入し、必要経費から除く
    例)損益計算書では「期末商品棚卸高」に記入する
      貸借対照表では「棚卸資産」に記入する
    確定申告書とともに提出

    * 帳簿においては領収書など、棚卸表においては棚卸し時のメモなどを指す

    ちなみに、使いきれなかった消耗品が、例年になく大量に余ってしまった場合は「貯蔵品」という科目で処理するケースもあります。これも棚卸資産の一種ですが、商品在庫ほど複雑な処理は必要ありません。