外注工賃(外注費・業務委託費)とは?

更新日: 2020/09/15
外注工賃(外注費・業務委託費)とは?

個人事業の「外注工賃」についてまとめました。外注や業務委託など、外部の人に支払った報酬は、基本的に「外注工賃」の勘定科目で経費処理ができます。

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目次

    外注工賃とは?

    「外注工賃」とは、外部の業者などに仕事を依頼したときにかかる費用の勘定科目。外注費や業務委託費と呼ばれることもあります。ほとんどの場合、消費税区分は課税です。

    外注工賃の主な具体例

    • デザイナーにwebデザインを依頼した際にかかるデザイン料
    • プログラミングを業務委託した際の制作費
    • 清掃業者に事務所の清掃を依頼した際に支払う費用
    • 営業の代行を委託している外注先へ支払う費用
    • パソコンのデータ整理など、事務代行を外部に業務委託した際に支払う費用

    外部の人へ仕事を依頼したときに支払う報酬は、ほとんどの場合「外注工賃」で処理できます。なお例外として、税理士や弁護士などへ支払う報酬は、「支払手数料」や「支払報酬」の勘定科目で処理します。

    外注工賃の源泉徴収 – 従業員を雇っていると必要なケースも

    ​事業主が従業員を雇用して「給与」を支払う場合、給与所得から源泉徴収を行わなければなりません。また源泉徴収が義務付けられている事業主を「源泉徴収義務者」といいます。

    源泉徴収義務者にあてはまる主な個人事業主

    • 従業員を雇用していて、給与などの支払いがある
    • 専従者(家族従業員)に対して給与などの支払いがある

    ひとりで仕事をする個人事業主であれば、源泉徴収をする必要はありません。また源泉徴収義務者であっても、依頼先が法人の場合は、源泉徴収はしなくてOKです。

    ひとりで仕事をする個人事業主は源泉徴収義務なし

    源泉徴収が必要な場合って?

    源泉徴収義務者が、フリーランスなど他の個人事業主に仕事を依頼するとき、その仕事の報酬が「源泉徴収が必要」と定められているものであれば、源泉徴収の義務が発生します。報酬から10.21%の源泉徴収分を差し引いた金額を、外注先に支払いましょう。

    従業員を雇用している個人事業主の源泉徴収義務の対象

    源泉徴収が必要となる主な報酬

    • 原稿料や講演料など
    • デザイン料やイラスト料など
    • 翻訳や通訳の報酬
    • 弁護士や公認会計士、司法書士などに支払う報酬

    たとえば飲食店を経営していて、従業員を雇っている個人事業主が、フリーランスなどの個人事業主にチラシの制作を依頼した場合は、報酬から源泉徴収をする必要があります。

    仕訳例① ひとりで仕事をする個人事業主の場合

    ひとりで仕事をする個人事業主が、法人に外注したデザイン料30万円を銀行振込で支払った場合、記帳例は以下のようになります。

    複式簿記の記帳例

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月10日 外注工賃 300,000 普通預金 300,000 デザイン料

    前提として、法人への支払いには源泉徴収が必要ありません。また、ひとりで仕事をする個人事業主は、そもそも源泉徴収義務者ではありません。そのため、かかった費用を全額「外注工賃」で処理してOKです。

    なお確定申告の際に、青色申告65万円控除で節税を狙うなら、「複式簿記」での仕訳はマストです。ちなみに「単式簿記」の場合は以下のように帳簿づけします。

    単式簿記の記帳例

    日付 外注工賃 摘要
    20XX年5月10日 300,000 デザイン料

    仕訳例② 従業員を雇っている個人事業主の場合

    源泉徴収義務者(従業員を雇っている個人事業主)が、個人事業主に依頼したデザイン料30万円を、銀行振込で支払った場合に、記帳例は以下のようになります。なお30万円の報酬から、源泉徴収をする場合です。

    この場合、源泉徴収義務者から個人事業主へデザイン料を支払うので、10.21%の源泉徴収をする必要があります。源泉徴収分の金額は「預り金」として帳簿づけしましょう。

    複式簿記の記帳例

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月10日 外注工賃 300,000 普通預金 269,370 デザイン料
    預り金 30,630 源泉徴収

    ・源泉徴収する金額:300,000 × 0.1021 = 30,630(円)

    源泉徴収義務者が、外注先へ実際に支払う金額は、30万円から源泉徴収分の30,630円を差し引いた金額です。

    ・実際に外注先へ振り込む金額:300,000 - 30,630 = 269,370(円)

    外注工賃の消費税区分

    免税事業者(消費税を納めなくて良い事業主)にはあまり関係ない内容なので、読み飛ばしてもらって構いません。外注工賃の消費税区分は、基本的に「課税」です。

    ただし、例えば海外在住のデザイナーにインターネット経由で仕事を発注した場合、その費用に消費税は課されません。この場合は、消費税区分「不課税」です。
    >> 消費税の課税・非課税って何? – 個人事業の消費税入門

    • デザイナーが国内在住の場合:「課税」
    • デザイナーが海外在住の場合:「不課税」

    ちなみに本例は、あくまで「制作された著作物の譲渡」に付随してインターネットが利用されているものなので、いわゆる「電気通信利用役務の提供」には該当しません。

    製造経費の外注工賃とは? – 青色申告決算書の記入について

    白色申告者は、こちらの内容は関係ないので読み飛ばして構いません。青色申告決算書には、1ページ目と4ページ目に「外注工賃」の記入欄があります。

    1ページ目 4ページ目
    令和元年分以降用 青色申告決算書「外注工費」記入欄 令和元年分以降用 青色申告決算書4ページ目「外注工費」記入欄

    1ページ目の「経費」の記入欄(①)とは異なり、「製造原価の計算」(②)は、製造業を営む個人事業主だけが記入する項目です。どちらのページにも「外注工賃」の記入欄があるのは同じですが、それぞれ記入する内容が異なります。

    なおここでの「製造」は、「原材料などを加工して、なにかしら製品を作っていること」を指します。工場などで製品を生産するのはもちろん、ハンドメイド雑貨の製作なども「製造」に含まれます。

    「製造原価の計算」には、製造に関わる外注工賃を記入

    令和元年分以降用 青色申告決算書4ページ目「外注工費」記入欄

    製造経費(=製造にかかった経費)分の外注工賃は、青色申告決算書の4ページ目「製造原価の計算」(②)内に記入します。

    たとえば、工場を所有していて機械部品の生産している事業主が、金属加工の工程のみを外注した場合、この分の「外注工賃」は製造経費なので、製造原価の計算に含まれます。

    製造に関係ない「外注工賃」は1ページ目の「経費」に記入

    令和元年分以降用 青色申告決算書「外注工費」記入欄

    製造とは関係ない外注工賃は、青色申告決算書の1ページ目「経費」(①)内に記入していきます。たとえば、製造業の事業主が事務所の清掃を外注したときの「外注工賃」は、製造とは関係ない経費なので、1ページ目の「経費」に含まれます。

    外注工賃と給料賃金の違い

    「外注工賃」と間違えやすい勘定科目に「給料賃金(給与賃金)」があり、主に以下の点でそれぞれ異なります。

    外注工賃と給料賃金の比較

    外注工賃 給料賃金
    支払先 外部の個人事業主・法人 パート・アルバイトを含む従業員
    源泉徴収 基本的に不要
    (源泉徴収義務者は必要な場合も)
    必要
    消費税区分 課税 不課税
    社会保険料 負担なし 負担あり
    (事業主が半額負担)

    「給料賃金」の場合、源泉徴収や社会保険料の負担が必要となります。また消費税区分は不課税となるので、消費税額から仕入れ税額として控除することもできません。
    >> 個人事業の消費税を分かりやすく!

    外注工賃と給料賃金の判定基準

    「外注工賃」と「給料賃金」の判定基準は以下の通り。ざっくり「契約形態に関して」と「業務実態に関して」に分けられます。

    契約形態に関して ①「請負契約」「雇用契約」どちらの契約形態であるか
    業務実態に関して ②その仕事が他の人でも代替可能か
    ③仕事中に事業主の指揮監督を受けるか
    ④引渡し前の完成品が万が一滅失した場合に報酬が発生するか
    ⑤業務で必要な材料などの提供があるか

    (国税庁 法令解釈通達「第1節 個人事業者の納税義務」の一部を簡略化)

    ①「請負契約」「雇用契約」どちらの契約形態であるか

    契約形態が、請負契約であれば「外注工賃」、雇用契約であれば「給料賃金」となります。
    「請負契約」では発注側が受注側に対して、完成物と引き換えに報酬を支払います。一方で「雇用契約」では、事業主が従業員に、拘束した労働時間に対する報酬を時給制や日給制などで支払います。

    ② その仕事が他の人でも代替可能か

    その仕事が他人でも代替可能で、契約者以外が仕事を行っても、その完成物には対価が支払われるなら「外注工賃」、仕事の代替が認められないなら「給料賃金」です。

    ③ 仕事中に事業主の指揮監督を受けるか

    仕事中に、勤務時間の管理や作業方法の指示など、事業主からの指揮監督を受ける場合は「給料賃金」、このような拘束をまったく受けない場合は「外注工賃」です。

    ④ 引渡し前の完成品が万が一失くなった場合に報酬が発生するか

    引渡し前の完成品が万が一失くなった場合に、報酬が発生するなら「給与賃金」、発生しないなら「外注工賃」です。「給料賃金」は、労働時間に対して報酬が支払われますが、「外注工賃」は完成物を渡さなければ報酬がもらえません。

    ⑤ 業務で必要な材料などの提供があるか

    その仕事をするうえで必要な材料などについて、経費が事業主負担であれば「給料賃金」、受注側の負担であれば「外注工賃」です。

    まとめ – 外注工賃の重要ポイント

    「外注工賃」とは、外部の業者などに仕事を依頼したときにかかる費用のこと。外注・業務委託・アウトソーシングなど、外部の人へ仕事を依頼したときに相手に支払う報酬は、基本的にこの勘定科目で処理します(例外として税理士などへの報酬は「支払手数料」で処理)。

    外注工賃のポイント

    • 基本的に消費税区分は「課税」
    • ひとりで事業を行う個人事業主は源泉徴収は不要
    • 源泉徴収義務者でも、法人への依頼時は源泉徴収は不要
    • 源泉徴収義務者が個人へ仕事を依頼する場合は、源泉徴収が必要なケースも
    • 「外注工賃」と「給料賃金」は混同しやすいので判別に注意
    • 「外注工賃」は、発注先に対して出来高制で支払う報酬
    • 「給与賃金」は、従業員に対して時給制や日給制で支払う報酬

    源泉徴収が必要な場合

    従業員を雇用している個人事業主の源泉徴収

    源泉徴収義務者がフリーランスなどに仕事を依頼する場合、相手に支払う報酬が「源泉徴収が必要な報酬」にあてはまるときに、源泉徴収が必要です。

    外注工賃と給料賃金

    「外注工賃」として処理したものが、税務調査で認められずに「給料賃金」とされると、加算税や延滞税などが発生することも。「外注工賃」と「給料賃金」の判定は慎重に行いましょう。