個人事業主の研修費とは?具体例・消費税区分・経費にできないケース

更新日: 2025/09/25
個人事業主の研修費とは?具体例・消費税区分・経費にできないケース

個人事業主・フリーランス向けに、「研修費」の勘定科目についてまとめました。経費計上が認められないケースについても詳しく解説します。

目次

    個人事業主の研修費とは?

    任意で追加する勘定科目の例 - 収支内訳書・青色申告決算書にない科目

    「研修費」は、一般的によく使われる必要経費の勘定科目です。もともと決算書には記載がありませんが、任意で追加して使用できます。

    「研修費」の具体例

    • セミナーや研究会*などへの参加費
    • ビジネス本などの購入代金
    • 通信教育の受講料
    • 資格試験の受験料
    • 参考書や問題集などの購入代金

    * 20万円以上の「入会金」などは、繰延資産として償却する場合がある

    事業主本人の研修だけでなく、従業員や事業専従者の研修にかかった費用も、同様に「研修費」として経費計上できます。

    研修費の消費税区分

    研修費の消費税区分は、基本的に「課税」です。ただし、大学で聴講生として授業を受けた際の費用など、学校教育に関わる費用は「非課税」の場合もあります。(消費税の納付義務がない免税事業者には関係ない)

    無理に「研修費」の科目を使う必要はない

    書籍や教材の購入費用は「消耗品費」の科目で処理できます。また、セミナーや通信教育の費用は「支払手数料」で記帳してもOKです。「支払手数料」は任意で追加する科目ですが、「研修費」よりも使えるシーンが多いのでおすすめです。

    研修費の仕訳方法

    仕訳例① 基本的な記帳方法

    例えば、セミナーの参加費(15,000円)を「研修費」の科目で計上する場合は、以下のように記帳します。

    複式簿記の記帳例

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年7月4日 研修費 15,000 現金 15,000 セミナー参加費

    >> 複式簿記の記帳方法をおさらい

    会計ソフトの記帳例

    研修費 - 会計ソフトの記帳例

    画面は「やよいの白色申告 オンライン」のもの

    仕訳例② 継続的なサービスへの支払い

    通信教育の受講料などを前払いする際は、会計処理の方法に注意しましょう。受講期間が1年を超える場合は、原則として「当年中の受講料」と「翌年以降の受講料」を区別して処理する必要があります。

    受講期間が1年以内 支払時に全額を経費計上してOK(短期前払費用の特例)
    前述の仕訳例①と同様に処理すればよい
    受講期間が1年超 支払い時には経費計上しないのが基本
    支払時・年末・年始にそれぞれ記帳を行う

    受講期間が1年を超える場合の仕訳例

    たとえば、18ヶ月分の受講料(18万円)を前払いしたら、以下のような流れで記帳しましょう。

    日付 借方 貸方 摘要
    2021年2月1日 前払費用 180,000 普通預金 180,000 通信講座 受講料
    ・
    ・
    ・
    2021年12月31日 研修費 110,000 前払費用 110,000 通信講座 受講料
    (11ヶ月分)
    ・
    ・
    ・
    2022年12月31日 研修費 70,000 前払費用 70,000 通信講座 受講料
    (7ヶ月分)

    >>「前払費用」を使った会計処理について詳しく

    「前払費用」は資産の勘定科目であり、支払い時には経費計上したことになりません。年末に「前払費用」から「研修費」へ振り替えることによって、その分が経費計上されます。

    経費にできない支払い【過去の判例付き】

    もちろん、事業主の勉強に関わる支出を、すべて経費計上できるわけではありません。国税不服審判所の裁決事例をみると、「経費にできる・できない」を判断する際には、たとえば下記のような点に気をつけるべきだと分かります。

    • 業務に直接必要な支払いといえるか
    • 新しい地位や職業に繋がらないか

    事業に直接必要な支払いといえるか

    その支払いが、事業を営む上で直接必要かどうか検討しましょう。下記のように、歯科医師の語学修得費用について、「業務に不可欠な能力とは言えないから経費にしちゃダメですよ」と裁決された事例があります。

    引用

    …(前略)…英会話能力の保持のために継続して研修を受けることが歯科診療の業務の遂行上不可欠なものとまでは認められないし…(中略)…平成8年から平成10年までの間、診療の上で英会話の能力を必要とする外国人患者の受診は平成9年の1名であり…(中略)…請求人の歯科診療の業務の遂行上直接必要な費用とはいいがたい。…(後略)…

    平13.3.30裁決 – 国税不服審判所

    新しい地位や職業に繋がらないか

    新しい地位や職業につながるような資格の取得費用が、必要経費として認められなかった事例もあります。下記の引用は、宅建業を営む事業主に対して「宅建士の資格取得にかかった費用は経費計上できませんよ」と裁決された事例です。

    引用

    …(前略)…宅地建物取引主任者資格は…(中略)…特定の職業に従事することができる資格であることからすると、資格取得費は、新しい地位や職業を獲得するための教育費であり…(中略)…事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない。…(後略)…

    平27.4.14裁決 – 国税不服審判所

    この他に「柔道整復師」の資格取得費用が、必要経費と認められなかった事例もあります(平29.12.5裁決)。ただ、明確な基準が存在するわけではないので、判断に迷うときは税務署などで相談することをおすすめします。

    研修費に関するQ&A

    研修費の消費税区分は?
    研修費の消費税区分について、セミナーや研修の受講料は基本的に「課税」です。ただ、大学で聴講生として授業を受ける際など、学校教育に関わる費用は「非課税」の場合もあります。
    研修費と「会議費」の違いは?
    一般的に、研修費は学習や教育目的の費用で、会議費は打ち合わせや会食にかかる費用です。どちらも決算書には載っていない勘定科目ですが、必要に応じて追加できます。
    オンラインセミナーの受講料も研修費になる?
    オンラインセミナー(ウェビナー)の受講料も、業務に必要であれば「研修費」として経費計上できます。なお、オンラインサロンの参加費用などは「諸会費」の勘定科目を使う場合もあります。
    書籍代は研修費に含められる?
    事業に関わる書籍代は「新聞図書費」や「消耗品費」で処理するのが一般的です。ただし、セミナーの教材等なら「研修費」に含めても差し支えありません。

    まとめ

    研修費の科目を作る前に、まず他の科目で記帳できないかを検討しましょう。たとえば、教材や書籍の購入費用は「消耗品費」で、セミナー参加費や通信教育の受講料は「支払手数料」でも記帳できます。

    • 研修費には、事業に直接必要な技術や知識を習得するための費用が該当する
    • 消費税区分は基本的に「課税」
    • 通信教育などの受講料は、受講期間が1年以内なら支払時に経費計上してOK
    • 受講期間が1年超の場合は、当年分の経費と翌年分の経費に分けて計上する
    • 資格の性質によっては、取得費用を経費に計上できない場合もある

    「研修費」に類似した科目名には「教育費・教育研修費・教育訓練費・セミナー費」などがあります。名称が違っても、基本的な考え方は同じです。

    なお、開業前にかかった研修費用(起業セミナーなど)は、開業準備のための支出として「開業費」に計上できます。「開業費」は資産の勘定科目で、任意の年に必要経費にカウントできます(任意償却)。

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