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目次
「接待交際費」とは
接待交際費とは、事業を円滑に行うために取引先と食事をしたり、お歳暮を贈ったりした際の費用などを指します。消費税区分は基本的に「課税」ですが、結婚式のお祝い金など「不課税」のケースもあります(詳しくは後述)。
主な接待交際費
取引先を送迎したときのタクシー代や、会食に向かうときの電車賃なども「接待交際費」として計上できます。ちなみに、取引先になる可能性が高い相手との交際費用も「接待交際費」でOK。大切なのは「事業で収入を得るために必要な支出である」かどうかです。
新規の取引先を紹介してもらった場合の手数料
「取引先のAさんから新たな取引先Bさんを紹介してもらったので、Aさんに紹介手数料として謝礼金を渡す」という場合、この謝礼金は「接待交際費」として処理できます。お金ではなく、商品券や物品で謝礼を渡す場合も同様です。
仕訳例① 接待交際費の記帳方法
接待交際費は、税務署の厳しいチェックが入る勘定科目だといわれています。税務調査に備えて「誰と」「どんな目的で」使った費用なのかを記録しておきましょう。領収書などの余白スペースや裏面に書き込んでおくか、帳簿の「摘要」欄に入力しておけば良いです。
たとえば「取引先であるA社のBさんと会食をした」ときは、下記のように記帳します。
複式簿記の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月20日 | 接待交際費 15,000 | 現金 15,000 | A社 Bさん 会食 |
確定申告の際に青色申告65万円・55万円控除をねらう場合は、上記の方法で帳簿づけします。ちなみに「単式簿記」の場合は、下記のとおりです。
単式簿記の記帳例
日付 | 接待交際費 | 摘要 |
---|---|---|
20XX年5月20日 | 15,000 | A社 Bさん 会食 |
仕訳例② 慶弔見舞金などの記帳方法 – 接待交際費の消費税区分
基本的に、接待交際費の消費税区分は「課税」です。ただし、結婚式のお祝い金など、取引先の方へ現金を贈るときの消費税区分は「不課税」です。
>> 消費税区分の詳細について
結婚式のお祝い金や葬式の香典などの「現金」を贈る場合
消費税は事業として対価を得る取引にしか課税されません。結婚式のお祝い金や葬式の香典といった現金は、対価性がないため「不課税」の取引とされます。
たとえば「取引先であるA社のBさんの結婚式に出席してご祝儀3万円を贈った」ときは、以下のように仕訳をします。このとき、招待状の保管と出金伝票の作成を忘れないようにしましょう(詳しくは後述)。
結婚したA社のBさんにご祝儀3万円を贈ったときの記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月15日 | 接待交際費 30,000 | 現金 30,000 | A社 Bさん ご祝儀 |
交際費における個人事業と法人の違い
取引先と会食した際の飲食代などを、個人事業主は勘定科目「接待交際費」で仕訳をしますが、法人の場合は「交際費」として扱います。個人事業の場合、必要経費に計上できる金額に上限はないですが、法人の場合は損金として算入できる金額に上限が定められています。
接待交際費(個人事業の場合) | 交際費(法人の場合) |
---|---|
必要経費として扱える金額に上限ナシ | 損金として扱える金額に上限アリ |
ざっくりいうと、「損金」とは法人税を計算する際に必要なもので、この金額が大きいほど税金を減らすことができます。ここでは、個人事業にとっての「必要経費」に近いものと捉えておけば十分です。
上記のように、法人の場合は損金として計上できる交際費に上限があります。なので、法人は「交際費」とそれ以外の勘定科目(「会議費」など)ときっちり区別して仕訳をする必要があるわけです。一方、個人事業の場合は上限が定められていないので、法人ほどほかの経費との区別を心配する必要はありません。
接待交際費と他の科目の使い分け – 詳しい考え方
接待交際費の上限は? – 個人事業主の平均的な目安
個人事業には、経費として計上できる「接待交際費」の上限は定められていないですが、内容が不透明な費用や、明らかに売上とそぐわない金額は認められません。接待交際費が膨らんでしまった場合は、新たに「会議費」の勘定科目を追加し、法人と同じように仕訳をしてOKです。
接待交際費の目安
接待交際費の上限がないとはいえ、平均的な金額はいくらなのか気になりますよね。事業内容や規模によって異なる数字なので一概にはいえませんが、参考までに国税庁が毎年発表している「会社標本調査」を見てみます。
「会社標本調査」はあくまでも法人の統計なので、個人事業主にそのまま当てはめられる数字ではありません。ただ、この金額がひとつの参考値にはなるでしょう。
平成28年度分「会社標本調査」 調査結果より一部抜粋
平成30年3月に発表された平成28年度のデータを見ると、中小企業(資本金1,000万円以下の法人)は、年間で一社あたり85万円ほど交際費を支出していることがわかります。一ヶ月あたりに換算すると、およそ7万円です。
領収書が出ない場合は「出金伝票」を活用
飲食代を取引先と割り勘したときや、結婚祝いや香典などの慶弔見舞金など、領収書が出ない場合は、「出金伝票」に詳細(日付や金額など)を自身で記入しておきます。これが領収書の代わりになりますが、自分で記入するものなので多用はできません。
「出金伝票」は、文具屋や100円ショップなどで販売しています。購入しておけば、電車などの交通費や、自販機で飲み物を買ったお金を記帳する際にも活躍します。
たとえば、取引先との飲食代を割り勘した場合は、こちらが支払った金額を出金伝票に記入しておきます。このとき、「誰と」食事をしたのか、きちんと記しておくとよいです。
出金伝票の記入例(割り勘の場合)
取引先の結婚式や葬式など領収書が出ない費用も、同様に「出金伝票」を使います。この場合、招待状や案内状を保管しておくかコピーをとっておくと、税務調査が入った際に証拠として提示できるので安心です。
間違いやすい勘定科目 – 福利厚生費
「接待交際費」と混同しやすい勘定科目のひとつに「福利厚生費」があります。福利厚生費は、従業員の労働意欲の向上や、労働環境を改善する目的で使う費用を指します。従業員を雇っていない個人事業主には、関係のない勘定科目です。
従業員のために使った費用が福利厚生費として認められるには、下記の要件を満たしている必要があります。
- 全従業員を対象としている平等な費用であること
- 社会通念上、認められる範囲内の金額であること
たとえば結婚式のお祝い金やお葬式の香典などは、相手との関係性で勘定科目が変わってきます。取引先の場合は「接待交際費」に、従業員の場合は「福利厚生費」として計上します。
接待交際費と他の科目の使い分けについて詳しく
まとめ
取引先との飲食代やゴルフ代など、交際にかかった費用は「接待交際費」として経費に計上できます。また、その場所へ送迎したときのタクシー代なども、同じく接待交際費として処理が可能です。
接待交際費のポイント
- 事業を円滑に行うための接待や交際にかかった費用を指す
- 個人事業の場合、「接待交際費」として経費計上できる金額に上限はない
- 「誰と」「どんな目的で」使った費用なのか、摘要欄などに記録しておくと◎
- 領収書の余白や裏面に、費用の目的などを記入しておく形でも良い
- 取引先との飲食代なら割り勘をした場合でも計上できる
- 領収書がもらえない場合は「出金伝票」の記入をしておく
- 結婚式や葬式などに出席した場合は、控えをとっておく
ちなみに消費税区分は基本的に「課税」ですが、お祝い金など対価性がないものを取引先に贈答する場合は「不課税」です。最後に「接待交際費」の具体的な例もおさらいしておきます。
接待交際費の具体例
- 取引先との飲食代
- 取引先との交流にかかった費用(ゴルフや旅行など)
- 取引先を送迎した際のタクシー代
- 得意先に贈ったお中元やお歳暮
- 事業で関わりのある人が結婚した際のお祝い金
- 事業でお世話になっていた人の葬式に参列した際の香典
- 既存の取引先に新規の取引先を紹介してもらった際の紹介手数料
現段階では取引先ではなかったとしても、取引先になる可能性が高いなら接待交際費にとして計上してOK。重要なのは、「事業を円滑に行うための接待や交際にかかった費用」かどうかということです。