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個人事業主ならカンタン!
「接待交際費」との使い分けに迷う勘定科目として、よく「会議費・広告宣伝費・福利厚生費・給料賃金」が挙げられます。このうち、個人事業で重要なのは、基本的に「給料賃金」との使い分けくらいです。
「接待交際費(交際費)」との使い分け
個人事業主の場合 | 法人の場合 | |
---|---|---|
会議費 | 厳密な使い分けは不要 | ルールに従って 使い分ける |
広告宣伝費 | 厳密な使い分けは不要 | |
福利厚生費 | 厳密な使い分けは不要 | |
給料賃金 | 使い分けましょう |
接待交際費の使い分けについては、たとえば「5,000円基準」のルールが有名です。しかし、これもあくまで法人(株式会社など)の会計ルールなので、個人事業主が従う必要はありません。
- 交際費の「5,000円基準」とは?
- 「1人あたり5,000円以下」の飲食費は「交際費」以外の科目で処理する、というルールの通称。簡単に言うと「5,000円以下なら交際費に含めなくていいよ」ということ。(租税特別措置法61条4-4-2)
ただ、個人事業主でも「法人の基準を参考にする」という判断はもちろんアリです。本記事では、法人のルールについても簡単に説明します。
なぜ法人では使い分けが重要?
そもそも個人事業主と法人では、確定申告における「接待交際費(交際費)」の扱いが下記のように異なります。
個人事業主 | 収入から「接待交際費」の全額を差し引ける →「接待交際費」が膨らんでも、事業に必要な支出なら問題ない |
---|---|
法人 | 収入から「交際費」として差し引ける金額に上限がある →「交際費」が膨らみすぎると、収入から差し引けない金額が生じる* |
* 大企業の場合、金額に関わらず全額を収入から差し引くことはできない
個人事業主は、どんな科目で必要経費を計上しても、最終的に収入から差し引かれることは変わりません。
一方、たとえば中小法人が「交際費」の科目を使いすぎると、支出の一部を収入から差し引けず、税額の計算でもったいない思いをすることになります。したがって、ルールの範囲内で「交際費」以外の勘定科目を使うことが重要なのです。
-
法人の交際費は「収入から一切差し引けない」というのが原則だが、資本金や出資金が100億円以下の企業には、一定の要件下で損金算入が認められている。たとえば、資本金が1億円以下の中小法人の場合、年間の「交際費」が800万円以下なら全額を収入から差し引ける。
>> 交際費等の範囲と損金不算入額の計算 – 国税庁
①「会議費」との使い分け
個人事業主 | 法人 |
---|---|
厳密な使い分けは不要 | ルールに従って使い分ける |
個人事業主の場合、「会議費」と「接待交際費」を細かく使い分ける必要はありません。そもそも「会議費」は任意で追加する勘定科目なので、無理に使う必要もありません。
一方、法人では会議に関連する飲食代について下記のように規定されています。
引用
会議に際して社内又は通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待に要する費用は、原則として措置法令第37条の5第2項第2号に規定する「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用」に該当するものとする。
要するに、会議時のちょっとした飲食代くらいなら、「交際費」にカウントせず「会議費」として処理してよいということです。個人事業主でも、このルールを参考に「接待交際費」と「会議費」を使い分けても構いません。
②「広告宣伝費」との使い分け
個人事業主 | 法人 |
---|---|
厳密な使い分けは不要 | ルールに従って使い分ける |
事業の宣伝を兼ねた接待費用などは、「広告宣伝費」と「接待交際費」の区別で迷うかもしれません。が、個人事業主なら基本的にどちらを使ってもOKです。
一方、法人には「不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するもの」は「交際費」に含まないというルールがあります。したがって、下記のような費用は「広告宣伝費」に計上します。
【法人】「交際費」に含まない費用(広告宣伝関連)
- 抽選で、一般消費者に金品を交付する or 旅行・観劇等に招待するための費用
- 金品引換券付販売に伴い、一般消費者に金品を交付するための費用
- 一定の商品を購入した一般消費者を、旅行・観劇等に招待するための費用
- 商品を購入した一般消費者に景品を交付するための費用
- 一般の工場見学者等に製品の試飲・試食をさせる費用
- 得意先等に見本品・試用品を供与するための費用
- 製品や商品の試用を行った一般消費者に、謝礼として金品を交付するための費用
租税特別措置法 法令解釈通達 61の4(1)-9 – 国税庁
③「福利厚生費」との使い分け
個人事業主 | 法人 |
---|---|
厳密な使い分けは不要 | ルールに従って使い分ける |
従業員との飲食費用など、「福利厚生費」と「接待交際費」で迷うケースがあるかもしれません。このような場合、個人事業主なら厳密な使い分けは不要です。
一方、法人の場合、下記のような支出は「交際費」に含まないというルールがあります。
【法人】「交際費」に含まない費用(福利厚生関連)
- 創立記念日や新社屋落成式等の際、従業員に概ね一律に供与される飲食の費用
- 従業員やその親族の慶弔・禍福に際し、基準に従って支給される金品の費用
租税特別措置法 法令解釈通達 61の4(1)-10 – 国税庁
このルールにならえば、個人事業でも従業員との忘年会・新年会などの費用は「福利厚生費」に計上するのが妥当と言えます。とはいえ「接待交際費」に計上しても特に問題はありません。自分なりの使い分け基準を決めておきましょう。
④「給料賃金」との使い分け
個人事業主 | 法人 |
---|---|
使い分けましょう | ルールに従って使い分ける |
従業員のための支出は「給与として課税されるもの」と「給与として課税されないもの」に大別できます(個人事業主でも法人でも同様)。「給料賃金」の勘定科目は、このうち「給与として課税されるもの」を記帳する際に使いましょう。
給与として課税されるもの 「給料賃金」で記帳する |
給与として課税されないもの |
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>> 給与として課税される・課税されないの区別について詳しく
「給与として課税されるもの」については、下記のような特徴が共通しています。
「給与として課税されるもの」の特徴
- 従業員にとっては給与収入
- 源泉徴収が必要
- 消費税区分が「不課税」
これらが共通していることから、「給与として課税されるもの」はまとめて「給料賃金」で処理しておくのがよいわけです。
まとめ
個人事業なら「接待交際費」と「会議費・広告宣伝費・福利厚生費」を厳密に使い分ける必要はありません。ただ「接待交際費」と「給料賃金」の混同は避けましょう。
【ポイント】接待交際費(交際費)との使い分け
- 法人の場合、会議用の軽食代などは「会議費」に計上する
- 法人の場合、不特定多数への宣伝を意図する費用は「広告宣伝費」に計上する
- 法人の場合、記念行事に関わる飲食代などは「福利厚生費」に計上する
- 個人も法人も「給与として課税されるもの」は「給料賃金」に計上する
個人事業の場合、そもそも「こういう費用は〇〇費として記帳しなさい」というルールがほとんどありません。ですから、勘定科目の使い分けについて、そこまで神経質にならなくてOKです。
実務的には、法人のルールをひとつの参考にして、自分なりの使い分け基準を決めておくのがよいでしょう。それぞれの勘定科目が明快な基準で使い分けられていれば、もし税務調査が入った場合でも、税務官に良い印象を与えられます。