車やバイクで業務を行う個人事業主向けに「車両費」の勘定科目について解説します。車両費で記帳する際の注意点や仕訳例などを、具体例を示しながらわかりやすく説明します。
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目次
車両費とは
「車両費(車両関連費)」は、決算書には載っていませんが、一般的によく使われる勘定科目です。自動車やバイクの使用・維持などにかかる支出を、より明確にしておきたい場合に活用するとよいでしょう。
「車両費」の具体例
- ガソリン代や軽油代
- 高速道路や有料道路の利用料
- コインパーキング代や月極駐車場の利用料
- ガソリンスタンドや洗車場で支払う洗車代
- ウォッシャー液の購入費用
- 車検代
- オイル代やオイル交換代
- タイヤ交換代やパンク修理代
- 自動車保険料(自賠責保険・任意保険)
- 自動車税、軽自動車税
消費税区分は基本的に「課税」ですが、保険料は「非課税」、自動車税は「不課税」です。
車関連の支出が少ない場合
車関連の支出がそこまで多くなければ、わざわざ「車両費」の勘定科目を作る必要はありません。その場合は、下記のような勘定科目で帳簿づけをしましょう。いずれも、個人事業主が提出する決算書にデフォルトで記載されている科目です。
ここからは、自動車を事業のためだけに使っているケースを想定して、具体的な記帳方法を説明します。プライベートでも同じ車を使っている場合は「家事按分」をする必要があり、支出の全額を経費にすることはできないので注意しましょう。
仕訳例① ガソリン代
下記は、事業用車のガソリン代8,000円を現金で支払った際の記帳例です。
複式簿記の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月17日 | 車両費 8,000 | 現金 8,000 | ガソリン代 |
「複式簿記」で記帳するのは、青色申告特別控除の55万円・65万円をねらう事業者です。それ以外の青色申告者や白色申告者は「単式簿記」で構いません。
会計ソフトの記帳例
仕訳例② 自動車保険料 – 短期前払費用の特例
自動車保険の保険料は、契約期間が1年以内なら、下記のように経費計上するだけでOKです(短期前払費用の特例)。もちろん、1年ぴったりの契約もこれに該当します。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月1日 | 車両費 65,000 | 現金 65,000 | 自動車保険料1年分 |
ただし、この特例は基本的に、毎年同じように契約更新していくことが前提です。そうでない場合は、上記に加えて「前払費用」の科目を使った仕訳も必要となるので注意しましょう。
【前払費用】契約期間が1年を超える場合は要注意!
2~3年分の保険料をいちどに支払う場合などでは、上記の仕訳に加え、決算時に月割り計算が必要です。会計のルール上、経費にできるのは原則「契約月~当年12月」の部分だけですから、当年の経費にできない部分は「前払費用」へ振り替える必要があります。
仕訳例③ 修理代 – 基本的に減価償却は不要
車両の修理代は高額になることも多いですが、このとき「10万円を超えたら減価償却する!」というルールはひとまず気にしなくてよいです。基本的に、固定資産(車両や建物など)の維持管理にかかる費用は、金額に関わらず経費に計上できます。
たとえば、摩耗したタイヤの交換費用として16万円を支払ったら、下記のように経費計上してしまってOKです。(「車両費」ではなく「修繕費」の科目を使う場合も多い)
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月20日 | 車両費 160,000 | 現金 160,000 | タイヤ交換 |
ただし、従来よりも高価なタイヤに変えたりすると、その費用は単なる修理代でなく「資本的支出」とみなされます。資本的支出とは、簡単に言うと「固定資産の価値を高めるための支出」のことで、すぐに経費計上せず、減価償却をする必要があります。
まとめ
「車両費」の勘定科目を作成する際は「○○は車両費、△△は消耗品費」と、自分なりのルールをきちんと設けましょう。そして、毎年そのルールに則って記帳していく必要があります(継続性の原則)。
「車両費」のポイント
- 「車両費」は自分で作成する科目(決算書にはもともと記載がない)
- 車に関する支出が少なければ「車両費」の科目を作成しなくてOK
- 車を事業とプライベートで兼用している場合は「家事按分」が必要
- 消費税区分は基本的に「課税」
- ただし、保険料は「非課税」、自動車税は「不課税」
- 1年契約の保険料は支払時に全額を経費計上できる(短期前払費用の特例)
- 車両の修理にかかる費用は、10万円超でも基本的に減価償却しなくてよい
- ただし「資本的支出」に該当する場合は減価償却が必要
ちなみに、自動車を購入した際は「車両費」ではなく「車両運搬具」という固定資産の勘定科目で記帳します。自動車の取得にかかった費用は、耐用年数に応じて減価償却をしていきます。