個人事業主向けに「支払手数料」の勘定科目について解説します。よくある具体例を用いて、わかりやすい仕訳例などを紹介しています。
INDEX
目次
支払手数料とは
「支払手数料」は、任意で追加する勘定科目のひとつです。収支内訳書や青色申告決算書には記載されていませんが、下記のような費用を経費計上する際に使えます。
具体例 | 消費税区分 |
---|---|
|
課税 |
|
非課税 |
|
不課税 |
事業で生じる手数料の消費税区分は「課税」であることが多いです。ただ、一部は「非課税」や「不課税」の場合もあるので注意しましょう。(消費税の納付義務がない「免税事業者」は気にしなくてよい)
なお、収入印紙や証明書の発行手数料は「租税公課」で記帳するのが一般的です。また、利子や利息などの金利手数料は「利子割引料」の勘定科目で記帳します。
仕訳例① 銀行の振込手数料
- 商品を3万円で仕入れた
- 代金は事業用口座から振り込んだ
- その際、振込手数料として110円かかった
銀行振込の手数料を「支払手数料」で記帳すると、以下のようになります。
複式簿記の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月10日 | 仕入 30,000 | 普通預金 30,110 | 商品Aの仕入れ |
支払手数料 110 | 銀行振込手数料 |
「複式簿記」で帳簿づけするのは、55万円・65万円の青色申告特別控除をねらう場合です。それ以外は「単式簿記」による帳簿づけで構いません。
会計ソフトでの記帳例
「仕入」の記帳 | 「支払手数料」の記帳 |
---|
こちらはクラウド会計ソフト「やよいの白色申告 オンライン」による入力例です。会計初心者でも簡単に帳簿づけができます。
仕訳例② 税理士への支払報酬
- 顧問税理士に5月分の報酬13,000円を支払った
- 報酬は事業用口座から自動引き落としで支払った
顧問税理士に支払う報酬を「支払手数料」の科目で必要経費に計上します。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年6月15日 | 支払手数料 13,000 | 普通預金 13,000 | 税理士報酬(5月分) |
源泉徴収をする場合の仕訳例
源泉徴収をする場合、源泉徴収分の金額は「預り金」の科目で記帳します。税理士への報酬が100万円以下なら、税率は10.21%です。(下記の例では「13,000円 × 10.21% = 1,327円」)
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年6月15日 | 支払手数料 13,000 | 普通預金 11,673 | 税理士報酬(5月分) |
預り金 1,327 | 源泉所得税 |
なお、従業員を雇っていなければ、税理士の報酬について源泉徴収をする必要はありません。
個人事業主の源泉徴収義務について
仕訳例③ カード売上の手数料
- 5月30日、4万円の商品をクレジットカード決済で店頭販売した
- 売上金は、6月15日に入金された
- カード売上の手数料は5%(4万円 × 5% = 2,000円)
まず、クレジットカードによる売上を借方に「売掛金」の勘定科目で記帳します。実際にお金を受け取っていなくても、商品を引き渡した段階で貸方は「売上」に計上します(実現主義)。
売上時の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月30日 | 売掛金 40,000 | 売上 40,000 | 商品Aの売上 (カード売上) |
そして、信販会社から売上の入金があった日付で、以下のように振り替えます(上記のほかに売上はなかったものとする)。カードの手数料として差し引かれた分は「支払手数料」で記帳します。
売上入金時の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年6月15日 | 普通預金 38,000 | 売掛金 40,000 | カード売上の入金 (5月分) |
支払手数料 2,000 | カード売上の手数料 |
まとめ – 支払手数料のポイント
支払手数料のポイントまとめ
- 事業を営む上で支払った手数料は「支払手数料」で経費計上できる
- 消費税区分は基本的に「課税」
- 税理士などに支払う報酬も「支払手数料」でOK
- 収入印紙や証明書の発行手数料は「支払手数料」「租税公課」どちらでもOK
- 利子や利息などの金利手数料は「利子割引料」
「支払手数料」は、確定申告の決算書には記載がない勘定科目です。ただ、何かと手数料を支払う機会が多い事業者は、新たに設けておくとよいでしょう。なお、大手の会計ソフトにはデフォルトで備わっています。