雑誌や書籍をよく購入する個人事業主向けに、「新聞図書費」の勘定科目についてわかりやすく解説します。会計ソフトなどを利用する際に見かける機会が多い科目です。よくある具体例を用いて、仕訳例なども紹介します。
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目次
新聞図書費とは
事業に関する情報収集を目的に購入した新聞・雑誌・書籍などの費用は「新聞図書費」として必要経費に計上できます。紙に限らず、電子書籍やデジタル新聞の利用料金などもこれに含めて構いません。
新聞図書費の具体例
- 業界誌や専門書の書籍代金
- 創作活動の題材として使う小説や漫画の購入費用
- 税金や確定申告に関する電子書籍の購入代金
- デジタル新聞やニュースサイトの利用料金
- 資料用DVDの購入費用、あるいはレンタル料
- 上記の取得にかかった費用(配送料など)
当然ながら、事業とは何ら関係なく、私的な目的で購入したものは必要経費に計上できません。特に漫画や映画など、一般的に娯楽性の高いものの経費計上については、事業との関連性を考えて慎重に行いましょう。
「新聞図書費」は自分で追加する科目
「新聞図書費」は、決算書に記載のない勘定科目です。書籍代や新聞の購読料などがかさむ事業者が、この科目を作成します。わざわざ「新聞図書費」の科目を追加せず、「消耗品費」として処理してもOKです。
とはいえ、大手のクラウド会計ソフトには、自ら追加しなくともデフォルトで備わっている科目ですから、この科目を利用する方は下記の仕訳例をご参照ください。
【仕訳例】書籍を購入した場合
まずは、一般的な例として「事業で使用する専門書1,500円を現金で購入した」場合の記帳例を見てみましょう。
複式簿記の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月15日 | 新聞図書費 1,500 | 現金 1,500 | 専門書の購入 |
会計ソフトの記帳例
画面は「やよいの白色申告 オンライン」のもの
摘要欄には「書名・購入した店舗名」などを記入しても構いません。とはいえ、大抵はレシートに明記されているので、そこまで細かく記帳しなくてもOKです。
【仕訳例】定期購読の場合
定期購読の場合も、購読料の支払日において、以下のように「新聞図書費」の勘定科目で経費計上できます。
業界誌1年分の購読料(12,000円)を前払いしたとき
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年5月1日 | 新聞図書費 12,000 | 普通預金 12,000 | 業界誌の定期購読 |
ただし、その購読期間が年をまたぐときは、年末年始の時点で特殊な仕訳が必要です。上記の新聞図書費12,000円のうち、2022年1~4月に購読する分(=4,000円分)は、2021年分の新聞図書費とはいえないからです。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年12月31日 | 前払費用 4,000 | 新聞図書費 4,000 | 業界誌の定期購読(翌年分) |
2024年1月1日 | 新聞図書費 4,000 | 前払費用 4,000 | 業界誌の定期購読(振替) |
ちなみに、勘定科目は「前払費用」の代わりに「前払金」を用いてもよいです。当年分と翌年分の必要経費をきっちり区別できていれば、どちらの勘定科目で記帳しても税務上は問題ありません。
【仕訳例】定期購読の場合 – 短期前払費用の特例
「短期前払費用の特例」を適用できれば、年をまたぐ定期購読であっても、年末年始の面倒な仕訳をしなくて済みます。その場合、仕訳は以下のように支払日の1回だけでOKです。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年5月1日 | 新聞図書費 12,000 | 普通預金 12,000 | 新聞(電子版)の定期購読(短期前払費用の特例) |
ただ、この特例は「継続的にサービスを受ける場合」に限られます。ほかにも細かな要件がいろいろとあるので、判断に迷うようなら、税務署などで相談しましょう。
「短期前払費用の特例」について詳しく
まとめ
「新聞図書費」は、決算書にこそ記載はありませんが、一般的によく使われている勘定科目のひとつです。特に情報収集にお金をかける個人事業主は、この科目を活用しましょう。
新聞図書費のポイントまとめ
- 消費税区分は「課税」
- 事業で必要な新聞や書籍の購入費は「新聞図書費」で経費計上できる
- 紙に限らず、電子書籍やDVDなどの購入費でもOK
- 購入費に限らず、レンタル料金や利用料金でもOK
- 定期購読などで1年分の料金を支払う場合は、当年分だけを必要経費に計上
- 決算書作成の際は、空欄に科目を書き込んで金額を記入する
- 金額が10万円以上する場合は注意
全巻セットの百科事典など、10万円以上のものを購入する際は注意が必要です。「減価償却」により、毎年少しずつ経費に計上しなくてはいけません。ただ、青色申告者なら30万円までは一括で経費にできます(少額減価償却資産の特例)。