原稿作成やデザイン制作のために取材をよく行う個人事業主向けに、「取材費」の勘定科目について解説します。具体例を示しながら、ほかの勘定科目との違いや仕訳方法などをわかりやすく説明します。
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目次
取材費とは
「取材費」という勘定科目を使えば、取材に関わる費用をまとめて管理できます。決算書には記載のない科目ですが、取材の機会が多いライターやメディア関係者は追加しておくと便利です。
取材費の具体例
- 取材で訪れた施設の入場料
- 取材対象のサービスに支払う利用料
- インタビューをする際の飲食費
- インタビューの相手に支払う謝礼金
- 取材先までの交通費
- 参考資料の購入代金
消費税区分は、基本的に「課税」です(海外で取材する場合などを除く)。なお、消費税の納付義務がない免税事業者なら、課税区分を気にする必要はありません。
わざわざ「取材費」を使わなくてもOK
あまり取材をしない業種なら、わざわざ「取材費」の科目を設ける必要はありません。勘定科目を増やしすぎると、かえって管理が大変になってしまいます。
頻繁に取材する人 | あまり取材をしない人 |
---|---|
「取材費」を設けておくと便利なことも | 他の科目で代用する方がよい |
取材に関わる費用は、下記のような科目で処理しても問題ありません。
取材に関わる費用 | 該当する勘定科目の例 |
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接待交際費 |
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消耗品費 |
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旅費交通費 |
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支払手数料 |
「支払手数料」は「取材費」と同じく、任意で追加する勘定科目です。主には、振込手数料や仲介手数料を処理する科目ですが、用途がキッチリ決まっているわけではありません。「取材費」よりも汎用性が高いので、追加しておくと後々便利でしょう。
取材費の記帳例
勘定科目に「取材費」を追加した場合の記帳例を紹介します。たとえば、インタビューの謝礼として1万円を現金で支払った場合は、次のように記帳します。
複式簿記の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年6月10日 | 取材費 10,000 | 現金 10,000 | 謝礼金 Aさん |
同様の取引を、会計ソフトでは以下のように入力します。ただ、デフォルトのままでは「取材費」が科目の選択肢にないことが多く、設定から新たに追加する必要があります。
会計ソフトの記帳例
画像は「やよいの白色申告 オンライン」のもの
個人事業主のあなたが従業員を雇っていないなら、外部に支払う報酬等について源泉徴収をする必要はありません。しかし、従業員を雇っている場合は、このような謝礼金について、源泉徴収をする必要があります(国税局に確認済み)。
決算書のどこに書く?
収支内訳書と青色申告決算書には、もともと「取材費」の欄がありません。これは任意で追記する科目なので、下記の空欄部分に書き込みましょう。
収支内訳書 | 青色申告決算書 |
---|---|
もし自分で追加した科目が多く、欄が足りない場合は、一番下の欄に書ききれなかった科目の合計額を記入します。その科目欄には「◯◯費ほか」と書いておけばOKです。
任意で追加した科目の記入方法 – 収支内訳書・青色申告決算書
まとめ
- 取材にかかる費用が多い人は「取材費」の科目を追加しよう
- 逆に取材費用が少ない人は、決算書の既存科目で処理するほうがよい
- 「取材費」の代わりに、もっと汎用性の高い科目(支払手数料など)を設けるのもアリ
- 同様の取引について、使う科目をコロコロ変えるのはNG(継続性の原則)
電車賃や謝礼金のように、領収書が発行されない出費を必要経費に計上する際は「出金伝票」を作成します。あわせて、取材ノートや日程表など「実際に取材したという証拠」を保管しておけば、もし税務調査が入ったとしても安心です。