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個人事業の通信費 – 仕訳例や家事按分の考え方

更新日: 2024/07/31
個人事業の通信費 – 仕訳例や家事按分の考え方

事業で必要な電話代やインターネット料金、郵送にかかる費用などを経費として処理するときは、「通信費」という勘定科目を使います。1台のスマホをビジネスとプライベートの両方で使っている場合なども、スマホ代の一部を経費にできます。

INDEX

目次

    通信費とは

    業務で使用している毎月の電話代・インターネット料金・郵便料金は、「通信費」の勘定科目で経費にできます。ただし、個人事業主の場合は、日常生活で使っているスマホなどを仕事でも使うケースが多いので、「家事按分」をすることで一部を経費として扱います。

    消費税区分は原則「課税」ですが、国際電話やエアメールは「免税」となります。郵便切手は、日常的に使っている場合、購入時に「課税」で経費計上してOKです。

    通信費の例

    月々の電話代 月々のインターネット
    料金
    郵便料金
    • 回線の開設工事費
    • 固定電話の利用料金
    • 携帯電話の利用料金
    • FAX料金
    • 初期工事費
    • 回線使用料
    • プロバイダ料
    • Wi-Fi利用料
    • 切手代
    • はがき代
    • 郵送料
    • 配送料

    電話機本体などの通信端末については、10万円以上の固定資産であれば「工具器具備品」に計上して減価償却することになり、そうでなければ「消耗品費」として処理するのが一般的です。

    また、混同されがちですが、商品・製品を発送する場合は基本的に「荷造運賃」の勘定科目を使います。とはいえ、同じ取引は同じ勘定科目で記帳するという原則さえ守れば、どの勘定科目を使っても経費として処理できることに変わりはありません。

    家事按分 – プライベート用の電話を仕事でも使う場合など

    プライベート用と事業用の料金を一緒に支払っている場合は、領収書に合計金額しか書いていなくても、「家事按分」という方法で一部を経費にできます。事業用に使用している割合を、税務署に対してきちんと説明できればOKです。

    家事按分する通信費の例

    • 固定電話の利用料金
    • 携帯電話の利用料金
    • インターネット回線使用料
    • プロバイダ料
    • Wi-Fi利用料

    事業用の割合を「按分比率」といい、事業者が自由に設定しますが、税務署が納得する割合である必要があります。大抵は「使用時間」「使用日数」などを基準にします。なお、プライベート用とは別に仕事用の携帯電話を契約している事業者は、仕事用の携帯電話料金をすべて経費にできます。

    電話料金の按分例 - 通信費

    また、「事業開始前はいつも2,000円で済んでいた携帯の利用料金が、開始後には10,000円になったので、増えた8,000円は事業用だ」などのように明確な根拠を示すことができれば、按分比率80%でも認められるケースがあります。
    >> 家事按分について詳しく – 比率の考え方や仕訳方法など

    通信費の消費税区分

    通信費の消費税区分は「課税」です。ただし、国際電話・国際FAX・国際郵便など、海外と国内をつなぐ通信にかかる費用は「免税」です。国内を経由しない、海外同士の通信は「不課税」となります。郵便切手は金券なので、本来は「非課税」です。

    課税 免税 非課税 不課税
    • 国内通話料
    • ネット料金
    • 国内郵便
    • 国際電話
    • 国際FAX
    • 国際郵便
    郵便切手
    (課税でもよい)
    海外同士の通信

    郵便切手は「使う時に初めて経費になり、消費税が課税される」という特殊な扱いになっています。そのため、厳密には購入時に「貯蔵品」として資産に計上します。しかし、「仕訳例③ 郵便切手代の記帳方法」で後述するように、日常的に切手を使用している事業者は、実務的には購入時に「通信費」として経費計上し、その消費税区分は「課税」として処理することが多いです。
    >> 消費税の課税区分について詳しく – 課税・免税・非課税・不課税

    仕訳例① 通信費の基本的な記帳方法

    ここでは通信費の基本的な仕訳例として、郵送料を挙げます。取引先のA社へ簡易書留で書類を発送し、現金430円を郵便局に支払ったとします。その場合は、次のように仕訳します。

    複式簿記の記帳例

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年12月20日 通信費 430 現金 430 A社 簡易書留郵便

    複式簿記では、費用である通信費を借方(=左側)に書く決まりになっています。青色申告で65万円・55万円控除を目指す事業者は、複式簿記で記帳する必要があります。それ以外の事業者は、たとえば次のように単式簿記で記帳します。

    単式簿記の記帳例

    日付 通信費 摘要
    20XX年12月20日 430 A社 簡易書留郵便

    >> 単式簿記と複式簿記の違い

    仕訳例② 家事按分した場合の記帳方法

    家事按分をした際の記帳例として、スマホの利用料金を例に仕訳をします。「仕事でもプライベートでも同じスマホを使っていて、その使用時間が半々であることから、按分比率は50%に設定した」と仮定します。

    以上の状況で、携帯料金として銀行口座から10,000円引き落とされた場合、複式簿記での記帳は次のようになります。

    銀行口座から引き落とされた場合の仕訳例

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年12月27日 通信費 5,000 普通預金 10,000 携帯料金
    事業主貸 5,000

    按分する場合は、プライベートで使った部分は「事業主貸」という個人事業主に特有の勘定科目で処理します。なお、コンビニなどで現金を使って支払ったときは、「事業主貸」は使わずに次のように記帳してもOKです。

    現金で直接支払った場合の仕訳例

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年12月25日 通信費 5,000 現金 5,000 携帯料金

    仕訳例③ 郵便切手代の記帳方法

    日常的に郵便切手を使用している事業者は、切手を購入したタイミングで経費計上してOKです。消費税区分もこのタイミングで「課税」とします。ただしこの場合、切手を実際に使ったときの記帳が不要になります。

    本来、郵便切手は使って初めて経費になります。消費税もこのとき初めて課税されるという扱いになっています。ただし、切手を事業主が使用するために購入し、かつ少額である場合、実務上は購入時に経費計上でき、消費税もこのとき「課税」として処理します。

    少額の切手代に対する実務的な記帳方法

    購入時 使用時
    • 「通信費」で処理
    • 経費にできる
    • 消費税区分は「課税」
    記帳不要

    少額の切手代に対する実務的な仕訳例

    複式簿記で記帳する場合の例として、「11月1日に82円切手を100枚購入し、11月5日に1枚使用した」ときは以下のようになります。なお、11月5日に使用した分の記帳はしなくて構いません。

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年11月1日 通信費 8,200 現金 8,200 切手代

    年度末に切手が余った場合の仕訳例

    年度末の時点で、上記で購入した切手の半分が余った場合は、下記のように帳簿づけをします。その年のうちに消費しなかった分がその年の経費にできないので、ひとまず余った切手を「貯蔵品」として資産計上しておくという仕訳です。

    日付 借方 貸方 摘要
    2021年12月31日 貯蔵品 4,100 通信費 4,100 使わなかった切手

    貯蔵品へ計上した余りの切手を次の年に使用する時には、次のように仕訳をします。ここでは、余っていた82円切手を10枚使用したとします。これで、2022年に消費した切手代が2022年分の経費として計上でき、正しいタイミングで経費計上することになります。

    日付 借方 貸方 摘要
    2022年3月20日 通信費 820 貯蔵品 820 切手代

    まとめ – 通信費の重要ポイント

    通信費は、家事按分できる場合が多いです。また、郵便切手を事業主が使うために少額購入したときは、まとめて経費にしてOKです。電話機本体などの通信機器については、大抵は「消耗品費」で処理します。10万円を超えたら「工具器具備品」として計上します。

    通信費の重要ポイント

    • 事業と私用の両方で使う電話代などは家事按分できる
    • 按分比率は「使用日数」「使用時間」などを基準にする
    • 家事按分のプライベート分は「事業主貸」で処理する
    • 通信費の消費税区分は基本的には「課税」
    • 海外を経由する国際電話などの消費税区分は「免税」
    • 郵便切手は原則、使用して初めて消費税が「課税」扱いになる
    • 事業主自身が使う少額の郵便切手は、購入時に消費税を「課税」扱いとしてもよい
    • 郵便切手を購入時に「課税」で経費計上した場合は、使用時の記帳はしない

    「通信費」「消耗品費」「荷造運賃」の区別が難しいときは、一度つけた勘定科目で今後もずっと帳簿づけする、という一貫性さえあれば、どれでつけても問題ありません(継続性の原則)。

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