家事按分って何?按分の考え方や実際の仕訳方法など

更新日: 2020/08/24 税理士監修
家事按分って何?按分の考え方や実際の仕訳方法など

自宅で仕事をしている場合の家賃などは「家事按分(かじあんぶん)」をすることで、事業に必要な分を経費に計上できます。本記事では按分比率の求め方や、複式簿記で記帳する際の仕訳例を紹介しています。

INDEX

目次

    家事按分とは

    個人事業の場合、事業を営む上で必要な費用は「 必要経費 」として計上できます。ただ、自宅兼事務所の家賃や電気代などは、「必要経費」と「生活費」両方の側面をもっています。

    このように両方の側面をもつ費用について、合理的な基準によって定めた割合で区分することを「家事按分」または「按分」といいます。按分することで、事業に必要な部分を必要経費に計上できます。

    事務所・店舗、自宅兼事務所、自宅の経費計上方法

    一般的には、以下のような費用が家事按分の対象となります。事業とプライベートの両方で使用しているかどうかが、見極めのポイントです。

    家事按分の対象となる費用の例

    • 自宅兼事務所の家賃や電気代など
    • 事業とプライベートの両方で使用している自動車のガソリン代や自動車税
    • 公私ともに利用している月極駐車場の賃料
    • 事業用の連絡手段としても使っているスマホの通信料金

    按分比率について

    按分する際は、「按分比率」という割合を使って計算します。これは、事業用に使用している面積・日数・時間などを基準に、事業者自身が設定する割合のことです。「事業用割合」「按分割合」と呼ばれることもあります。

    とはいえテキトーに按分比率を設定しないようにしましょう。事業を営む上で必要な割合だということが、第三者から見ても納得できる必要があります。

    按分の仕訳例① 自宅兼事務所の家賃 – 地代家賃

    自宅で仕事をしている場合は、家賃の一部を「地代家賃」として経費に計上できます。按分比率は、仕事部屋が明確に区別できるなら、その使用面積で算出します。区分できないときは、使用時間を基準にします。

    【使用面積で按分比率を設定する】

    使用面積で按分比率を設定する(地代家賃)

    床面積が100㎡の家で、仕事部屋の面積が30㎡の場合は、30%が按分比率です(30㎡ ÷ 100㎡ = 0.3)。家賃が10万円なら、そのうち3万円を「地代家賃」として計上します。残りの7万円は、プライベートの支出として「事業主貸」で記帳します。

    家賃10万円を支払ったときの仕訳例(按分比率:30%)

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月25日 地代家賃 30,000 普通預金 100,000 6月分の家賃
    事業主貸 70,000 家事使用分

    なお、面積で按分する場合、事業用の面積は仕事専用の部屋としてきちんと区別できた方が良いです。実質的に仕事以外でも使えるような部屋については、事業用として認められにくいです。

    【使用時間で按分比率を設定する】

    使用時間で按分比率を設定する例(地代家賃)

    使用時間で求めるなら、一週間あたりやひと月あたりの業務時間を基準にします。ただ、この場合は明確な根拠を用意しづらいかもしれません。合理的な範囲で、按分比率を設定しましょう。

    たとえば、平日7時間仕事をする場合、按分比率は20%といったところです。按分比率の求め方は、(7時間 × 5日間)÷(24時間 × 7日間)= 約20%

    実家暮らしの場合は?

    一緒に住む家族に家賃を支払っている場合、家族と生計が同一かどうかで異なります。生計が同じ場合は経費にできません。生計が別の場合、按分して一部を経費とすることができます。とはいえ、一人暮らしのケースと同じく、合理的な根拠を用意して按分する必要があります。

    按分の仕訳例② 自宅兼事務所の電気代 – 水道光熱費

    家賃同様、月々の電気代も按分すれば「水道光熱費」として金額の一部を経費にできます。この場合も、基準になるのは時間や面積などです。コンセントや電球の数を基準にすることもあります。

    【使用時間で按分比率を設定する】

    使用時間で按分比率を設定する(水道光熱費)

    たとえば、1人暮らしでほぼ毎日自宅で仕事をしているという場合、電気を使用している時間が12時間、そのうち業務時間が6時間なら、按分比率は50%です(6時間 ÷ 12時間 = 0.5)。電気代の半分を「水道光熱費」として経費に計上できます。

    電気代5,000円を支払ったときの仕訳例(按分比率:50%)

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月15日 水道光熱費 2,500 普通預金 5,000 5月分の電気代
    事業主貸 2,500 家事使用分

    日中は自分しか自宅にいないけれど、夜は家族全員で電気を使用するという場合は、面積やコンセントの数を基準にするのも一手です(同居する家族がいると、時間で按分するのが難しいため)。

    【コンセントの数で按分比率を設定する】

    コンセントの数で按分比率を設定する例(水道光熱費)

    コンセントの数で按分比率を求めるときは、全体のコンセント数を使用しているコンセントの数で割ります。たとえば、全部で10個あるうち3個だけを使っているなら、30%が按分比率です(3個 ÷ 10個 = 30%)。この按分方法についても、もちろん納得できる合理性や客観性があることが前提です。

    按分の仕訳例③ 自動車のガソリン代 – 旅費交通費

    事業用とプライベート用の自動車が同じ場合は、自動車のガソリン代を按分することで一部を経費として計上できます。たとえば、走行距離をもとに按分比率を算出します。公私関係なく走行距離が同じ程度なら、大抵は使用時間や日数で按分します。

    【走行距離で按分比率を設定する】

    走行距離で按分比率を設定する例(旅費交通費)

    走行距離で按分比率を設定する場合、まず1~2ヶ月ほどデータを記録して、そこから何割程度が事業分なのか計算しましょう。このデータは、税務調査に備えて大切に保管しておきます。使用頻度が大きく変わらない月は、この按分比率で毎月計上していきます。

    1.ガソリン代を支払ったときは一旦「経費」に計上しておく

    按分の計算は、月末にまとめて行います。そのため、支払ったガソリン代はひとまず「旅費交通費」など経費の勘定科目で記帳しておきます。

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月1日 旅費交通費 5,000 現金 5,000 ガソリン代
    20XX年5月7日 旅費交通費 6,000 現金 6,000 ガソリン代
    20XX年5月20日 旅費交通費 4,000 現金 4,000 ガソリン代

    2.月末に家事使用分を「事業主貸」で振り替える(按分比率:40%)

    そして月末になったら、設定した按分比率でプライベート分の費用を割り出します。この月のガソリン代は、15,000円(5,000円+6,000円+4,000円) なので、経費にできるのは6,000円です(15,000円 × 0.4 = 6,000円)。プライベート分の9,000円は、「事業主貸」として振り替えておきます。

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月31日 事業主貸 9,000 旅費交通費 9,000円 5月分のガソリン代
    家事使用分

    自動車に関連するその他の費用も同じ按分比率で計算する

    自動車を保有していると、ガソリン代のほかにも自動車税や購入時の減価償却費修繕費などさまざまな支出が発生します。これらの費用も、割り出した按分比率を使って一部を経費にすることができます。

    按分の仕訳例④ 家賃を年末にまとめて振替仕訳する場合

    仕訳例①~③では、毎月の支払いごとに按分をしていく方法を説明してきました。とはいえ、毎月按分をしつつ記帳していくのは面倒なもの。そこで、ここでは家賃を例に1年分の費用を期末にまとめて按分する方法を紹介していきます。

    1.ひと月分の家賃を一旦「経費」にしておく

    まず、毎月の家賃を「地代家賃」として経費に計上しておきます。以下のような仕訳を毎月繰り返していくということです。

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月25日 地代家賃 100,000 普通預金 100,000 6月分の家賃

    2.期末にまとめて50%分を「事業主貸」に振り替える

    期末(個人事業の場合、基本12月31日)になったら、「地代家賃」として計上してきた家賃を按分します。この場合、1年分の家賃は120万円(10万円 × 12ヶ月 = 120万円)。按分比率が50%だとしたら、半分にあたる60万円を「事業主貸」として振替仕訳します。

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年12月31日 事業主貸 600,000 地代家賃 600,000 家賃の按分

    引っ越しなどをせず1年間ずっと同じ場所に住んでいるという場合なら、1年分をまとめて按分したほうが楽ちんです。家賃以外の費用でも、毎月の使用割合がさほど変わらないものなら、期末にまとめて仕訳するとよいでしょう。

    家事按分のまとめ

    自宅兼事務所の家賃といった、事業とプライベート2つの側面をもつ費用は、家事按分によって一部を必要経費として計上できます。

    家事按分の対象となる主な費用

    • 自宅兼事務所の家賃や電気代など
    • 事業とプライベートの両方で使用している自動車のガソリン代や自動車税
    • 公私ともに利用している月極駐車場の賃料
    • 事業用の連絡手段としても使っているスマホの通信料金

    按分の計算では、事業用の割合を表す「按分比率」を使います。この割合は、第三者が見て合理性があり、納得できる数字でなくてはなりません。按分比率は、使用している面積や日数、時間など基準をもとに、事業主本人が設定をします。

    按分した金額を帳簿づけする際は、事業分を必要経費の勘定科目で、プライベートの分を「事業主貸」の勘定科目で記帳します。事業主貸とは、簡単にいえば生活費(事業に無関係の費用)であることを表す勘定科目です。

    監修

    田中税務会計事務所
    公認会計士・税理士・行政書士
    田中 雅明
    約30年の経験の中で、公認会計士、税理士はもちろん、弁護士、銀行系シンクタンク、保険会社、保険代理店、大手不動産会社等の強力なネットワークも持ち、皆様をトータル的にサポートする態勢が整った当事務所をご活用ください。