対象の個人事業主に最大100万円が支給される「持続化給付金」は、所得税の課税対象です。本記事では、事業所得を得ている個人事業主向けに、持続化給付金の記帳方法を解説しています。
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目次
持続化給付金の帳簿づけ
事業で使っている銀行口座に持続化給付金が振り込まれたら、以下のように帳簿づけします。
複式簿記の記帳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2020年9月25日 | 普通預金 1,000,000 | 雑収入 1,000,000 | 持続化給付金 |
持続化給付金は所得税の課税対象です。記帳する際は「雑収入」の勘定科目を用いましょう。消費税の税区分は「不課税」です。消費税の税区分に関しては、免税事業者(消費税を納付しない事業者)であれば気にすることはありません。
単式簿記の場合は、以下のように記帳します。
単式簿記の記帳例
日付 | 雑収入 | 摘要 |
---|---|---|
2020年9月25日 | 1,000,000 | 持続化給付金 |
「日付」は通知日?それとも入金日?
2020年内に入金されたのであれば、帳簿づけの日付は「入金日」でOKです。そうではなく、給付通知は2020年内で実際の入金日が2021年になる場合は、「通知日」のほうで「雑収入」を計上しましょう。この場合、実際の入金は2021年ですが、2020年の収入としてカウントする必要があるからです(>> 発生主義と現金主義)。
なお、青色申告で現金主義の届け出を承認されている方のみ、いずれの場合も「入金日」で雑収入を計上することができます。
【仕訳例】弥生・freee・マネーフォワード
持続化給付金について、「やよいの青色申告 オンライン」「freee」「マネーフォワード クラウド確定申告」による仕訳方法を紹介していきます。会計ソフトを使用する際の参考にしてください。
持続化給付金の入力例(弥生)
まずは「やよいの青色申告 オンライン」の「かんたん取引入力」でデータを登録するときの画面です。摘要には「持続化給付金」と入力しましょう。
持続化給付金の入力例(freee)
上のイメージは「freee」の「取引の一覧・登録(詳細登録)」です。freeeには摘要欄がないので、備考に「持続化給付金」と入力しておきましょう。自動的に「課税売上10%」の税区分が適用されてしまうので、「不課税」を選択してデータを登録します。
持続化給付金の入力例(マネーフォワード)
最後に「マネーフォワード クラウド確定申告」を見てみましょう。これは「振替伝票入力」でデータ入力するときの画面です。マネーフォワードにはこれとは別に「簡単入力」という入力フォームもあり、初心者にはそちらがおすすめです。
「雑収入」とは
持続化給付金は「雑収入」の科目で記帳します。これは本業の売上とは言えないような収入を指す科目です。持続化給付金に限らず、事業に関係して受け取った給付金・助成金・補助金は「雑収入」で帳簿づけするのが基本です。
引用
雑収入とは
空箱・作業くずなどの売却代金、仕入割引、リベート、取引先や使用人に対して事業上貸し付けた貸付金の利子、使用人の寄宿舎の使用料、買掛金の免除益など事業に伴って生ずる収入をいいます。
確定申告の際は、事業所得の「雑収入」として申告します。雑収入の記入欄は、白色申告では「収支内訳書」の1ページ目、青色申告なら「青色申告決算書」の2ページ目に設けられています。
白色申告の場合 (収支内訳書) |
青色申告の場合 (青色申告決算書) |
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個人事業主が受給できる持続化給付金は最大100万円ですが、その他にもし「家賃支援給付金(最大200万円)」なども受け取っていれば、それらの合計額を該当欄に記入します。後述の通り、この家賃支援給付金も持続化給付金と同様で、雑収入として扱います。
そのほか新型コロナ関連の給付金・貸付金
新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、持続化給付金のほかにもさまざまな給付金や貸付の制度が設けられました。ここでは代表的なものとして、以下3つの扱いを紹介しておきます。
- 特別定額給付金
- 家賃支援給付金
- 新型コロナウイルス感染症特別貸付
「特別定額給付金」は帳簿づけ不要
国民一人あたり10万円が支給される「特別定額給付金」は、基本的には帳簿づけの必要はありません。ただし、事業用口座に振り込まれたら「事業主借」の科目で記帳しておきましょう(>> 特別定額給付金の仕訳例)。
「家賃支援給付金」は「雑収入」で記帳する
テナント事業者などに支給される「家賃支援給付金」も、持続化給付金と同じく所得税の課税対象です。ですから、同様に「雑収入」で記帳します(>> 家賃支援給付金の仕訳例)。
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は「借入金」で記帳する
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」に限らず、事業のために貸付を受けたら「借入金」として処理します。会計上は収入として扱うのではなく「負債」となります。返済するときの利子は、経費として計上できます(>> 貸付を受けたときの仕訳例)。
まとめ – 帳簿づけのポイント
事業所得を得ている個人事業主の場合、持続化給付金は事業の収入としてカウントします。ただし、これは売上という性質のものではなく「雑収入」として扱います。いずれにしても、収入としての見え方が違うだけで、課税されることには変わりありません。
持続化給付金を帳簿づけする際のポイント
- 所得区分は「事業所得」
- 口座に振り込まれたら「雑収入」で記帳する
- 所得税の課税対象だが、消費税は「不課税」
- 帳簿づけの日付は基本的に入金日でOK
ちなみに、これまでの確定申告で収入を「給与所得」や「雑所得」で申告していた個人事業主も持続化給付金の対象です が、この場合は帳簿の作成・保存の義務がないので帳簿づけは必要ありません。