個人事業税を納めたときの記帳方法を、初心者向けにわかりやすく解説します。基本的には納付日に「租税公課」の勘定科目で記帳すればOKです。現金納付はもちろん、キャッシュレス決済で納付した場合の仕訳例も紹介しています。
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目次
「租税公課」の勘定科目で記帳する
個人事業税は、全額を必要経費に計上できます。実際に納付した日付で、「租税公課」の科目で経費計上しましょう。消費税区分は「不課税」です。
納付額は、自治体から届くお知らせに記載されています。納付が不要な個人事業主には、そもそもお知らせが届きません。
代表的な納付方法(タップで仕訳例へジャンプします)
本記事では、上記3つの納付方法を例に、納付時の仕訳例を紹介します。
仕訳例① 現金納付
個人事業税は、コンビニや役所の窓口で現金納付できます。以下は、8月分と11月分で、10万円ずつ納付した場合の仕訳例です。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年8月26日 | 租税公課 100,000 | 現金 100,000 | 個人事業税 納付 |
・ ・ ・ |
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20XX年11月22日 | 租税公課 100,000 | 現金 100,000 | 個人事業税 納付 |
このように、実際に納付した日付で経費計上します。なお、領収印つきの領収証書をもらったら、他の帳簿書類と同じように5年~7年保管しておきましょう。
帳簿書類の保存期間について
会計ソフトの記帳例
※ 画面は「やよいの青色申告 オンライン」のもの
「租税公課」は、確定申告で提出する収支内訳書・青色申告決算書に、デフォルトで備わっている科目です。なので、どの会計ソフトでもデフォルトで選択できます。
仕訳例② 口座振替
事前に口座振替を申し込むと、8月末・11月末に個人事業税が自動的に引き落とされます。申し込みの手続きは、最初の1回だけでOKです。自治体によっては、ネットからも申し込めます。
事業用口座から8月分・11月分が10万円ずつ引き落とされたとします。その場合は、実際に引き落とされた日付で、下記のように記帳します。
事業用の口座から引き落とされた場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年8月31日 | 租税公課 100,000 | 普通預金 100,000 | 個人事業税 納付 |
・ ・ ・ |
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20XX年11月30日 | 租税公課 100,000 | 普通預金 100,000 | 個人事業税 納付 |
「Pay-easy(ペイジー)」を利用してインターネットバンキングから納付した場合も、上記と同様に仕訳しましょう。
プライベート用の口座から納付した場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年8月31日 | 租税公課 100,000 | 事業主借 100,000 | 個人事業税 納付 |
・ ・ ・ |
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20XX年11月30日 | 租税公課 100,000 | 事業主借 100,000 | 個人事業税 納付 |
プライベート用口座から納付した場合は、上記のように仕訳します。「事業主借」は、簡単にいうと「プライベートのお金を事業に使いました」という意味の科目です。
ちなみに「事業用」と「プライベート用」の口座を分けていない人も、このように「事業主借」の科目で仕訳すればOKです。
事業主貸・事業主借とは?
仕訳例③ クレジットカード納付
地域によっては、クレジットカードでも個人事業税を納付できます。この場合は決済手数料を支払いますが、それも必要経費に計上できます。個人事業税の消費税区分は「不課税」で、手数料の部分のみ「課税」です。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年8月15日 | 租税公課 100,000 | 普通預金 100,800 | 個人事業税 納付 ○○カード |
支払手数料 800 | クレジットカード納付 決済手数料 |
上記は、8月分の個人事業税10万円をクレジットカードで納付し、決済手数料として800円(税込)を負担した場合の仕訳例です。これは簡易的な仕訳ですが、税務上はこの処理で問題ありません。
クレジットカード決済時の詳しい仕訳例はこちらポイント払いの詳しい仕訳例はコチラ
ちなみに、カードの種類によってはポイントがたまる場合があります。基本的にはポイント使用時のみ仕訳すればよいので、ポイント獲得時はひとまず仕訳不要です。
原則的な仕訳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2021年11月28日 | 租税公課 100,000 | 未払金 100,800 | 個人事業税 納付 ○○カード |
支払手数料 800 | クレジットカード納付 決済手数料 |
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2022年1月10日 | 未払金 100,800 | 普通預金 100,800 | ○○カード 引き落とし |
11月分に関しては、引き落とし日が翌年になるケースも多いです。その場合は、上記のように記帳しましょう。そうしないと、正しい「貸借対照表」が作成できません。
「未払金」は、負債の勘定科目です。つまり、カードの引き落とし日までは、カード会社に対して借金していると考えるわけです。
【補足】個人事業税を経費計上できる根拠は?
個人事業税は、納付した全額を必要経費として計上できます。国税庁が個人事業主向けに公開している「申告の手引き」にも、次のように記載されています。
引用
事業税、固定資産税、自動車税、登録免許税、印紙税などの税金…(中略)…が必要経費になります…(後略)…
青色申告の決算の手引き – 国税庁
※「白色申告者の決算の手引き」でも同様
個人事業税は、そもそも事業に対して課税される税金ですから、全額を必要経費と考えてOKです。一方、所得税や住民税は経費計上できません。税金によって、経費にできるもの・できないものがあるので注意しましょう。
経費にできる税金・できない税金について詳しく
まとめ
- 個人事業税は、全額を「租税公課」として経費計上する
- 基本的に納付した日付で記帳すればOK
- 個人事業税の納付月は、基本8月と11月の2回
- 現金納付、口座振替、クレジットカード納付などの方法を選べる
- カード納付して、引き落とし日が翌年になる場合、特別な仕訳が必要
- 消費税区分は「不課税」(クレジットカード納付の決済手数料は「課税」)
本記事では、個人事業税の基本的な仕訳方法について解説しました。普通に納付するだけなら、ここまでの知識で十分対応できます。延滞金が発生した場合や、随時課税などの特殊な仕訳については、こちらの記事を参考にしてください。