会計における「諸口」について、個人事業主向けにわかりやすく解説します。主に複式簿記の「仕訳帳」や「総勘定元帳」に登場する用語なので、青色申告者であれば知っておいて損はありません。
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目次
諸口(しょくち)とは
- 「複数の勘定科目をまとめています」という事を表す便宜的な文言
- 白色申告者は使わない
- 青色申告者は「総勘定元帳」を作成する際などに使うことがある
青色申告の簿記で「諸口」が使用されます。主な用途は下記のとおりです。
「諸口」の主な用途
仕訳帳 | 総勘定元帳 |
---|---|
1つの取引について、借方・貸方いずれかの勘定科目が複数になる際に使うことがある | 仕訳帳に記入した複合仕訳について、勘定科目をまとめて表す際に使う |
ここからは「仕訳帳」と「総勘定元帳」に分けて、諸口の使い方を順番に説明していきます。
諸口が使われる場面① 仕訳帳
- 借方、貸方いずれかの勘定科目が複数になる場合は使うこともある
- 帳簿の仕様上、複合仕訳ができない場合などにしか使わない
- クラウド会計ソフトなら仕訳時に「諸口」を使う必要はない
たとえば、売上から手数料を差し引いて入金された場合は、以下のように記帳するのが一般的です。このような仕訳を「複合仕訳」といいます。
複合仕訳の記帳例 -「諸口」を使わない
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年9月20日 | 普通預金 194,000 | 売掛金 200,000 | 8月分 カード 売上 |
支払手数料 6,000 | 8月分 カード 手数料 |
ただ、ごく稀に、帳簿の仕様上「複合仕訳」ができないこともあります。そのような場合は、下記のように「単一仕訳」で帳簿づけを行います。
単一仕訳の記帳例
「諸口」を使う場合 | 「諸口」を使わない場合 |
---|---|
「単一仕訳」の場合、1行ずつ借方・貸方の金額を対応させなくてはなりません。このとき、勘定科目の空欄部分を埋める目的で「諸口」を用いて記帳することがあるわけです。つまり「諸口」自体は、積極的な意味をもちません。
諸口が使われる場面② 総勘定元帳
- 複合仕訳で記帳した取引を、まとめて転記したいときに「諸口」を使う
- これによって、総勘定元帳の記載がスッキリする
- クラウド会計ソフトだと、複合仕訳の取引は自動的に「諸口」と表記される
仕訳帳に「複合仕訳」で記入した取引を、総勘定元帳へ転記する際に「諸口」を使います。下記のように相手科目は不明になってしまうのですが、これで構いません。取引が一行にまとまるので、総勘定元帳の記載自体はスッキリします。
クラウド会計ソフトを利用している人なら、入力した取引内容は、自動的に総勘定元帳へ反映されます。この際、勘定科目が複数になった取引については、上記のようにソフトが「諸口」として総勘定元帳へ転記します。
この例の諸口は「いろいろまとめました」ということを表す役割です。
会計ソフトを利用する場合
会計ソフトの場合、勘定科目が複数になる取引を入力する際は、基本的に「複合仕訳」の形式で登録することになります。下記は、携帯料金を家事按分し、通信費と事業主貸に計上した場合の入力例です。
① 取引入力画面
画像は「やよいの青色申告 オンライン」の操作画面
上記のように登録した取引情報は、自動的に総勘定元帳へと反映されます。
② 総勘定元帳の確認画面
画像は「やよいの青色申告 オンライン」の操作画面
このように、総勘定元帳で確認してみると、仕訳時に入力した「通信費」と「事業主貸」が、「諸口」にまとめられていることがわかります。
まとめ
諸口は「仕訳帳」や「総勘定元帳」で使われる文言です。実務上、仕訳帳で「諸口」を使う機会はほとんどありませんが、総勘定元帳では使ったほうがラクな場合も多いです。
「諸口」の主な用途
仕訳帳 | 帳簿の仕様上、複合仕訳ができない場合に使う 一般的な帳簿なら「諸口」を使う機会はほとんどない |
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総勘定元帳 | 仕訳帳へ複合仕訳で記帳した取引を転記するときに使う 総勘定元帳を自作する場合は「諸口」を使ったほうがスッキリする |
手書きやExcelで帳簿づけをしている人は、複合仕訳の取引を総勘定元帳へ転記する際に「諸口」を使うとよいでしょう。とはいえ、無理に使わなくても問題はありません。
クラウド会計ソフトを使っていると、自動作成された総勘定元帳に「諸口」と記載されていることがあります。これは「2つ以上の勘定科目をまとめました」ということを表すにすぎません。