税金を記帳する際の「日付」に焦点を当て、重要ポイントをまとめました。個人事業主が納付する税金から「個人事業税」「固定資産税」「消費税」「所得税」の4種類をピックアップし、その仕訳例を紹介します。
INDEX
目次
税金の記帳タイミングって?
事業に関する税金などを納めたら「租税公課」として経費計上できます。このとき、納付税額が発生した日付で帳簿づけしましょう。本記事では、その日付とは具体的にいつのことなのか、税金の種類別に紹介していきます。
必要経費にできない所得税や住民税などは、納税しても記帳する必要はありません。もし事業用のお金から納付した場合は「事業主貸」の勘定科目で記帳しておけばOKです(詳しくは後述)。
なお、本記事でこれから例示する税金のうち、個人事業税は全額を必要経費にできますが、固定資産税は事業に関係する部分しか経費計上が認められません。ですが、あくまでも今回は「費用を計上する日付」に力点をおいて説明するため、いずれも全額を経費にできる場合の仕訳例を掲載しています。
>> 個人事業主が納める税金の仕訳方法
仕訳例① 個人事業税
個人事業税の納税通知書は、毎年8月頃に送られてきます。納付は一括払いか、分割払い(8月と11月)のどちらかです。記帳の際、日付欄には実際に納付をした日を記入しましょう。
【仕訳例】個人事業税を一括払いで現金納付
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年8月23日 | 租税公課 100,000 | 現金 100,000 | 個人事業税納付 |
ちなみに、個人事業税のように行政側から納税額が通知される税金は、通知書が届いた日付(賦課決定日)で経費計上するのが原則ではあります。しかし、実務的には納付した日付で経費計上して問題ありません。
仕訳例② 固定資産税
事務所や店舗を事業用として所有している場合は、その固定資産税を必要経費に計上できます。今回は、固定資産税を分割払いしたケースを例に説明します。ちなみに、自宅兼事務所(自宅に仕事専用スペースがある)なら、家事按分もできます。
税金を経費計上する日付は「税額が決定した日」か「実際に納付した日」のどちらかです。特に分割払いを選んだ場合、このどちらを選択するかによって、経費計上する年が異なります。なお、一度選択したら、それ以降も同じ方法で記帳しなければなりません(継続性の原則)。
方法1. 税額が決定した日に必要経費として処理をする
まず、納税通知書を受け取った日付で以下のように記帳します。この方法なら、通知書を受け取った日にまず全額を「租税公課」に計上しているので、翌年の2月に振り込む4期目の分も2021年分の必要経費になります。
【仕訳例】通知書を受け取った日付で納付額を必要経費に計上
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年5月21日 | 租税公課 60,000 | 未払金 60,000 | 固定資産税 |
そして、6月・9月・12月・翌2月と税金を事業用口座から振り込むたびに、以下のとおり「未払金」を消しこんでいきます(消込)。
【仕訳例】固定資産税を事業用口座から振り込んだ
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年6月30日 | 未払金 15,000 | 普通預金 15,000 | 固定資産税の支払い |
・ ・ ・ |
|||
2024年2月28日 | 未払金 15,000 | 普通預金 15,000 | 固定資産税の支払い |
方法2. 税金を納付した日付で必要経費に計上する
こちらは、納税通知書を受け取った日付で記帳せず、納付するたびに必要経費に計上していく方法です。以下のように、納付日に「租税公課」として記帳するので、2022年の2月に納付する4期の分は2022年分の必要経費として扱います。
【仕訳例】固定資産税を事業用口座から振り込んだ
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年6月30日 | 租税公課 15,000 | 普通預金 15,000 | 固定資産税 |
・ ・ ・ |
|||
2024年2月28日 | 租税公課 15,000 | 普通預金 15,000 | 固定資産税 |
仕訳例③ 消費税
消費税を税務署へ納付するのは、課税事業者だけです。基本的に、開業してから2年間は納付義務のない免税事業者でいられます。消費税を納付する仕訳は、免税事業者の方には関係ないので、読み飛ばしてもらって構いません。
消費税の記帳方法には、税込経理方式と税抜経理方式の2つがあります。この方式によって、記帳するタイミングや使用する勘定科目が異なります。
税込経理方式の場合
納税額を自分で計算して申告する税金は、申告書を提出する日に必要経費に計上します。消費税の申告期間は、対象となる年の翌年1月1日~3月31日なので、本年分の納付金額は翌年の必要経費として扱うことになります。
【仕訳例】2022年分の消費税を現金で納付
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2023年3月31日 | 租税公課 500,000 | 現金 500,000 | 消費税納付 |
例外として、決算時(個人事業の場合は12月)に「未払消費税等」の勘定科目で計上していれば、その年の必要経費として扱うことができます。どちらにせよ、一度決めたら翌年以降も同じ方法で記帳をしなくてはなりません(継続性の原則)。
税抜経理方式の場合
この方式では、消費税に対して「租税公課」の勘定科目を使うことはありません。税抜経理方式では、消費税の課税取引があるたびに「仮受消費税等」と「仮払消費税等」という勘定科目を使用します。そして、決算時に差額を計算し、納税額を確定します。
>> 税込経理方式と税抜経理方式の違い【個人事業の消費税】
仕訳例④ 所得税(経費にできない税金)
所得税、住民税、国民年金保険料、国民健康保険料、相続税、贈与税、延滞税、加算税
所得税や住民税などの税金は、納付しても帳簿づけする必要はありません。ただ、事業用のお金から納付した場合は「事業主貸」の勘定科目で記帳しておきましょう。帳簿の上では、事業主の私的な支出とみなすわけです。
【仕訳例】所得税を事業用の口座から納付
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月31日 | 事業主貸 100,000 | 普通預金 100,000 | 所得税納付 |
所得税にかぎらず、事業用の銀行口座からプライベートな支出をしたときには、事業主貸の勘定科目を使って記帳します。
国民年金と国民健康保険について – 控除の適用タイミング
必要経費として扱えないもののなかでも、国民年金と国民健康保険の保険料は、社会保険料控除の対象です。毎年1月から12月までに納付した金額を、確定申告の際に所得控除の一つとして差し引くことができます。
これらの保険料は、基本的には定められた金額を毎月納付していきます。ただ、希望すれば最大2年分まで、先にまとめて納付しておくことも可能です(前納)。
前納 – 国民年金の場合
国民年金保険料の前納は、6ヶ月・12ヶ月(1年)・24ヶ月(2年)などから選べます。現金払いの場合、この3つの期間だけでなく、任意の月分から当年度末(もしくは翌年度末)までの分の前納も可能です。
2年前納を選んだ場合、保険料は全額をその年の控除額にすることもできますし、3年にわたって分割して控除適用することもできます。
前納 – 国民健康保険の場合
自治体にもよりますが、国民健康保険の保険料も前納できる場合があります。だいたい、1年分の前納ができることが多いです。
まとめ
個人事業の会計期間は、原則1月1日~12月31日です。どう帳簿づけしても同じ年内の日付になるのであれば、日付の選択で神経質になる必要はありません。ただ、記帳する日付によって費用を計上する年が変わってしまうものについては慎重に対処しましょう。
税金を帳簿づけする際のポイント
- 経費計上できる税金は「租税公課」の勘定科目で記帳する
- 経費にできない税金を記帳する場合は「事業主貸」を使う
- 基本は実際に納付した日付で計上すればOK
- 固定資産税のように分割納付で期をまたぐものは慎重に
- 消費税は、選択する方式によって記帳タイミングが異なる
税金のなかでも、固定資産税のように分割納付で年をまたいでしまうものがあります。この場合は、どのタイミングで経費計上するかをまず自分で決めます。
税額の決定日で経費計上すれば、全額をその年の必要経費にできます。納付日ごとに経費計上する場合、翌年に納付した分は翌年の必要経費になります。一度決めた計上方法は変更することなく、翌年以降も同じように計上しましょう。