10万円の「特別定額給付金」は、申請したすべての住民が受け取れます。これは、所得税の課税対象ではないので、仕訳は基本的にしなくてOKです。もし、このお金を事業に充てるのであれば「事業主借」として仕訳をしましょう。
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基本的に仕訳不要!
「特別定額給付金」は、基本的に仕訳は不要です。所得税の対象にならない「非課税」の収入なので、所得にはカウントしないのです(新型コロナ税特法 第4条)。また、事業の対価として受け取るものではないので、消費税区分は「不課税」です。
ただし、55万円・65万円の青色申告特別控除を狙っている個人事業主の場合、主に以下の2パターンにおいては仕訳をしておきましょう。いずれも「事業主借」で処理します。
- 事業用口座に入金されたとき
- プライベート用の口座から事業のために出金したとき
持続化給付金は「雑収入」として記帳する
「持続化給付金」は、売上が半減した個人事業主などを救済するための給付金です。こちらは、本記事で紹介している「特別定額給付金」とは違って、所得にカウントされます。よって、持続化給付金は「雑収入」として仕訳しておきましょう。
仕訳例① 事業用口座に入金されたとき
家族4人分の特別定額給付金40万円が、事業用の口座に振り込まれたとします。この場合、次のように「事業主借」で仕訳をします。簡単に言うと「これは事業の売上などではなく、ポケットマネーからの充当です」という意味の記帳です。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2020年6月1日 | 普通預金 400,000 | 事業主借 400,000 | 特別定額給付金 |
特別定額給付金は、申請時に入金先の口座を指定できます。すべて事業のために使う予定なら、最初から事業用口座に入金してもらったほうが楽です。事業用と私用を一緒にしている口座に振り込まれた場合も、上記の仕訳と同様に処理します。
一方、事業用の資金に余裕がある場合など、使いみちが決まっていないなら、ひとまずプライベート用の口座に入金してもらいましょう。そうすれば、ひとまず帳簿づけは不要です。
仕訳例② 事業のために使ったとき
特別定額給付金をプライベート用の口座で受け取った場合、その時点では帳簿づけをする必要はありません。その後、もしプライベート用の口座から直接、事業のために支出をしたときは「事業主借」で仕訳をしましょう。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
2020年6月29日 | 地代家賃 200,000 | 事業主借 200,000 | 事務所家賃 7月分 |
上記は、事務所の家賃20万円をプライベート用の口座から支払った場合の仕訳です。「事務所の家賃を払ったけど、ポケットマネーからの支払いです」という意味の仕訳です。
単式簿記の記帳例
単式簿記においても、基本的には帳簿づけは不要です。ただ、事業用口座に入金された場合は、預金通帳と帳簿の数字を一致させておいたほうがよいです。以下は、特別定額給付金として10万円が、事業用口座に振り込まれた場合の例です。
預金出納帳への記帳例
日付 | 科目 | 預入 | 摘要 |
---|---|---|---|
2020年6月1日 | 事業主借 | 100,000 | 特別定額給付金 |
簡易簿記の青色申告者であっても、ふだんから銀行口座での取引が多い人は、預金出納帳を作成しておくとよいです。なお、現金出納帳しか作っていない人は、上記のような記帳は必要ありません。もし事業用に引き出して使ったら、そのときに記帳しましょう。
白色申告者の場合
白色申告において、現金出納帳や預金出納帳は「任意帳簿」なので、必須ではありません。事業の収入や必要経費を記録した「法定帳簿」さえあれば問題ないのです。したがって、任意で預金出納帳などを作っている人以外は、何も記帳しなくて構いません。
>> 白色申告の帳簿づけを分かりやすく!
その他の給付金について – 新型コロナ関連など
特別定額給付金のほかにも、いくつか「非課税」の給付金などは存在します。一方で、新型コロナ関連なのに「課税」される給付金や助成金などもあります。下表では、現時点での主な給付金など(返済不要なもの)を、課税・非課税に分けて整理しておきます。
課税 | 非課税 |
---|---|
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上表で非課税となっているものは、いずれも特別定額給付金と同じように処理すればOKです。課税扱いとなる給付金の仕訳などについては、以下のリンクを参考にしてみてください。
>> 新型コロナで助成金や給付金を受け取ったときの税金や仕訳は?
まとめ
特別定額給付金は、プライベート上で管理している限り、一切の記帳が不要です。事業で使ったりするときは、以下のポイントを押さえておきましょう。
特別定額給付金の仕訳 – 重要ポイント
- 基本的に仕訳はしなくてよい
- 事業用口座に入金されたら「事業主借」で仕訳する
- プライベート用口座に入金された分を、事業に使ったら「事業主借」で仕訳する
- 事業用口座に入金された分を、プライベートで使ったら「事業主貸」で仕訳する
- 事業主借と事業主貸の金額は、税額には影響しない
特別定額給付金はそもそも非課税の収入です。この仕訳を多少間違ったからといって、税額には直接影響しません。なので、それほど神経質に考える必要はありません。それでも不安な方は、会計ソフトの力を借りるのもアリでしょう。