売上の仕訳例 – 先払い・後払いで受け取る代金の記帳方法

更新日: 2020/08/24 税理士監修
売上の仕訳例 – 先払い・後払いで受け取る代金の記帳方法

本記事では、主に原則にもとづいた売上の仕訳方法について説明しています。後半では「期中現金主義」による簡易的な処理方法も説明していますが、まず原則的な方法を理解した上で行うようにしましょう。

INDEX

目次

    まずは基本を理解しよう

    売上の会計処理をしっかり理解するために、まずは「売上を計上すべき日」を知っておきましょう。国税庁の指針に従えば、売上は下記の日付で帳簿に反映させます。

    国税庁が示す売上の計上基準【簡易版】

    売上の性質 売上を計上すべき日
    商品や製品の販売による売上 商品や製品を顧客に引き渡した日
    サービスの提供による売上 サービスの提供が完了した日
    請負契約による売上 目的物を引き渡した日 or サービスが完了した日

    ※契約内容等によっては異なる場合もある

    >> 売上の計上基準について詳しく

    「売上を計上すべき日」に代金を受け取る場合、仕訳の方法はシンプルです。たとえば、顧客に商品を引き渡し、その日のうちに代金を受け取ったら下記のように仕訳をします。

    売上の仕訳(基本形)

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月10日 現金 20,000 売上 20,000 商品A

    「売上を計上すべき日」と「代金を受け取る日」がズレる場合は、原則に従えば複数の仕訳が必要になります。本記事では、そのようなケースを以下の2パターンに大別して説明します。

    1. 「商品の引渡し」や「サービスの完了」より先に、代金を受け取る場合
    2. 「商品の引渡し」や「サービスの完了」の後から、代金を受け取る場合

    しかし、①と②に該当する取引も、実務の上では一度の仕訳で処理することが多いです(期中現金主義)。これについては、後ほど詳しく説明します。

    ① 先に代金を受け取る場合

    該当する主なケース
    ・商品や製品を引き渡す前に代金を受け取る場合
    ・サービスの提供が完了する前に代金を受け取る場合
    ・請負契約で、目的物を引き渡す前に報酬を受け取る場合
    ・請負契約で、目的となるサービスが完了する前に報酬を受け取る場合

    先に代金を受け取るケースでは、原則的には以下のような流れで仕訳を行います。たとえ代金を受け取っていても、商品やサービスの提供が済むまで売上は記帳しません。

    前受金と売上の仕訳の流れ(代金の先払い)

    代金を受け取った日に、いったん「前受金(まえうけきん)」という勘定科目で「負債」を計上しておきます。なぜ負債かというと、この時点で「商品・サービスを提供する義務」を負うためです。最終的には、売上の計上と共にその負債が解消されます。

    以下では、商品の販売による売上を例に、仕訳の流れを詳しく説明します。(サービスの提供や請負契約による売上でも、流れは同様です)

    【仕訳例】先払いによる商品の販売

    5月10日にインターネットで商品(3万円)の注文を受け、同時に代金が振り込まれました。この商品を5月12日に発送するとしたら、原則的な仕訳は以下のとおりです。

    まず、代金が振り込まれた5月10日の日付で下記のように仕訳をします。

    代金が振り込まれた日

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月10日 普通預金 30,000 前受金 30,000 商品B

    この時点では、まだ売上を計上しません。「普通預金が30,000円増えたけど、商品を提供する前に入金されたお金(前受金)です」という意味の仕訳です。

    続いて、商品を発送した5月12日の日付で、下記のように仕訳をします。

    商品を発送した日

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月12日 前受金 30,000 売上 30,000 商品B

    このように、商品を発送した日付でようやく売上を計上します。それと同時に、先に入金されたお金の役割は果たしたので、前受金を1度目の仕訳と反対側につけて消し込みます。

    ちなみに、このケースでは商品の発送日に売上を計上しましたが、これは「出荷基準」という考え方で、あくまで計上基準の一例です。他にも「着荷基準」や「検収基準」などの考え方があり、取引の性質に合った基準で売上を計上する必要があります。

    ② あとから代金を受け取る場合

    該当する主なケース
    ・商品や製品を引き渡したあとに代金を受け取る場合
    ・サービスの提供が完了したあとに代金を受け取る場合
    ・請負契約で、目的物を引き渡したあとに報酬を受け取る場合
    ・請負契約で、目的となるサービスが完了したあとに報酬を受け取る場合

    あとから代金を受け取る場合、原則的な仕訳の流れは以下のとおりです。まだ代金を受け取っていなくても、商品やサービスの提供が済んだ時点で売上を記帳します。

    売掛金と売上の仕訳の流れ(代金の後払い)

    「売掛金(うりかけきん)」は「資産」の勘定科目で、簡単に言うと「お金を受け取る権利」を表します。代金を受け取るまでの一時的な処理なので、代金を受け取った日付で消し込みの仕訳を行います。

    以下では、サービスの提供による売上を例に、具体的な仕訳の流れを説明します。(商品の販売や請負契約による売上でも流れは同様です)

    【仕訳例】後払いによるサービスの提供

    5月1日~10月31日の期間で、顧客にコンサルティングサービスを提供するとします。その代金(60万円)を、契約期間終了後の11月10日に受け取るなら、原則的には以下の流れで仕訳を行います。

    まず、サービスの提供が完了した10月31日の日付で、下記のように仕訳します。

    サービスの提供が完了した日

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年10月31日 売掛金 600,000 売上 600,000 C社コンサル料

    まだ実際に代金を受け取ったわけではないので、借方を「現金」や「普通預金」にはできません。そこで、ひとまず「売掛金」という資産を計上しておきます(「後でお金をもらう権利」という意味の資産)。

    続いて、代金が振り込まれた11月10日の日付で、下記のように仕訳をします。実際にお金を受け取ったので、ここで「売掛金」を消し込むわけです。

    代金が振り込まれた日

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年11月10日 普通預金 600,000 売掛金 600,000 C社コンサル料

    ちなみに、特に長期のサービスにおいては、月払いなどで代金を受け取ることもあります。そのような場合、契約内容や慣習によっては、月ごとの入金日などに売上を計上します。必ずしも「サービスが完了した日」に売上を計上するわけではないのです。

    これでもOK!- 簡易的な会計処理について

    じつは、前述の①や②に該当するケースでも、取引が年をまたがなければ「代金を受け取った日」に売上を計上してOKです(期中現金主義)。その場合、前受金や売掛金の処理はせず、冒頭で示した基本形のように、一度の仕訳で売上を処理します。

    「期中現金主義」とは
    期中はお金の動きを基準とした簡易的な会計処理(現金主義による会計処理)を行いつつ、年をまたぐ取引だけ原則的な方法で処理すること。年をまたぐ取引まで簡易的に処理するのは、税額計算に影響が出てしまうためNG(特例の適用事業者を除く)。
    >> 現金主義の考え方について詳しく

    たとえば、4月12日に商品を引き渡して、代金が5月20日に振り込まれるとします。この場合、引渡し日と入金日のどちらで売上を計上しても、結局は同じ年の売上としてカウントされます。つまり、税額に影響がでないので、1回で仕訳して問題ないのです。

    ただし、年をまたぐ取引については、必ず「商品を引き渡した日」や「サービスが完了した日」に売上を計上し、前受金や売掛金の処理を行わなくてはなりません。そうしないと、その年の売上金額にズレが生じて、税額を正確に計算できなくなってしまいます。

    期中現金主義による売上計上の考え方

    ちなみに、期中現金主義による会計は、必要経費の会計処理についても適用できます。いずれにしても、年をまたぐ取引まで簡易的に処理してしまわないよう気をつけましょう。

    まとめ – 実務的な売上の仕訳方法

    期中現金主義の考え方で会計を行うなら、ほとんどの売上はシンプルな仕訳で処理できます。「商品を引き渡した日」や「サービスが完了した日」に関係なく、代金を受け取った日付で下記のように1回で仕訳します。

    日付 借方 貸方 摘要
    20XX年5月20日 普通預金 50,000 売上 50,000 商品D

    ただし先述のとおり、年をまたぐ取引に関しては、原則的な方法で処理しなくてはなりません。この場合は基本2回の仕訳が必要になり、その流れは「代金を先に受け取るケース」と「代金をあとから受け取るケース」で異なります。

    代金を先に受け取る場合

    当年中に代金を受け取っておいて、商品の引き渡しやサービスの完了が翌年になるときは、以下のような流れで仕訳をします。受け取った代金は翌年の売上としてカウントするので、当年分の確定申告では売上に含めないよう気をつけましょう。

    前受金と売上の仕訳の流れ(翌年分の売上)

    代金をあとから受け取る場合

    当年中に商品の引き渡しやサービスの提供が完了していても、代金を受け取るのが翌年になるときは、以下のような流れで仕訳をしましょう。当年中には受け取っていない代金でも、当年の売上にカウントして確定申告することになります。

    売掛金と売上の仕訳の流れ(当年分の売上)

    なお、どの時点をもって「商品を引き渡した」「サービスの提供が完了した」と見なすべきかは、なかなか一概に言えません。個々のビジネスに応じて、合理的な基準で考える必要があります。

    監修

    柴田会計事務所
    税理士
    柴田 裕士
    1983年生まれ、千葉県出身。高校卒業後にプロレスラーを目指し大阪プロレスに入門するが怪我によりプロレスラーになるのを断念した後、税理士試験を通過し税理士となった異色の経歴を持つ。現在は東京都板橋区にて10人規模の税理士事務所を経営している。