青色申告特別控除とは?65万円控除の新要件など

更新日: 2020/08/28
青色申告特別控除とは?65万円控除の新要件など

「青色申告特別控除」は青色申告者だけが受けられるおトクな控除です。控除額には10万・55万・65万の3パターンがあり、クリアする要件によって適用される金額が異なります。

INDEX

目次

    青色申告特別控除とは?

    「青色申告特別控除」は、青色申告を行う個人事業主だけが受けられる特殊な控除です。控除額は10万円・55万円・65万円の3種類で、金額が上がるほど要件が厳しくなります。

    青色申告特別控除の主な要件

    10万円控除 55万円控除 65万円控除
    • 青色申告をする
    • 青色申告をする
    • 複式簿記で記帳する
    • 確定申告期限を守る
    • 青色申告をする
    • 複式簿記で記帳する
    • 確定申告期限を守る
    • 電子申告 or 電子帳簿保存

    2019年分の確定申告まで、青色申告特別控除の控除額は10万円か65万円の2択でした。ただ、65万円控除の要件に電子申告などが加わる関係で、新たに55万円控除の選択肢が増えています。

    ちなみに、現金主義による所得計算を特別に認められている事業者は、10万円の控除しか受けられません。とはいえ、該当者は少数なので、現金主義を選択する届出を提出していなければ気にしなくてOKです。

    青色申告特別控除が適用される流れ

    所得税の金額は、おおよそ以下のような流れで算出されます。青色申告特別控除の金額が大きいほど、所得税額を抑えられるわけです。

    所得税算出のおおまかな流れ

    ① 10万円控除の要件

    10万円控除の要件は、強いて言えば「青色申告をしていること」だけです。基本的には、55万円・65万円控除の要件を満たせなかった青色申告者が、10万円控除を受けることになります。

    ただ、そもそも所得が少ないと、大きな控除を受けてもあまり意味がありません(青色申告特別控除の差し引きで赤字になることはないため)。なので、そのような場合は、作業面の手間を避けてあえて10万円控除を狙うのもアリです。

    貸借対照表の記入は不要

    10万円控除の場合でも、確定申告では「青色申告決算書」を提出します。が、4ページ目にある「貸借対照表」を記入する必要はありません。ただし、55万円・65万円控除を受ける際には、この記入が必須になります。

    ② 55万円控除の要件

    55万円控除を受けるためには、青色申告を選択した上で、以下3つの要件をすべてクリアする必要があります。1つでも満たせなかった場合は、自動的に10万円控除が適用されます。

    1. 事業所得を得ている
    2. 正規の簿記の原則に従って、複式簿記で帳簿づけをしている
    3. 確定申告書類を申告期限内に提出する

    1. 事業所得(または事業的規模の不動産所得)を得ていること

    ほとんどの個人事業主は「事業所得」を得ているので、この要件はあまり気にしなくてOKです。事業所得がなくても、“事業”と呼べるような規模で不動産所得を得ていれば、この要件をクリアできます。

    2. 複式簿記で帳簿づけをしていること

    複式簿記とは、取引の“原因と結果”を記録する、ちょっと難しい記帳方式のことです。55万円以上の特別控除をねらう際は、この要件が一番のハードルになるでしょう。ただ、会計ソフトを使えば、そこまで苦労せずに複式簿記が作れます。

    3. 確定申告書類を申告期限内に提出する

    確定申告を期限内(原則3月15日まで)に済ませましょう。青色申告の提出書類は、主に青色申告決算書と確定申告書Bの2つです。なお、55万円以上の控除を受けるためには、青色申告決算書4ページ目の「貸借対照表」まで記入する必要があります。

    ③ 65万円控除の要件

    マックスの65万円控除を受けるためには、55万円控除の要件をクリアした上で、さらに「電子申告」か「電子帳簿保存」のどちらかを行う必要があります。これは、2020年分の確定申告から追加された、新しい要件です。

    1. 事業所得を得ている
    2. 正規の簿記の原則に従って、複式簿記で帳簿づけをしている
    3. 確定申告書類を申告期限内に提出する
    4. 電子申告か電子帳簿保存を行う ←NEW!!

    個人事業主なら、ひとまず電子申告を選択するのが無難です。電子帳簿保存は、現時点では非常にハードルが高く、個人事業向けの制度とは言えません。

    ここで言う「電子申告」とは、e-Tax(イータックス)と呼ばれるシステムを利用して、所得税の確定申告をオンラインで行うことを指します。準備に少し手間がかかりますが、慣れてしまえば書面での確定申告よりラクに済ませられます。

    一方「電子帳簿保存」は、主要簿(仕訳帳や総勘定元帳)を電子データの状態で保存することを指します。単純に「パソコンで帳簿づけしていればOKOK」というわけではなく、厳密なルールに従う必要があるので、どうしても導入には大きな手間がかかります。
    >> どっちがいい?電子申告と電子帳簿保存について

    どのくらい節税できる?- 控除額ごとの比較

    あくまで一例ですが、東京都在住の個人事業主を想定して、青色申告特別控除でどれほど節税できるか計算してみました。以下は、所得(収入 – 経費)をそれぞれ100万・300万・500万と仮定したときの、所得税と住民税の合計額です。

    所得税・住民税の合計額

    控除なし
    (白色申告)
    青色申告
    10万円控除
    青色申告
    55万円控除
    青色申告
    65万円控除
    所得100万 40,700 25,600 2,500 0
    所得300万 316,100 297,500 229,500 214,400
    所得500万 733,000 702,600 568,800 548,600

    単位:円

    基本的に、所得が増えるほど節税額も大きくなります。とくに所得500万円の場合には、10万円控除と65万円控除で、納税額が15万円以上も違ってきます。

    一方、55万円控除と65万円控除の差はそこまで大きく表れないので、電子申告や電子帳簿保存が面倒なら、あえて55万円控除をねらうのもアリでしょう。節税額の比較について、詳しくは下記のページをご覧ください。
    >> 青色申告特別控除でどのくらい節税できる?実際に計算してみた

    控除額の申告方法

    確定申告の際、青色申告特別控除の控除額は青色申告決算書確定申告書Bの両方に記入します。まず青色申告決算書の2ページ目で控除額の計算をしてから、他の欄を記入しましょう。

    令和元年分以降用 青色申告決算書「青色申告特別控除額の計算」

    青色申告特別控除を引く前の所得金額が控除額より少ない場合は、所得金額がゼロになるように、ここで控除額を調整するということ。控除額が決まったら、以下の2箇所を記入しましょう。

    青色申告決算書の1ページ目 確定申告書B 第一表
    令和元年分以降用 青色申告決算書「青色申告特別控除額の計算」 令和元年分以降用 確定申告書B「青色申告特別控除額」

    ちなみに、青色申告特別控除の控除額は、開業年なども月割りで計算する必要がありません。一年の途中で開業しても、その年分の確定申告では10万円か55万円か65万円の控除を受けられるということです。

    まとめ – 青色申告特別控除の重要ポイント

    青色申告特別控除は、クリアする要件によって控除額が異なります。控除額は10万円・55万円・65万円の3パターンで、それぞれの主な要件は以下のとおりです。

    青色申告特別控除の主な要件

    10万円控除 55万円控除 65万円控除
    • 青色申告をする
    • 青色申告をする
    • 複式簿記で記帳する
    • 確定申告期限を守る
    • 青色申告をする
    • 複式簿記で記帳する
    • 確定申告期限を守る
    • 電子申告 or 電子帳簿保存

    55万円以上の控除をねらうなら、複式簿記が一番のハードルになるでしょう。とはいえ、会計ソフトを活用すれば、簿記の知識がなくても必要な帳簿をカンタンに作れます。

    また、実際に控除を受ける際には、以下のような点にも注意しましょう。

    青色申告特別控除の重要ポイント

    • 10万円控除なら決算書の「貸借対照表」の記入は不要
    • 55万円か65万円控除なら「貸借対照表」の記入が必須
    • 控除は所得税、住民税、国民健康保険料に反映される
    • 個人事業税、国民年金保険料の額には影響しない
    • 現金主義の届出をしている場合は10万円控除しか受けられない

    なお、65万円控除をねらうなら、ひとまず電子申告を選択するのがおすすめです。電子帳簿保存の実施には厳密なルールが定められており、どうしても手間がかかってしまいます。「パソコンで帳簿づけしていればOK」というわけではないので注意しましょう。