2020年分の確定申告から、65万円の青色申告特別控除に新たな要件が追加されました。本記事では、すでに「従来の要件はバッチリだよ!」という個人事業主に向けて、これからやるべきことを説明します。
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目次
65万円控除の新要件
2020年分の確定申告から、65万円の青色申告特別控除を受けるには「電子申告」か「電子帳簿保存」の実施が必須になりました。従来の要件を満たすだけでは、55万円の控除しか受けられません。
その年分の確定申告において「電子帳簿保存」で65万円控除を受けるには、その年の9月30日までに申請を行う必要があります(新規開業の場合を除く)。
- そもそも「電子申告」と「電子帳簿保存」を比べると、個人事業主にとっては電子申告のほうが断然ラク。なので、電子帳簿保存の申請期限が過ぎたからといって特に問題はなく、いずれにしても電子申告を選択するのがベター。
従来の要件を満たせるなら、あとは「電子申告」の準備を済ませればOKというわけです。以降では、必要な準備について説明します。
【確認】電子申告の方法
電子申告の方法は、下記の2パターンに大別できます。ちなみに「確定申告書等作成コーナー」とは、国税庁が運営するウェブサイトの名称です。
- ウェブ上の「確定申告書等作成コーナー」でデータを手入力して送信する
- 会計ソフトから出力したデータを「e-Taxソフト」等に取り込んで送信する
どちらのパターンでも、基本的にはマイナンバーカードの読み取りによる個人認証が必要です(マイナンバーカード方式)。しかし、現状「確定申告書等作成コーナー」を利用する方法なら、マイナンバーカードなしでも電子申告ができます(ID・パスワード方式)。
電子申告を行うまでに必要な準備は、この方式の違いによって大きく異なります。
マイナンバーカード方式 | ID・パスワード方式 | |
---|---|---|
認証方法 | カードに内蔵された「電子証明書」を読み取る | 事前に発行したIDとパスワードを入力する |
必要な準備 | ・マイナンバーカードの取得 ・ICカードリーダーの用意 |
・税務署での簡単な事前手続き |
備考 | カードの申請〜発行に 基本1~2ヶ月かかる (3ヶ月程度かかる自治体も) |
税務署での手続きは その日に完了する (早ければ10分程で済む) |
電子証明書が内蔵されたマイナンバーカードを持っている人は、「マイナンバーカード方式」で電子申告ができます。電子証明書は、マイナンバーカードを作るときに拒否をしない限り、デフォルトで内蔵されることになっています。
カードを持っていない人は、いそいで発行の申請をするか、「ID・パスワード方式」の準備をしましょう。カードは通常1~2ヶ月で発行できますが、3ヶ月程かかる場合もあるので、確定申告期限に遅れないよう注意が必要です。
必要な準備 – マイナンバーカードを持っている場合
すでにマイナンバーカードを持っている人は、カードを読み取るための「ICカードリーダー」を用意しましょう。ICカードリーダーは、Amazonや家電量販店で2,000円前後で購入できます。
ただ、ひとくちに「ICカードリーダー」と言っても、マイナンバーカードの読み取りに対応していない機種もあるので注意しましょう。
>> ICカードリーダライタのご用意 – 公的個人認証サービス ポータルサイト
-
WindowsパソコンとAndroidスマホの組み合わせなら、スマホをカードリーダーの代わりとして使えるケースが増えている。(現状、MacやiPhoneは未対応)
>> スマホをICカードリーダーの代わりに使う方法
マイナンバーカードとICカードリーダーをそろえたら、電子申告の準備はあらかた完了です。あとは「確定申告書等作成コーナー」や「e-Taxソフト(WEB版)」にアクセスして、指示のとおりにセットアップを済ませれば、電子申告ができます。
あえて「ID・パスワード方式」を選択してもOK
マイナンバーカードを持っていても、税務署で手続きを行えば「ID・パスワード方式」で電子申告ができるようになります。「カードリーダーを買うお金がもったいない」「セットアップが面倒」などという人は、以降の説明を参考にしてください。
必要な準備 – マイナンバーカードを持っていない場合
マイナンバーカードを持っていない人は、まず「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」のどちらで電子申告をするか決めましょう。それ次第で、これからやるべきことが大きく変わってきます。
- マイナンバーカード方式を選ぶ場合……早めにカードの発行申請を!
- ID・パスワード方式を選ぶ場合 …………直前に準備を始めても大丈夫
※ ID・パスワード方式を選べるのは「確定申告書等作成コーナー」を使う場合のみ
マイナンバーカード方式を選ぶ場合
マイナンバーカード方式を選ぶなら、確定申告期限までに受け取れるよう、時間に余裕をもってカードの発行申請をしておきましょう。通常は1~2ヶ月で発行されますが、近頃はもっと時間がかかるケースも少なくありません。(詳しくは後述)
カードの発行が間に合ったら、前述の「必要な準備 – マイナンバーカードを持っている場合」で説明したように、ICカードリーダーなどの準備を進めます。もし間に合わなかったら、ID・パスワード方式を選択するしかありません。
ID・パスワード方式を選ぶ場合
ID・パスワード方式を選ぶなら、税務署で簡単な手続きをするだけでOKです。手続きが済むと、すぐにIDとパスワードが発行され、ウェブ上の「確定申告書等作成コーナー」から電子申告ができるようになります。
なお、この手続きは、税務署の開庁時間内なら基本的にいつでもできます。極端な話、申告期限ギリギリになってから手続きに行っても間に合いますが、混雑状況を考えると、確定申告期間が始まる前に済ませておくのがよいでしょう。
>> 最短で電子申告を行う方法 – ID・パスワード方式
注意!マイナンバーカードの発行にかかる日数
マイナンバーカードは、公式サイトなどから申請をすると、通常であれば1~2ヶ月で発行されます。発行されたら通知ハガキが届くので、指定された交付場所まで取りに行きましょう。
最近は「マイナポイント事業」やコロナ禍の影響で、発行に2ヶ月以上かかるケースも多いようです。実際、下記のようにアナウンスしている自治体もあります。
引用
マイナンバーカードは令和2年5月以降、マイナンバーカードの交付申請数が急増しております。申請から交付通知書(受け取り案内通知)発送まで2か月から3か月かかっています。
ちなみに、ネット上では「4ヶ月以上かかった!」などという声も散見されます。電子申告を見据えてカードを発行するなら、確定申告期限に間に合うよう、余裕をもって申請を行いましょう。
まとめ
税制改正により、65万円の青色申告特別控除を受けるには「電子申告」か「電子帳簿保存」の実施が必須となりました。従来の要件をクリアするだけだと、55万円の控除しか受けられません。
65万円控除の主な要件(2020年分の確定申告から)
- 事業所得か不動産所得を得ている
- 複式簿記で記帳をしている
- 「電子申告」か「電子帳簿保存」を実施している←NEW!
- 確定申告の期限内に申告する
「従来の要件はもうバッチリ!」という人は、あと電子申告の準備をするだけで、2020年分以降の確定申告でも65万円控除を狙えるわけです。
電子申告に必要な準備
マイナンバーカード方式の場合 | ID・パスワード方式の場合 |
---|---|
・マイナンバーカードの取得 ・ICカードリーダーの用意 |
・税務署での手続き |
マイナンバーカードの発行には時間がかかるので(通常1~2ヶ月ほど)、なるべく早めに申請を済ませておきましょう。確定申告期限までにカードを受け取れない場合は、ID・パスワード方式を選択するしかありません。
ID・パスワード方式なら、税務署での手続きを済ませて「確定申告書等作成コーナー」にアクセスするだけでOKです。この方法なら、準備~申告までを即日で済ませられます。ちなみに、ID・パスワード方式はマイナンバーカードを持っていても選択できます。
準備が間に合わないときは?
「どうしても確定申告期限までに電子申告の準備ができない!」という場合は、電子申告をあきらめて、従来どおり紙で提出しましょう。そもそも確定期限日までに申告しないと、55万円控除すら受けられず、控除額は一気に10万円までダウンしてしまいます。