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どっちがいい?電子申告と電子帳簿保存【青色申告特別控除の改正】

更新日: 2024/07/10 投稿日: 2020/01/10
どっちがいい?電子申告と電子帳簿保存【青色申告特別控除の改正】

2020年分の確定申告から、65万円の青色申告特別控除を受けるためには「電子申告」か「電子帳簿保存」を行う必要があります。先に結論から入ると「電子申告」のほうが断然カンタンなので、この方法をおすすめします。

電子帳簿保存は、2022年1月1日から要件が緩和されます。本記事では改正前の法律に基づいて説明しています。改正の概要については、下記の記事をご覧ください。
>> (2024年現在)電子帳簿保存法の改正点まとめ【2022年以降】

INDEX

目次

    青色申告特別控除の改正【2020年分から】

    2020年分の確定申告(2021年2月16日~4月15日に行う確定申告)から、青色申告特別控除の控除額が改正されました。以降、65万円の控除を受けるためには、従来の要件を満たした上で「電子申告」か「電子帳簿保存」のどちらかを行わなくてはなりません。

    2020年分からの青色申告特別控除の要件

    従来の要件を満たすだけだと、2020年分からは控除額が55万円に下がってしまいます。なお、電子申告と電子帳簿保存の両方を行ったからといって、控除額が65万円よりも高くなることはありません。
    >> 青色申告特別控除の変更点について詳しく

    おすすめは電子申告!

    電子申告と電子帳簿保存を比べると、電子申告のほうが断然カンタンです。多少の事前準備は必要ですが、電子帳簿保存と比べれば大した手間ではありません。金銭的なコストを一切かけずに始めることもできます。

    一方、電子帳簿保存を始める際は、とにかく準備に手間がかかります。単純に「会計ソフトのデータを保存してあればOK」というわけではありません。特定の会計ソフトを利用する必要があるので、金銭的にもコストは避けがたいです。

    電子申告 電子帳簿保存
    労力面 税務署での手続きのみ
    • 基準を満たす会計ソフトの導入
    • 事務手続関係書類の作成
    • 申請書の提出
    金銭面 一切かからない
    • 特定の会計ソフト購入費用
    • 税理士費用(書類作成等を委託する場合)

    ※電子申告は「ID・パスワード方式」の場合

    電子申告 – オススメ!

    インターネットを介して行う税金の申告を「電子申告」といいます。「所得税の電子申告」を行うと、65万円控除の新要件をクリアできます。所得税の電子申告にはいくつか方法がありますが、費用を一切かけずに、簡単な手続きだけで済ませることも可能です。

    電子申告を始めるまでの流れ【ID・パスワード方式】

    ウェブ上の「確定申告書等作成コーナー」から「ID・パスワード方式」で電子申告をする方法なら、事前準備の手間を最小限に抑えられます。この場合、金銭的なコストも一切かかりません。特に用意する物もなく、税務署で簡単な手続きを行うだけで準備完了です。
    >> 電子申告を最短で始める方法

    ただし、たとえば会計ソフトのデータを直接取り込んで電子申告に利用する際などは、マイナンバーカードが必要になります(マイナンバーカード方式)。この場合は、カードを読み取るための「ICカードリーダー」も必要なので、その購入に3,000円程度のコストがかかります。
    >> スマホがICカードリーダーの代わりになる?【マイナンバーカード方式】

    電子帳簿保存 – 個人事業向きではない

    「電子帳簿保存」とは、一定の要件を満たした上で、帳簿や書類をデータの状態で保管することです。「主要簿(仕訳帳と総勘定元帳)の電子保存」を行うと、65万円控除の新要件をクリアできます。

    単純に「会計ソフトの帳簿データがあるからOK!」というわけではありません。電子帳簿保存は、税務署長の承認を得ることが前提ですが、この承認基準が非常に厳しく設定されています。ゆえに、労力的・金銭的なコストの増大は避けられません。

    電子帳簿保存を始めるまでの流れ

    個人事業の場合、電子帳簿保存の基準を満たすシステムとは、主要簿の電子保存に対応した会計ソフトのことです。現時点では、ごく一部のインストール型ソフトしか主要簿の電子保存に対応していないため、新たに購入費用がかかるケースがほとんどです。

    ちなみに、大手のクラウド型会計ソフトは、どれも「主要簿の電子保存」に未対応です。「領収書や請求書の電子保存」は可能な場合も多いですが、これだけで65万円控除の要件を満たすことにはならないので注意しましょう。

    事務手続関係書類を作るのがとにかく面倒!

    システムを導入したら、次はデータ入力や保存の手順を細かく定め、明文化する必要があります。事務手続きの工程を、会社で言うところの「社内規定」のような形で書き記すイメージです。専門知識がないと難しいため、大抵は税理士などの力を借りることになります。

    電子帳簿保存は、2022年1月1日から要件が緩和され、実施のハードルが下がります。改正の概要については、下記の記事をご覧ください。
    >> 電子帳簿保存法の改正点まとめ【2022年から】

    電子申告と電子帳簿保存の比較

    電子申告と電子帳簿保存のどちらでも65万円控除の要件はクリアできますが、開始時のコストは大きく異なります。電子申告なら、少ない手間でお金をかけずに開始が可能です。一方、電子帳簿保存を始めるなら、労力・金銭ともにある程度のコストを覚悟しなくてはなりません。

    開始にかかるコスト

    電子申告 電子帳簿保存
    労力面 税務署での手続きのみ
    • 基準を満たす会計ソフトの導入
    • 事務手続関係書類の作成
    • 申請書の提出
    金銭面 一切かからない
    • 会計ソフト購入費用
    • 税理士費用(書類作成等を委託する場合)

    ※電子申告はID・パスワード方式の場合

    ちなみに、一部の法人ではすでに電子申告が義務化されています。個人の義務化はまだ考えづらいですが、将来的に電子申告が主流になっていくことは間違いありません。先を見据えるなら、この機会に電子申告にチャレンジしてみても損は無いはずです。

    電子帳簿保存はもう少し普及してからでも

    紙での保存が不要になるという点で、電子帳簿保存も便利な制度ではあります。とはいえ、現時点では小規模の事業者に向けた制度設計になっていません。ひとまず電子申告を始めてみて、電子帳簿保存はもう少し一般に普及してから導入する、というのが無難な選択と言えます。

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