2020年分の確定申告(2021年2月16日~3月15日に行う確定申告)から「ひとり親控除」が新設されます。結婚歴の有無や性別に関わらず、多くのシングルマザー・ファザーが対象となります。
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目次
ひとり親控除とは?
「ひとり親控除」は、子供を養う単身者を対象とした所得控除です。控除額は一律35万円で、2020年分以降の所得に適用されます。以下の要件をすべて満たせば、女性でも男性でも、結婚歴があっても無くても適用を受けられます。
ひとり親控除の要件
- 現状、結婚をしていない(または、配偶者がいても生死が不明)
- 合計所得金額が500万円以下である
- 総所得金額等が48万円以下の「生計を一にする子」がいる
ちょっと分かりづらい言い回しもありますが、多くのシングルマザー・ファザーは対象に入ると思ってOKです。ただ、あなた自身がバリバリ稼いでいる場合や、子供ががっつりアルバイトをしている場合などは注意しましょう。
ちなみに、女性は①と②の要件さえ満たしていれば、③を満たしていなくても「寡婦控除」を受けられる可能性があります。子供にそれなりの収入があるなら、そちらも確認しておきましょう。ただし、ひとり親控除と寡婦控除の併用はできません。
【おさらい】そもそも所得控除とは?
所得税の金額は、おおよそ下図のような流れで算出します。必要経費や所得控除が多いほど、納める税金は少なくなります。
>> 個人事業主の所得控除一覧
要件① 現状、結婚をしていない
原則として、“控除の適用を受ける年”の12月31日時点で独身であることが要件です。その前後の結婚歴は基本的に関係ありません。
結婚をしていても配偶者の生死が明らかでない場合は、この要件を満たしたことになります。とはいえ、もちろん「近ごろ連絡がつかない…」という程度では該当しません。
住民票に事実婚の記載がある場合はアウト
婚姻届を提出していなくても、住民票に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載があると、この要件はクリアできません。内縁関係の相手と、住民票の異動手続きを済ませている場合はNGということです。
要件② 合計所得金額が500万円以下である
「合計所得金額」とは、様々な“所得”をひっくるめた合計金額のことです。と言っても、個人事業からしか収入を得ていなければ、事業所得=合計所得金額と考えて問題ありません。会社に勤めながら事業を営む場合は、そこに給与所得をプラスして考えましょう。
ただ“所得”というのは、単純な収入金額のことではありません。たとえば「事業所得」は、事業の収入から経費などを差し引いた後の金額を指します。また「給与所得」は、年収から最低でも55万円を差し引いた後の金額です(給与所得控除)。
これらの所得の合計額が500万円以下ならOKということです。所得の種類が多いと計算がややこしくなりますが、最終的には確定申告書の下図の欄で確認できます(分離課税の所得が無い場合)。
専業の個人事業主であれば、収入から経費などを差し引いた後に残る金額が、合計所得金額になります。一般的な感覚からすると、合計所得金額が500万円以上になるのは、けっこう稼いでいる人だけです。
要件③「生計を一にする子」がいる
「生計を一にする」とは、同じ財源で生活している状態を指します。簡単に言うと「あなたは子供を養っていますか?」と問う要件です。そもそも子供がいない場合や、子供があなた以外に養われている場合、この要件はクリアできません。
ちなみに、必ずしも子供と同居している必要はありません。常に生活費などの送金が行われていれば、別居でも“生計を一にしている”と認められるケースがあります。これは、離婚後に子供の親権が元配偶者の側にある場合でも同様です。
子供の総所得金額等が48万円を超えるとNG
そもそも子供の収入がゼロなら関係ありませんが、ここで言う「生計を一にする子」は“総所得金額等が48万円以下”でなくてはなりません。
子供がアルバイトをしている場合は、勤務先から受け取る源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が48万円以下か確認しておきましょう。具体的には、アルバイトの年収が103万円を超えると、この金額は48万円を超えてしまいます。
子供がアルバイトの給与しか得ていないなら、上図の金額だけ確認しておけばOKです。もし他にも収入を得ている場合は、それらの所得も合わせて合計48万円以下に収まるか計算しましょう。
ひとり親控除の申請方法 – 確定申告書の記入例
確定申告でひとり親控除を適用する際は、申告書の該当欄を以下のように記入しましょう。(これは「確定申告書B」の様式ですが、記入内容は「確定申告書A」でも同様です)
第一表 | 第二表 |
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第一表では、「所得から差し引かれる金額」の「寡婦、ひとり親控除」の欄に控除額「35万円」と記入します。寡婦控除と欄が一緒なので、ひとり親控除を受ける際は必ず「区分」に「1」と書き入れましょう。(ひとり親控除と寡婦控除は併用できない)
第二表では「本人に関する事項」の「ひとり親」に○をつけます。そして「配偶者や親族に関する事項」の欄に、子供の氏名やマイナンバーなどを記入しましょう(子供が事業専従者に該当する場合を除く)。
【注意点】寡婦控除・寡夫控除を受けていた人
ひとり親控除は令和2年度の税制改正で新設されました。従来、寡婦・寡夫控除を受けていたシングルマザー・ファザーは、基本的にひとり親控除の対象になります。ただ、制度の切り替わりでややこしい部分もあるので、特に以下のような点に注意しましょう。
- ひとり親控除と寡婦控除(寡夫控除)の併用はできない
- 事実婚の状態でないかチェックされる
- 2019年分以前の所得にはひとり親控除を適用できない
ひとり親控除と寡婦控除(寡夫控除)の併用はできない
ひとり親控除の新設に伴って、寡婦控除は対象範囲が縮小され、寡夫控除は廃止されました。改正後の寡婦控除は“養う子供がいない寡婦”を対象とした制度になっているため、ひとり親控除との併用はできません。
事実婚の状態でないかチェックされる
従来の寡婦・寡夫控除では、いわゆる“事実婚”のチェックがありませんでした。しかし、ひとり親控除では明確な基準が設けられており、住民票に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載がある人は対象外になります。
2019年分以前の所得にはひとり親控除を適用できない
ひとり親控除が適用されるのは2020年分の所得からです。2019年分以前の所得について、還付申告や更正の請求を行う際は、従来の寡婦・寡夫控除を適用することになるので注意しましょう。
まとめ – ひとり親控除の重要ポイント
以下の要件を全て満たす人は「ひとり親控除」を受けられます。結婚歴の有無や性別は関係ありません。控除額は一律35万円で、2020年分の確定申告(2021年2月16日~3月15日に行う確定申告)から適用できます。
ひとり親控除の要件
- 現状、結婚をしていない(または、配偶者がいても生死が不明)
- 合計所得金額が500万円以下である
- 総所得金額等が48万円以下の「生計を一にする子」がいる
①は、原則として“控除の適用を受ける年”の12月31日時点の状況で判断します。前後の結婚歴は関係ありません。ただ、住民票に事実婚の記載がある場合はNGです。
②「合計所得金額」とは、事業所得や給与所得など、様々な所得をひっくるめた合計額のことです。“所得”とは、おおよそ収入から必要経費などを差し引いた金額のことなので、収入自体は500万円を超えていても問題ありません。
③については、収入ゼロの子供を養っているなら全く問題ありません。子供がアルバイトをしている場合は、年収が103万円を超えないかチェックしましょう。また、子供と別居していても、送金などをしていれば“生計を一にしている”と認められることもあります。
ちなみに、ひとり親控除の要件を満たす人は、子供の年齢が16歳以上なら「扶養控除」も受けられる可能性が非常に高いです。こちらは、ひとり親控除と併用しても全く問題ないので、あわせて確認しておきましょう。