医療費が控除対象になるケースまとめ

更新日: 2020/09/29
医療費が控除対象になるケースまとめ

医療費控除の対象は「国が認めた一定の医療を受けるために、直接必要になった費用」です。本記事では、対象となる範囲についてケースごとに詳しく紹介していきます。控除の申請などについてはこちらの記事でまとめています。

INDEX

目次

    医療費控除とは

    医療費控除とは、年間の医療費が10万円(もしくは総所得金額等の5%)を超えたときに受けられる所得控除です。医療費が多い人ほど「医療費控除額」も増え、その額に応じて所得税住民税が減額されます。

    医療費控除の対象には、納税者本人だけでなく、生計を共にする配偶者その他の親族のために支払った医療費も含みます。保険適用の治療かどうかは関係なく、治療のために避けられない支出なら、大抵は控除の対象になります。控除額の上限は200万円です。

    医療費控除額の算出イメージ

    医療費控除の対象になる/ならない

    対象になる主な費用 対象にならない主な費用
    考え方
    • 回復を目的とするもの
    • 治療に直接必要なもの
    • 生活に欠かせない医療サポート
    • 予防や健康増進が目的のもの
    • 治療に直結しない間接的なもの
    • 治療の範囲を超えた余分なもの
    具体例
    • 病院での診療や治療
    • 治療や療養に必要な医薬品代
    • 治療のためのマッサージ代
    • 看護師による療養上の世話への対価
    • 助産師による分べんの介助の対価
    • 介護保険サービスの費用(医療系)
    • 健康診断の費用(異常なしの場合)
    • 予防や健康増進が目的の医薬品代
    • 疲れを癒すだけのマッサージ代
    • 家族や親類縁者に支払う付添い代
    • 実家で出産するための交通費
    • 介護保険サービスの費用(福祉系)

    基本的には、回復を目的とした治療に直接関係する費用が、医療費控除の対象です。ただ、現在は介護などの医療サービスにまで対象が拡張されています。なお、上表の「考え方」はあくまで傾向であって、実際に控除を申告する際は個別に判断が必要です。

    ケース① 入院したとき ‐ ベッド代・身の回り品

    入院したときの費用も、医療に直接必要と認められる部分については、医療費控除の対象です。入院するときは雑多な費用が発生しがちですから、どこまでが控除の対象なのか、しっかり把握しておく必要があります。

    控除の対象になる主な費用 控除の対象にならない主な費用
    • 手術や診療にかかった費用
    • 医師が指示をした医療器具代
    • 通常のベッド代
    • 病院で提供される食事代
    • 入退院にかかる患者の交通費
    • 付添人の依頼費用
    • 医師や看護師に対するお礼
    • 入院に必要な身の回り品の購入費
    • 個室利用による差額ベッド代(自己都合)
    • 出前や外食による食事代
    • お見舞いにかかる交通費
    • 親族などに付添人を依頼する費用

    手術や診療にともなって必要になった医療器具代(松葉杖や機能回復用の眼鏡)などが控除の対象です。一方、お礼や心づけ、身の回り品(パジャマや着替えの下着)のように、治療と直接関係ないものは医療費控除の対象外です。

    「高額療養費」や「入院費給付金」は、医療費から差し引く

    医療保険によって高額療養費や入院費給付金などを受け取っている場合は、それによって医療費がまかなわれたことになります。そのため、控除額の計算ではこれらの金額を医療費から差し引きます。実際の負担金額だけが控除の対象というわけです。

    ケース② 歯科治療を受けたとき ‐ 歯列矯正・インプラント

    歯科治療などを受けたときは、一般的な治療内容や金額なら医療費控除の対象になります。虫歯や歯周病になったときの治療費や、虫歯や歯周病の危険があるときのクリーニング(PMTC、PPC)費用などです。

    対象になる主な費用 対象にならない主な費用
    • 虫歯や歯周病の治療費
    • 金やセラミックの義歯や被せもの代
    • PMTC(虫歯、歯周病予防)費用
    • インプラントの費用
    • 発育段階にある子どもの歯列矯正費用
    • 成人の噛み合わせ改善治療の矯正費用
    • 痛み止めなどの医薬品代
    • 美容目的の治療費
    • 一般的でない高価な材料の費用
    • 美容目的のホワイトニング治療費
    • 音波ブラシや口腔洗浄器の購入費
    • 容貌を美化するための歯列矯正費用
    • 処置をしなかったときの検診費用
    • 歯ブラシなどの購入費

    金やセラミックは高額ですが、歯科治療用の材料としては一般的であるため控除の対象です。インプラントの費用も、日常生活での機能回復が目的であれば控除を受けられます。ただし、美容目的などの場合は対象外です。

    歯科ローンにより支払った治療費も医療費控除の対象になる

    歯科ローン契約は、その全額が契約成立した年の医療費控除になります。ローン会社への返済が翌年以降にまたがるとしても、病院への支払いは当年に完了しているからです。ただし、金利や手数料は医療費控除の対象外となります。

    ローン契約時点で全額が当年における医療費控除の対象となる

    確定申告の際、手もとに領収書がない場合は、歯科ローンの契約書の写しやローン会社の領収書を確定申告書類に添付します。

    ケース③ 出産・不妊治療をしたとき

    出産の際にかかった費用は、基本的には医療費控除の対象です。助産師に出産の介助を依頼した際の費用も同様です。また、不妊治療の費用も控除の対象になります。

    対象になるもの 対象にならないもの
    • 妊娠後の定期検診および検査の費用
    • 不妊症の治療および人工授精の費用
    • 普通分娩や帝王切開の費用
    • 助産師による分娩介助などの費用
    • 通院のための交通費
    • 病院から提供される食事代
    • 乳腺炎など治療目的の母乳マッサージ
    • 産後ケアのため入院や通院する費用
    • 医師や看護師へのお礼
    • 市販の妊娠検査薬
    • 身の回り品の購入費
    • 家族や親類縁者に支払う付添い代
    • 実家で出産するための交通費
    • 出前や外食による食事代
    • 治療目的でない母乳マッサージ
    • 産後に家事を家政婦に依頼する費用

    助産師による分娩の介助には、産後ケアや母乳指導などの保健指導も含まれています。したがって、これらも医療費控除の対象です。また、病院や助産院に行くときに、電車やバスなどを使うのが難しいときは、例外的にタクシー代も認められます。

    控除対象外の費用としては、寝巻きや洗面具などの購入費が挙げられます。さらに、病院や助産院での、乳量を増やすための母乳マッサージも基本的には対象外です。ただ、乳腺炎の治療など、医療目的の場合には控除が認められることもあります。

    「出産育児一時金」や「出産費」は、出産費用などから差し引く

    医療保険で以下の支給を受けた人は、医療費控除額を計算する際、その金額を医療費から差し引かなければなりません。

    • 「出産育児一時金」または「家族出産育児一時金」
    • 「出産費」または「配偶者出産費」

    ただし、会社勤めの人などが給付を受ける「出産手当金」については、医療費から差し引く必要はありません。なぜなら出産手当金というのは、出産にあたって一定期間勤務できないために支給されるものであって、医療費の補填が目的ではないからです。

    ケース④ 介護が必要になったとき

    介護サービスは「医療系」と「福祉系」に分類できます。このうち医療費控除の対象となるのは、基本的には医療系サービスだけです。ただし、福祉系サービスであっても、医療系と併用すれば控除対象となる場合もあります。

    介護サービスは「医療系」と「福祉系」に分けられる

    介護サービスは「医療系」と「福祉系」に分けられる

    福祉系サービスは医療系と併用した場合に限り、医療費控除の対象になります。生活の援助だけでなく医療行為を含んだサービスも提供している場合は、控除が認められるケースがあるということです(複合型サービスと呼ぶ)。

    対象になるサービス(医療系) 対象にならないサービス(福祉系)
    • デイケア(通所リハビリステーション)
    • 訪問看護や訪問リハビリテーション
    • 短期入所療養介護(ショートステイ)
    • 通常のデイサービス(通所介護)
    • 訪問介護(生活援助中心型)
    • 軽費老人ホーム(ケアハウス)

    訪問サービスの場合 -「訪問看護」と「訪問介護」は別物

    自宅に看護師などが訪れて医療サービスを行う訪問看護や訪問リハは、医療費控除の対象です。これに対して、ホームヘルパーなどが生活の援助を行う訪問介護は、基本的に対象外です。

    施設に入所する場合 ‐「特別養護老人ホーム」は半額だけ控除の対象

    介護保険が使える施設のうち「介護老人保健施設・療養型病床群等・介護医療院」の3つは、ほぼ医療施設なので自己負担した全額が控除の対象です。一方、「特別養護老人ホーム」は医療スタッフが常駐しているわけではないので、費用の半分だけが控除対象です。

    交通費を医療費控除として申告する方法

    通院にかかる交通費(電車・バス)も、控除の対象になります。「日付・行き先・利用区間・交通費」を紙に記録しておきましょう。これを「医療費の明細書」に転記の上、5年間保管しておけばOKです。ICカードの履歴などを印字して保管する義務はありません。

    SuicaやPASMOなどの履歴には、肝心の医療機関の情報がないため、むしろ証拠として弱いです。医療費控除における交通費は、あくまで「その医療機関に行くための費用」でなければなりません。そのため、下記のように交通費を自分で記録することが重要です。

    通院のための交通費一覧(例)

    日付 行き先 利用区間 交通費
    20XX/8/20 〇〇病院 JR □□駅~御茶ノ水(往復) 308円
    20XX/8/21 〇〇病院 JR □□駅~御茶ノ水(往復) 308円
    20XX/11/5 △△整形外科 JR □□駅~上野(往復) 266円

    病状からみて緊急性が高いときや、電車・バスでの移動ができないときに限り、タクシー代も控除の対象になります。タクシーの領収書を確定申告書に添付する必要はありませんが、必ずもらって5年間保管するようにしてください。

    患者に付き添いをしたときの交通費は、基本的に控除として申告できない

    患者に付き添う人の交通費は、基本的に控除の対象になりません。入院患者の世話や、お見舞いを目的とする交通費もダメです。もし入院中の子どもの世話で母親が通院したとしても、母親の交通費は控除の対象にはなりません。

    ただ、患者自身が通院する必要があり、しかも年齢や病状から一人で通院させるのが危険な場合は、例外的に控除対象となります。たとえば、幼い子どもを母親が病院に連れて行く必要があるとき、その子どもに同行する母親の交通費は医療費控除の対象です。

    まとめ ‐ 控除の対象になる医療費/ならない医療費

    一定の医療を受けるのに直接必要な費用は、医療費控除の対象です。ただし治療目的でも、常識を超えるような高額の費用については対象にならない場合があります。また、健康増進や審美目的などの医療も対象外です。

    医療費控除の対象になる/ならない(ケースごとの主要な例)

    対象になるもの 対象にならないもの
    基本
    • 病院での診療や治療
    • 治療や療養に必要な医薬品代
    • 治療のためのマッサージ代
    • 看護師の療養上の世話への対価
    • 健康診断の費用(異常なしの場合)
    • 予防や健康増進が目的の医薬品代
    • 疲れを癒すだけのマッサージ代
    • 家族や親類縁者に支払う付添い代
    入院
    • 通常のベッド代
    • 病院で提供される食事代
    • 付添人の依頼費用
    • 差額ベッド代(自己都合)
    • 出前や外食による食事代
    • 親族などに付添人を依頼する費用
    出産
    • 妊娠後の定期検診や検査の費用
    • 助産師による分娩介助などの費用
    • 産後ケアで入院や通院する費用
    • 市販の妊娠検査薬
    • 実家で出産するための交通費
    • 産後に家事を家政婦に依頼する費用
    歯科
    • 金やセラミックの義歯など
    • インプラントの費用
    • 一定の歯列矯正費用
    • 一般的でない高価な材料の費用
    • 美容目的のホワイトニング治療費
    • 容貌を美化するための歯列矯正費用

    介護にかかる費用については、介護保険制度下の介護サービスのうち、いわゆる「医療系」サービスを受けた場合は控除の対象になります。「福祉系」サービスは単独で受けると対象外ですが、医療系と併用することで控除の対象になります。