医療機関で新型コロナ感染症のPCR検査を受けた場合、かかった費用は医療費控除の対象になるのか、ケース別にまとめました。基本的には、医師の指示で検査を受けた場合や、検査結果が陽性で治療を受けた場合に、医療費控除の対象になります。
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目次
PCR検査の費用は医療費控除の対象?
PCR検査の費用が医療費控除の対象になるかは、状況によって異なります。医師の判断で検査を受けた場合は、結果にかかわらず対象です。一方、自己判断で検査した場合は、結果が陰性だと対象外となります。
そもそも、控除の対象となる医療費は、たとえば「医師による診療や治療のための費用」や「治療に必要な医薬品の購入費用」などに限られています(所得税法第73条2項)。PCR検査の費用についても、これらに該当するかどうかで扱いが異なるわけです。
それでは、どんな場合で対象になるのかケース別に見ていきましょう。
ケース① 自己判断でPCR検査を受けた
自己判断でPCR検査を受ける場合、その費用が医療費控除の対象になるのは「結果が陽性で、引き続き治療を行った」というときだけです。そのため、陰性なら医療費控除の対象にはなりません。
これは、結果が陽性で治療を行った場合のみ、PCR検査を「治療に先立って行われる診察」と見なせるからです。
引用
…(前略)…PCR検査の結果、「陽性」であることが判明し、引き続き治療を行った場合には、その検査は、治療に先立って行われる診察と同様に考えることができますので、その場合の検査費用については、医療費控除の対象となります(所得税基本通達73-4参照)。
たとえば、以下のような理由でPCR検査を受ける場合は「自己判断」とみなされます(自費診療)。
- 保健所からは濃厚接触と判断されなかったが不安だった
- 上司から検査を受けるよう命じられた
- 得意先に「検査を受けないと取引しない」と言われた
- 海外渡航のため陰性証明書が必要だった
- 帰省前に自分が感染者でないか確認しておきたかった
個人事業主は必要経費にできる?
個人事業においては、業務に関連して検査が必要な場合、その検査費用を必要経費に計上できます。たとえば「仕事で海外に渡航するため陰性証明書が必要」というようなケースが考えられます。
ケース② 医師の判断でPCR検査を受けた
医師の判断によってPCR検査を受けた場合、かかった費用は医療費控除の対象になります。症状の有無や、検査の結果に左右されることはありません。
ただ、このケースに関しては、医療費控除の対象になるといってもたかが知れています。というのも、下図に示すように、自己負担額が大した金額にならないからです。
費用負担のイメージ
ちなみに、通常の肺炎と区別するために、PCR検査の前に採血やレントゲン撮影を行う場合があります。そのような検査の費用も上図の「診療費用」に含まれます。
接触確認アプリ「COCOA」の扱いについて
「COCOA(ココア)」とは、新型コロナの陽性者と接触した可能性がある際に、通知を受け取れるアプリのことです。陽性者との接触が疑われる場合には、以下のような通知が届きます。
この通知があって医療機関でPCR検査を受けた場合、その検査費用は基本的に公費負担となります。よって、自己負担となるのは初診料や再診料などの費用くらいです。
この通知はあくまで、陽性者と接触した可能性をお知らせするものにすぎません。医師の判断により、PCR検査を受けるよう指示が出たわけではないのです。つまり、COCOAの通知に応じてPCR検査を受けても、それだけをもって医療費控除の対象になるわけではないということです。
まとめ – 医療費控除の対象となる費用
医師の判断でPCR検査を受ける場合は、結果の陰性・陽性に関わらず、かかった費用が医療費控除の対象になります。一方、自己判断で検査を受ける場合は、結果が陽性でない限り、費用が控除の対象になることはありません。
ちなみに、オンライン診療を受けた場合は、以下のような費用が医療費控除の対象になります。診療に付随した費用とはいえ、オンラインで購入した処方薬の配送料は対象外なので気をつけましょう。
オンライン診療に関係する費用
医療費控除の対象 | 医療費控除の対象外 |
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また、感染症を予防するため、マスクや消毒液を購入した方も多いかと思いますが、この費用は医療費控除の対象にはなりません。「治療」のために必要な費用ではなく、「予防」のための費用と考えるからです。
ただ、顧客・取引先や従業員のためにマスク等を用意した場合は、必要経費に計上できます。業務に必要な支出であると考えられるからです。帳簿づけの際は「消耗品費」などの勘定科目で記帳します。
医療費控除は確定申告で申請
医療費控除は、確定申告によって適用されます。2020年中の医療費については、2021年に行う確定申告で控除を申請しましょう。