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寡婦・寡夫控除とは?2019年分までの要件や控除額など

更新日: 2023/08/29
寡婦・寡夫控除とは?2019年分までの要件や控除額など

寡婦控除と寡夫控除は、2020年の税制改正で大きく見直されました。本記事では、改正前の寡婦・寡夫控除について説明します。2019年分以前の所得について、還付申告などを行う際に参考にしてください。
>> 2020年分からの寡婦控除についてはこちら
>> 新しく創設された「ひとり親控除」についてはこちら

INDEX

目次

    【要注意】2020年分から改正!

    2020年の税制改正で「ひとり親控除」が新設され、寡婦控除の対象範囲は縮小、寡夫控除は廃止されました。以降は、寡婦・寡夫控除を受けていた人の多くが、ひとり親控除か“新しい”寡婦控除の対象になっています。

    ひとり親控除と寡婦(寡夫)控除に関わる改正

    ただ、ひとり親控除と新しい寡婦控除は、2020年分以降の所得にしか適用できません。2019年分以前の所得について還付申告更正の請求をする際は、従来の寡婦・寡夫控除を適用することになります。

    本記事は、そういった理由で従来の寡婦・寡夫控除を受ける人に向けて書かれています。2020年分以降の所得について申告する場合は、下記のページを参考にしてください。
    >> 改正後の寡婦控除について

    寡婦控除・寡夫控除の概要

    寡婦控除と寡夫控除は、配偶者と離婚 or 死別をして、再婚をしていない場合などに受けられる所得控除です。女性は「寡婦控除」、男性は「寡夫控除」が適用されます。ちなみに、寡婦と寡夫はどちらも「カフ」と読みます。

    寡婦・寡夫控除の控除額

    寡婦控除・寡夫控除の控除額は27万円が基本です。ただし「特別の寡婦」に該当する女性のみ、控除額が35万円になります。(住民税の控除額は26万円が基本で、「特別の寡婦」のみ30万円)

    【おさらい】所得控除とは?

    所得税の金額は、下図のような流れで算出します。必要経費や所得控除が多いほど、納める税金は少なくなるわけです。

    所得税算出のおおまかな流れ
    >> 個人事業主の所得控除一覧

    <女性> 寡婦控除の要件

    寡婦控除の対象者は「一般の寡婦」と「特別の寡婦」に区別され、それぞれ控除額が異なります。どちらの控除額が適用されるかは、原則として“控除の適用を受ける年”の12月31日時点の状況で判断します。

    【一般の寡婦】27万円控除の要件

    以下の1~5のどれかに該当していた女性は、「一般の寡婦」であったと見なされます。「一般の寡婦」の控除額は27万円です。

    1. 夫と離婚をして再婚しておらず、扶養親族(or 生計を一にする子)がいる
    2. 夫と死別をして再婚しておらず、扶養親族(or 生計を一にする子)がいる
    3. 夫と死別をして再婚しておらず、合計所得金額が500万円以下である
    4. 夫の生死が明らかでなく、扶養親族(or 生計を一にする子)がいる
    5. 夫の生死が明らかでなく、合計所得金額が500万円以下である

    なお、ここで言う「生計を一にする子」は、あなたが養う“総所得金額等が38万円以下”の子供のことです。子供がアルバイトなどをしていた場合は、年収が103万円を超えていなかったか確認しましょう。

    【特別の寡婦】35万円控除の要件

    以下の3つをすべてを満たしていた場合は、「一般の寡婦」ではなく「特別の寡婦」であったと認められます。「特別の寡婦」の控除額は35万円です。

    • 夫と離婚か死別をして再婚していない(または、夫がいても生死が不明)
    • 合計所得金額が500万円以下である
    • 扶養親族にあたる子供がいる

    ちなみに「合計所得金額」は、ひとまず「所得」と読み替えてOKです。ただ、単純に“年収500万円以下”という意味ではないので注意しましょう。詳しくは、記事の後半で説明します。

    <男性> 寡夫控除の要件

    寡夫控除の場合、控除額は一律27万円です。“控除の適用を受ける年”の12月31日時点で、以下の要件をすべて満たしていた男性が対象になります。

    • 妻と離婚か死別をして再婚していない(または、妻がいても生死が不明)
    • 合計所得金額が500万円以下である
    • 総所得金額等が38万円以下の「生計を一にする子」がいる

    「生計を一にする子」とは、簡単に言うと、あなたが養う子供のことです。子供に収入がなければ、“総所得金額等が38万円以下”の部分は気にしなくてよいです。子供がアルバイトなどをしていた場合は、年収が103万円を超えていなかったか確認しましょう。(詳しくは後述)

    「合計所得金額」とは?

    「合計所得金額」とは、様々な所得をひっくるめた金額のことです。多くの人は、個人事業から生じる所得(事業所得)や、会社の給与から生じる所得(給与所得)しか得ていないので、単純にそれらの合計金額で考えます。

    ただし、所得=収入ではありません。たとえば「事業所得」は、個人事業の収入から経費などを差し引いた金額のことです。また「給与所得」は、年間の給与から最低でも65万円を差し引いて算出します。

    ちなみに、離婚時の慰謝料や子供の養育費は、過大な金額を受け取っていない限り「合計所得金額」に含みません。

    個人事業主の場合

    個人事業の他に収入がなかったなら、その年の事業所得がそのまま合計所得金額になります。会社に勤めながら個人事業を営んでいた人は、給与所得も合わせて考えましょう。最終的には、下図のように確定申告書で確認できます(2019年分の旧様式)。

    合計所得金額が500万円以下(確定申告書B)

    会社員の場合

    会社の給与しか得ていなかったなら、その年の給与所得=合計所得金額と考えて問題ありません。給与所得の金額は、会社から受け取った源泉徴収票で確認できます。源泉徴収票は、会社に頼めば再発行してもらうことも可能です。

    給与所得が500万円以下(源泉徴収票)

    「生計を一にする子」とは?

    「生計を一にする」とは、同じ財源で生活している状態を指します。あなたが養っていた子供は、基本的にあなたと生計を一にしていたと言えます。

    なお、生活費などを送金していたなら、別居でもこれに該当する場合があります。実質的に養っていたのは誰か?という点が重要で、住んでいた場所や、親権の有無で決まるわけではありません。

    ただし、元妻と元夫で同時に、同じ子供を「生計を一にする子」として扱うことはできません。重複して申告した場合は、申告日が早かった方が優先されます。

    「生計を一にする子」の所得要件について

    寡婦・寡夫控除のどちらも、「生計を一にする子」には“総所得金額等が38万円以下であること”という条件が加えられています。つまり、子供がそこそこ稼いでいた場合、あなたが養っていたとは認められないわけです。

    「総所得金額等」とは、前述した「合計所得金額」から、前年以前の事業の赤字金額などを差し引いた金額のこと。とはいえ、子供が赤字の繰越しなどを行っているケースは極めて稀だと思われるので、この場合は「合計所得金額」と同じと考えてほとんど問題ない。

    >> 合計所得金額・総所得金額・総所得金額等とは?

    子供がアルバイトをしていたなら、年間の給与が103万円を超えていないか確認しておきましょう。年収が103万円以下なら、給与所得は38万円以下になり、総所得金額等も38万円を超えることはありません。(給与以外の収入がある場合を除く)

    「扶養親族」とは?

    寡婦控除の要件にある「扶養親族」とは、ざっくり言うと“あなたが養う家族や親戚”のことです。年齢の制限はありません。あなたの「扶養親族」と認められるのは、“控除の適用を受ける年”の12月31日時点で、以下の要件をすべて満たしていた人です。

    1. あなたの親族であること(または里子など)
    2. あなたと生計を一にしていること
    3. 合計所得金額が38万円以下であること
    4. 事業専従者に該当しないこと

    ちなみに、税制改正に伴って現在では「合計所得金額が48万円以下であること」が扶養親族の要件になっています。しかし、2019年分以前の所得について申告する際は、改正前の要件に従えばよいので、合計所得金額が38万円以下なら問題ありません。

    寡婦控除・寡夫控除の申告方法

    還付申告を行う際、会社員は確定申告書Aを、個人事業主は確定申告書Bを提出します。寡婦・寡夫控除を受けるための記入方法は、どちらの場合でも変わりません。第一表に控除額を記入し、第二表の該当欄にチェックを付けるだけです。

    第一表の記入欄(2019年分の旧様式)

    確定申告書A 確定申告書B
    令和元年分以降用 確定申告書A 第一表「寡婦・寡夫控除」 令和元年分以降用 確定申告書B 第一表「寡婦・寡夫控除」

    第二表の記入欄は、A・Bのどちらでもほとんど一緒です。以下のように4つの選択肢があるので、該当する項目にチェックを付けましょう。

    令和元年分以降用 確定申告書B 第二表「寡婦(寡夫)控除」記入欄

    死別…………配偶者が死亡してから再婚していない場合
    離婚…………配偶者と離婚してから再婚していない場合
    生死不明……一定期間以上、配偶者の生死が明らかでない場合など
    未帰還………配偶者が太平洋戦争の終結以降も国内へ戻れずにいる場合など

    ちなみに“生死不明”と見なされるのは、「事故から3ヶ月以上その生死が明らかでない場合」や「3年以上その生死が明らかでない場合」などのみです。

    まとめ – 寡婦・寡夫控除の重要ポイント

    寡婦控除・寡夫控除は、配偶者と離婚や死別をしたのち、再婚していない場合などに受けられる所得控除です。女性が受ける寡婦控除のみ、対象者が「一般の寡婦」と「特別の寡婦」に区別され、控除額が異なります。

    寡婦・寡夫控除の控除額一覧

    寡婦控除 寡夫控除
    一般の寡婦 特別の寡婦
    所得税 27万円 35万円 27万円
    住民税 26万円 30万円 26万円

    26万円寡夫控除と35万円の寡婦控除(特別の寡婦)は、子供を養っていないと対象になりません。一方、27万円の寡婦控除(一般の寡婦)は子供がいない場合でも対象になるのが特徴です。なお、27万円と35万円の寡婦控除を同時に受けることはできません。

    【要注意】2020年分からは改正されている

    本記事で説明した寡婦・寡夫控除を適用できるのは、2019年分の所得までです。2020年分の申告から、寡婦控除の対象範囲が縮小され、寡夫控除は廃止されています。以降、多くの人は「ひとり親控除」か“新しい”寡婦控除を受けることになります。

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