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寡婦控除とは?2020年分から適用の新しい要件など

更新日: 2024/07/11 税理士監修
寡婦控除とは?2020年分から適用の新しい要件など

寡婦控除は、2020年に要件や控除額が改正されました。本記事では、改正後の制度内容について説明します。シングルマザーについては、ひとり親控除という制度があります。

INDEX

目次

    寡婦控除とは

    夫と離婚か死別をして、再婚していない女性のことを「寡婦(カフ)」といいます。寡婦控除は、おおまかに言うと“養う子供のいない寡婦”を対象とした所得控除です。控除額は一律27万円です。(住民税の控除額は26万円)

    所得税算出のおおまかな流れ

    以下の要件をすべて満たす女性は、寡婦控除の適用を受けられます。ただし、子供を養っている場合はひとり親控除の対象となり、寡婦控除は受けられません。

    寡婦控除の要件

    1. 夫と離婚か死別をして再婚していない(または、夫がいても生死が不明)
    2. 合計所得金額が500万円以下である
    3. 扶養親族がいる

    なお、3の要件が課されるのは“離婚”をした場合のみです。夫と“死別”をしている場合や、夫が生死不明の場合には、1と2の要件のみで寡婦控除が適用されます。

    2019年分以前は要件が異なる

    寡婦控除は令和2年度の税制改正で制度内容が見直されており、上記は改正後の要件です。2019年分以前の所得について還付申告などをする際は、改正前の要件に従って寡婦控除を適用することになります。
    >> 従来の寡婦控除について

    要件① 夫と離婚か死別をして再婚していない

    再婚をしていないかどうかは、原則として“控除の適用を受ける年”の12月31日時点の状況で判断します。なお、離婚や死別をしたタイミングは関係ありません。

    婚姻の有無を判定する時期(ひとり親控除・寡婦控除)

    ちなみに、上記の時点で夫が生死不明の場合も、この要件を満たしたことになります。とはいえ、実際に生死不明として認められるケースは稀です。

    住民票に事実婚の記載があるとNG

    住民票に「妻(未届)」と記載があると、事実上“再婚をしている”と見なされます。婚姻届を提出していなくても、内縁関係の相手と住民票の異動を済ませているならNGということです。

    要件② 合計所得金額が500万円以下である

    合計所得金額」とは、様々な所得をひっくるめた合計金額のことです。会社に勤めて給与を得つつ、個人事業も営んでいるのなら、それらの合計が「合計所得金額」になります。

    所得というのは、収入のことではありません。個人事業では、収入から経費などを差し引いたものが所得です(事業所得)。会社員の所得は、1年の給与から最低でも55万円を差し引いた金額のことです(給与所得)。

    なお、離婚時に慰謝料を受け取ったとしても、原則として「合計所得金額」には含みません。(多額の慰謝料や不動産などを得た場合を除く)

    個人事業主の場合

    個人事業の他に収入がなければ、事業所得がそのまま合計所得金額になります。会社に勤めながら個人事業を営んでいる人は、そこに給与所得をプラスして考えましょう。ちょっとややこしいですが、最終的な金額は確定申告書で確認できます。

    合計所得金額が500万円以下(確定申告書)

    会社員の場合

    勤めている会社から給与を得ているだけなら、給与所得=合計所得金額と考えて問題ありません。とはいえ、自分で給与所得を計算するのはちょっと大変なので、会社から受け取る源泉徴収票を確認するのが手っ取り早いです。

    給与所得が500万円以下(源泉徴収票)

    要件③ 扶養親族がいる

    「扶養親族」とは、ざっくり言うと、あなたが養っている家族や親戚のことです。具体的には、以下のすべてに当てはまる人が、あなたの扶養親族として認められます。

    扶養親族とは

    • あなたの親族である(または里子など)
    • あなたと生計を一にしている
    • 合計所得金額が48万円以下である
    • 事業専従者に該当しない

    「生計を一にしている」とは、同じ財源で生活している状態を指します。必ずしも一緒に暮らしている必要はありません。たとえば、常に生活費を送金していれば、別居している親などもこれに該当する可能性があります。

    ただ、養っている親族がアルバイトやパートをしている場合は、その収入に気をつけましょう。年間の給与収入が103万円を超えると、合計所得金額は48万円を超え、扶養親族と認められなくなってしまいます。

    なお、あなたが営む事業に従事する親族(事業専従者)は、扶養親族に含まれません。確定申告で「専従者控除」や「青色専従者給与」を申請すると、その親族は扶養親族から除外されてしまいます。その親族が、あなた以外の親族が営む個人事業に従事している場合も同様です。
    >> 扶養親族について詳しく

    寡婦控除の申請方法 – 確定申告書の記入例

    確定申告で寡婦控除を適用する際は、申告書の第一表・第二表にそれぞれ以下のように記入します。

    第一表 第二表
    確定申告書第一表の記入方法(寡婦控除) 確定申告書第二表の記入方法(寡婦控除)

    第一表の記入方法

    寡婦控除の記入欄(確定申告書第一表)

    第一表では「所得から差し引かれる金額」の「寡婦、ひとり親控除」の欄に、控除額(27万円)を記入します。「区分」は「ひとり親控除」を受ける際に使う欄なので、何も記入しなくてOKです。寡婦控除とひとり親控除を同時に受けることできません。

    第二表の記入方法

    寡婦控除の記入欄(確定申告書第二表)

    第二表では「本人に関する事項」の欄に、寡婦控除に関する記入項目があります。まず「寡婦」に○をして、寡婦になった要因を示す□にチェックを入れましょう。

    • 死別………夫と死別したのち、再婚をしていない場合
    • 離婚………夫と離婚したのち、再婚をしていない場合
    • 生死不明…夫の生死が明らかでない場合
    • 未帰還……元軍人の夫が戦後も国内へ戻らない場合など

    【要注意】従来の寡婦控除との違い

    令和2年度の税制改正で、寡婦控除の控除額や対象範囲が見直されました。ここでは、従来の寡婦控除との違いを確認しておきます。改正前にも寡婦控除を受けていた人は、従来の制度内容と混同しないように気をつけましょう。

    改正前 改正後
    適用される所得 2019年分以前の所得 2020年分以降の所得
    控除額 一般の寡婦:27万円
    特別の寡婦:35万円
    一律27万円
    主な対象 寡婦全般 養う子供のいない寡婦
    所得要件 一部の場合のみ課される 必ず課される
    事実婚のチェック なし あり

    従来、寡婦控除の対象は「一般の寡婦」と「特別の寡婦」に区別されていました。しかし、改正後にこの区別はありません。そのかわり、これまで「特別の寡婦」に該当していた人は、新たに「ひとり親控除」の対象となっています。

    また、改正後はいわゆる“事実婚”のチェックが追加されています。これに伴い、住民票に「妻(未届)」と記載されている人は、寡婦控除を受けられないことになりました。

    まとめ – 寡婦控除の注意点

    寡婦控除は、“養う子供のいない寡婦”を対象とした所得控除です。控除額は一律27万円で、以下の要件をすべて満たす女性が適用を受けられます。ただし、夫と死別している or 夫が生死不明の場合、3つ目の要件は課されません。

    寡婦控除の要件

    1. 夫と離婚か死別をして再婚していない(または、夫がいても生死が不明)
    2. 合計所得金額が500万円以下である
    3. 扶養親族がいる

    要件を満たせるかどうかは、以下のような点に注意して判断しましょう。

    寡婦控除の注意点

    • ひとり親控除との併用はできない
    • 住民票に「妻(未届)」と記載があるとNG
    • 「合計所得金額」は事業所得や給与所得などを合わせた金額のこと
    • 基本的に離婚時の慰謝料は「合計所得金額」に含めない
    • 別居している親族も「扶養親族」と認められる場合がある
    • 年間の給与収入が103万円を超える人は「扶養親族」と認められない

    なお、寡婦控除は令和2年度の税制改正で大きく見直されています。2019年分以前の還付申告や更正の請求をする際は、従来の制度内容に従わなくてはなりません。

    ちなみに、16歳以上の扶養親族がいれば「扶養控除」も受けられます。たとえば、自分の両親や兄弟などを養っている人は、あわせて確認しておきましょう。

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    監修

    田中税務会計事務所
    公認会計士・税理士・行政書士
    田中 雅明
    約30年の経験の中で、公認会計士、税理士はもちろん、弁護士、銀行系シンクタンク、保険会社、保険代理店、大手不動産会社等の強力なネットワークも持ち、皆様をトータル的にサポートする態勢が整った当事務所をご活用ください。
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