「生計を一にする」は、配偶者控除や扶養控除において、親族の範囲を限定するときによく使われる考え方です。個人事業主の場合は、親族に給与を支払ったときの必要経費(専従者給与)とも関係するので、ぜひ理解しておきましょう。
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目次
「生計を一にする」とは
国税庁は「生計を一にする」を「日常の生活の資を共にすること」と説明しています。簡単にいうと「おなじ財布で生活していること」です。「生計一(せいけいいつ)」も同じ意味です。これに該当する親族は、税務上で特別扱いされます。
具体的には、以下のような項目に影響します。各項目の内容については、リンク先の記事でわかりやすくまとめています。
実務的な判断基準
「生計を一にする」かどうかは、別居と同居の場合で分けて考えるとよいです。順番に整理していきます。
親族と別居している場合
- 生活費などを送金している
- 余暇には帰ってきて一緒に生活している
上記のいずれかに該当すれば、別居していても「生計一」になりえます。一般的には、仕事で単身赴任しているケースや、通学のために下宿しているケースが考えられます。県外や国外で別居している親族についても、基本的な考え方は同じです。
親族と同居している場合
- 原則、同居していれば「生計を一にする」に該当する
→ 例外として、互いに「明らかに独立した生活」を営む場合は該当しない
「明らかに独立した生活」については、明確な定義は存在しないので、実態を踏まえて総合的に判断するしかありません。とはいえ、大抵の場合は、同居している時点で「生計一」と見てよいでしょう。
「所得税基本通達」の要点
ここまでの説明では、生計一の実務的な考え方をお伝えしてきました。ここからは、その根拠をお示ししていきます(とくに気にならない方は、読み飛ばしてOKです)。まずは、以下の「所得税基本通達2-47」をご覧ください。
(1)が別居、(2)が同居しているケースです。同居のケースについては、本記事で解説した通りです。しかし、別居のケースについては、以下の2通りに解釈できます。
- 「イ」と「ロ」の両方を満たすときだけ「生計一」に該当する
- 「イ」か「ロ」の片方だけで「生計一」に該当する
結論を言うと、本記事ですでに説明したように、片方だけで生計一に該当します(国税局にも確認済み)。下記の引用文は、国税庁の用語説明ページです。この記述からも、①か②の片方を満たせばよいことがわかります。
引用
生計を一にする:日常の生活の資を共にすることをいいます。
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、①生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、②日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
まとめ
「生計を一にする」の重要ポイント
- 「生計一」に該当すれば、所得控除において基本的には有利になる
- 「生計一」に該当すると、必要経費において不利になる場合がある
- 同居していれば、大抵は「生計一」に該当する
- 別居していても、一定の場合には「生計一」に該当する
個人事業主が、生計を一にする親族へ給与を支払っても、原則として必要経費にはできません。しかし、一定の要件を満たせば、専従者給与として必要経費に計上できます。
互いに十分な収入を得ている親族同士であっても、生計一に該当することはありえます。ただし、配偶者控除や扶養控除など、別途で所得要件が設けられている控除も多いです。これらの控除を受ける際は、よく確認しておきましょう。